《知っておこう・・・暮らし変わる!!》    

1.はじめに
前回(昨年12月)のブログ【題目:生涯現役を目指して!!】では、政府が進める「働き方改革」の目玉となっている重要テーマのうち、≪高齢者の就労促進≫を中心に解説しました。今回は「働き方改革」の残る2テーマのうち≪長時間労働の是正≫についてと、暮らしに係わる「社会保障」において8月から変更となる2点を説明します。
なお、「働き方改革」の一番の難題である≪同一労働・同一賃金≫ は次回とします。
 
2.長時間労働の是正(残業時間規制)
現在の労働環境は、厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率が1.49倍(正社員については0.99倍)とバブル期の水準を超え、調査開始以来最高となった。また総務省発表の完全失業率は3.1%(失業者205万人)となっており、働く意思のある人なら誰でもが働けるほぼ「完全雇用」の状況にあると言えます。
それでは、労働時間はどうなっているでしょうか?
労働基準法は、企業に対して
①原則1日8時間、週40時間を超える労働をさせることを禁じる
②労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える
③休日は少なくとも毎週1日か、4週間を通じて4日以上与える
ことを規定しています。
労働基準法36に基づく労使協定(通称:36協定)を締結し、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出た場合に、当該協定の範囲内で労働者に時間外労働又は休日労働をさせることができることになっています。
しかし、電通新入女子社員の過労自殺などが明らかになって、実態は月100時間を超える時間外労働が当たり前のように行われていました。今回の「働き方改革実行計画」では罰則付きの残業上限を導入し、残業を規制する方針が明記されました。残業時間は月45時間、年間360時間を原則としますが、労使であらかじめ合意すれば下記の通り(上限)となります。
残業時間の新ルール
・年:720時間以内(月平均:60時間)
・繁忙期1ヶ月の上限:100時間未満
・2~6ヶ月平均の上限:80時間以下
・月45時間超は年6回まで(36協定の上限は変わらず)
ただし、年720時間という規制には休日労働は含まれてなく「抜け穴」との批判もあり、休日労働の抑制を努力義務として規定されることになります。
また大企業(従業員301人以上)には、従業員の残業時間の公表を義務付け、2020年にも企業は月当たりの平均残業時間を年1回開示することとなる予定です。改正法案は今年秋の臨時国会に提出され、2019年度の導入を目指す見通しとなっています。
法改正と施行はまだ先にはなりますが、各企業は厳しい経営環境下にある今、生産性向上を目指し創意工夫に努めています。それには、従業員の働く意欲を引き出しホワイト企業として、従業員の健康増進に積極的に投資し、職場環境の整備・改善に力を注いでいる企業に対し、国は【健康経営優良法人】として認定しています。時代の変化に取り残されるのではなく、一歩・二歩先を行けるようあらゆるところで情報を集め、自社に則した具対策を実行していくことが求められます。

3.社会保障における変更事項
(1)年金の受給資格期間が10年に短縮されます!!
年金を受け取るために必要な納付期間が、これまで25なければなりませんでしたが、平成298から短縮され10で年金を受けられることになります。
新たに対象となる方には、日本年金機構から順次「年金請求書」が郵送され、今月上旬には全ての対象者に届いているものと推察されます。今回新たに対象となられる方はおおよそ64万人いますが、年金を受け取るには手続きが必要です。未済の方は、書類を確認し至急手続きをとってください。

対象となる方は以下のことを知っておきましょう

① 資格期間10年とは?・・・算入される期間
○国民年金の納付した期間や免除された期間
○サラリーマンの期間(厚生年金や共済年金の加入期間)
○「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間・・・年金額には反映されない
・昭和61年3月以前にサラリーマンの配偶者であった期間
・平成3年3月以前に学生であった期間
・海外に住んでいた期間
・脱退手当金の支給対象となった期間 など
上記を合計して10年以上あれば受給できます。
② 年金額はいくらになるでしょうか?
平成29年度の老齢基礎年金の金額は、40年間保険料を納めての満額で年額
779,300円(月額64,941円)です。年金額は納付期間で決まりますので、
納付期間10年間では:年金額195千円(概算)
15年間では: 〃 292千円(〃 )
20年間では: 〃 390千円(〃 )
30年間では: 〃 584千円(〃 ) となります。
計算式:779,300円×(納付期間月数÷480月)=○○○○○○円(年)
③ 今から年金額を増やす方法は?
実際の金額は、期待した程ではなかったのでは? それでは今から増やす方法はないのでしょうか? 次のことが考えられます。
○任意加入制度で60歳から65歳までの5年間国民年金の保険料を納める
○過去5年間に納め忘れた保険料を納める:後納制度(期限:平成30年9月まで)
〇専業主婦の届け出漏れ期間の保険料を納める:追納制度(同:平成30年3月)
○受給開始年齢を繰り下げる:受け取りを1ヶ月遅らせると0,7%増え、65歳受取を5年間遅らせ70歳からにすると年金額は42増加します。(毎月の受取額は増加しますが、受取総額の損益分岐点となる年齢は、大よそ82歳になります)

しかし、前述の通り人手不足が拡大する中でシニア層の活用を進める企業は多く、健康寿命が延び、まだまだ働きたいとの意思があれば、働きながら年金を受け取ることを考えてみませんか。給料と年金とである程度ゆとりある生活を送りましょう!!

厚生年金保険に加入しながら厚生年金を受け取る在職老老齢年金は、65歳以上では下記の通りとなっています。(60歳以上65歳未満の方と計算は異なります)
・基本月額+総報酬月額相当額が46万円以下・・・支給停止額=0(全額支給)
・基本月額+総報酬月額相当額が46万円超・・・・
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-46万円)×2分の1×12
(注)基本月額:年金額(年額)を12で割った額

総報酬月額相当額:毎月の賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与(標準賞与   額)を12で割った額
計算式は難解に思われるかもしれませんが、一言でいうと、一年間の年金額と
給与収入の合計が552万円(46万円×12以下なら年金額は支給停止にはなりません。【生涯現役を目指して】安心して仕事につきましょう。
④ 対象とならない年金(注意する点)
期間短縮される年金は、自分が老後に受け取る老齢年金だけで、自分が傷害を負った場合に受け取る障害基礎年金や、自分が死んだ場合に家族が受け取る遺族基礎年金は、今回の制度変更(資格期間10年)の対象とはなっていません。
年金請求等の手続きについてのお問い合わせは、下記「ねんきんダイヤル」へ
0570-05-1165
050で始まる電話でかける場合は、TEL03-6700-1165へ
なお、年金事務所へ出向かれる場合は、事前に予約されることをお薦めします。
(2)平成298月から、70歳以上の方の高額療養費の上限額が変わります
高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組みです。全ての方が安心して医療を受けられる社会を維持するために、高齢者と若者の間での世代間の公平が図られるよう、負担能力に応じた負担をいただく必要から変わるものです。
平成298から、上限額(月ごと)が下記の通り()になります。
○現役並みの収入がある方(課税所得145万円以上:年収約370万円以上)
外   来(個人ごと):44,400円57,600円
外来+入院(世帯ごと):80,100円+(医療費-267,000円)×1%変わらず
(多数回44,400円)
○一般の方(課税所得145万未満:年収156万~約370万円)
外    来(個人ごと):12,000円14,000円(年間上限144,000
外来+入院(世帯ごと):44,400円57,600円(多数回44,400
○住民税非課税の方
・Ⅱ 住民税非課税世帯
外    来(個人ごと): 8,000円 8,000円(変わらず
外来+入院(世帯ごと):24,600円24,600円(変わらず
・Ⅰ 住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など)
外    来(個人ごと): 8,000円 8,000円(変わらず
外来+入院(世帯ごと):15,000円15,000円(変わらず
(注)上限額(月ごと):各月1日から月末までの一か月間の合計金額
多数回:診療月を含む過去12ヶ月以内に4回以上高額療養費に該当した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額に下がります。
保険適用となる医療費の自己負担は最大で3割となっており、高額療養費は若干アップとなりますが上限があることで、一安心の面もありますね。ただ、日常生活において自分自身の健康には十分気を付けるとともに、年一回は健康診断(特定健康診査+ガン検診)を受けられることをお薦めします。また、薬については後発医薬品(ジェネリック医薬品)の処方を希望することで、医療費の負担を少なくすることができます。(国の目標:80%)
なお、来年(平成30年)8には、更に下記の2点の変更が予定されています。
① 高齢者の介護サービスの自己負担比率(現役並みの収入のある方)2割から3にアップ
② 今年に引き続き高額療養費の自己負担額のアップ
詳細は、次回私の執筆時に改めて解説します。

平成29年7月 社会保険労務士・健康経営アドバイザー・行政書士・AFP  若林富雄