「金融サービス仲介業」が 新設 される!?

本稿は2020年9月初旬に起稿しております。世は日本も米国もそのトップを誰にするかでニュースが埋まっていますが、最近のニュースで私が興味を持った記事はオマハの賢人ウォーレン・バフェット氏が最近日本の5大商社株を一気に5社とも5%まで購入したというニュースでした。このところ株式関連ニュースではGAFAと呼ばれるIT関連銘柄ばかりが取り上げられてきましたが、賢人は冷静に割安銘柄を選び、国際分散投資も実践しているのが心強く思われたのです。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマは「金融サービス仲介業が新設される!?」です。?としたのは、実は金融商品の販売にあたっては既に「金融商品の販売に関する法律」(金融商品販売法)があったからです。それなのに本年6月5日に「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が国会において成立し、同12日に公布された(施行は2021年秋頃と目されている。)のは、それなりの理由・背景があったからです。

法律改正の背景 ――銀行・証券・保険等の業態ごとであった日本の縦割り行政・規制

 預金・ローンなら銀行等へ行き、投資信託・株式関係は証券会社に行き、保険となると保険会社に連絡して外交員に来てもらう。長年縦割り・業態ごとの体制に慣れてきた多くの生活者は当然のことと感じているかもしれないが、就労や世帯の状況が多様化してきており、平日は銀行・証券会社へ行くことなど出来ない人々も多くいる。また、情報通信技術の進展によりパソコン・スマホがあれば店舗に行かなくても振り込みや投資信託等の売買当が出来るようになってきている。分野が異なる様々な金融商品をスマホのアプリを使って“ワンストップ”で購入・売却できるようにすれば、生活者の利便性は向上する。このようなニーズに対応するのが今回の法律改正の 背景 と言えます。

「金融サービス仲介業」は何が出来るのか

 「金融サービス仲介業」とは、「預金等媒介業務」「保険媒介業務」「有価証券等媒介業務」 「貸金業貸付媒介業務」のいずれかを業として行うこと。(金融サービスの提供に関する法律11条)

金融サービス仲介業とはこれまでの銀行・証券・保険等の業態ごとの縦割りだった既存の仲介業(保険募集人・金融商品仲介業・銀行代理業)と異なり、1つの登録で銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能な者・業者。ワンストップサービスに最適化した仲介業。

 しかし、「金融サービス仲介業」の業務として認められるのはあくまでも取引の「媒介」であって、本人の「代理」までは認められていません。

 生活者は当然本人1人です。これまで銀行・証券・保険等商品・業態ごとに相手を変え・交渉してきたことを思うと、信頼できる業者・人さえ見つかればその人・業者を通じてほとんど全ての商品が取引出来る、これは本当に便利なことではないでしょうか?

改正された新たな生活者保護のための規制

 これまで金融商品仲介業者は証券会社や銀行に所属し、トラブルについての損害賠償請求は所属の金融機関に対して行うものとされていました。今回この「所属性」も無くなったため、代わりに新たな規制が取り入れられ利用者・生活者保護が図られています。

 下記保証金の提供義務で示された金額からも分かるように「金融サービス仲介業」のうち投資助言・代理業のみを扱うにしても5百万円の保証金を提供しなければならず、実際の仲介業者は個人というよりは投資助言サービス業者・生損保保険代理店・金融商品仲介業者等が主体になると推測されます。

 取扱商品の制限(高度な説明を要するサービスの制限)

  銀 行 証 券 保 険
取扱可能 普通預金、住宅ローン 国債、上場株、 投資信託 傷害、旅行、ゴルフ
取扱不可 仕組預金 非上場株式 変額、外貨建て

                      (金融庁説明資料より抜粋)

 保証金の提供義務

  こちらも所属性の廃止にともなう仲介業者の賠償資力の確保策といえます。

 (参考資料)想定される保証金供託額の目安

保険仲介人 2千万~8億円
少額短期保険業 1千万円~
投資助言・代理業 5百万円

                        (金融庁説明資料より抜粋)

 その他の主な仲介業の義務

「顧客から求められた時には仲介業者が受け取る手数料・報酬を開示する義務」

 これは仲介業者が顧客または金融機関のどちらの立場に立ってサービスを提供しているかの 判断材料になるもの。顧客の納得できるビジネスモデルを作ることが大切になる。

「金融サービス仲介業」で何が出来るのか?

 これから始まる業態であるので飽くまでも推測だが考えられる業務を推測すると・・     例えばスマートフォンのアプリケーションを使い、生活者自身の口座残高や入出金を確認すると共に、そのサービスを通じて得た生活者の資金ニーズや資産状況を基にして利用可能な融資の紹介、各人のライフプランに適した金融サービスの比較・推奨を行う等日常生活上の金融取引ニーズに応える業務。

 例えば、不動産会社等の非金融機関が資格を取得し、物件販売と同時に住宅ローンや地震保険を仲介する業務等特に金融機関以外の会社の金融サービス業への参入の動きは今後更に活発になると推測されます。

最後に

法の施行まではまだ約1年ありますので、今後各社による研究が進むものと思われます。我々生活者も日々アンテナを高くして、大きな見出しの記事だけでなく、この仲介業の新設のような関連ニュースを追ってゆく姿勢が大切だと思われます。

                             CFP 重田 勉