空き家問題と住宅確保要配慮者問題は一体のものではないか?    ~住宅セーフティネット制度とFPの関わりについて~

「空き家問題」の現状

 近年の住宅・不動産関係のセミナーのテーマによく取り上げられるテーマに「空き家問題」がある。曰く、総務省が令和元年9月に発表した「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、国内の総住宅数に占める空き家の比率は13.6%(過去最高)に達し、その実数は5年前と比較して約29万戸増加した。(空き家全体では総数約900万戸弱)この内、特に留意したいのは最も多いのが相続対策等の理由で慢性的に供給過剰状態の賃貸用でその数462万戸にもなるという。そして不思議なのはこれだけ空き家があるのになぜか毎年賃貸用新築アパート・マンションが建設されてゆく現実を見るときである。そこにはハウスメーカー等の営業努力?があるのだろうが、ここにきてようやく駅から10~15分以内の物件でなければ入居者は見つからないし、資産的価値も乏しいことが地主層にも理解されつつあるように感じる。

 空き家問題でここにきて注目されているもう1つの問題に「特定空家」(代表的例にごみ屋敷等)に代表される募集も賃貸もされず放置されている住宅の増加がある。その数2018年で349万戸、10年前と比べると約80万戸も増加している。その代表的発生例は地方に暮らす親が亡くなり空き家になったが子供たちは都会に出て既に自宅を保有しており実家は当面そのままになっているケースが考えられる。

一方で「住宅確保要配慮者」が住宅を求めている

 これだけ空き家が増えて地主・自治体・住民等が困っているというのにこの国には住みたくても住宅がない・貸してもらえない多くの人々が存在する。その人々が「住宅確保要配慮者」だ。

「住宅確保要配慮者」;高齢者、低額所得者、被災者(発災から3年以内)、子育て世帯、外国人等

 高齢者が孤独死・トラブル等を恐れる貸主から入居を断られるケースや意外に?に若くても子育て世帯で子供が騒いでうるさい等の理由で賃貸住宅オーナーから避けられるという話もよく聞く。

 しかしわが国ではこの問題に対しては既に対策がなされている。それが「住宅セーフティネット制度」である。2017年からスタートした新しい住宅セーフティネット制度では住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録し、都道府県等がその情報を提供する。更に登録した住宅には改修を支援したり、入居者には家賃等を補助する経済的支援もすることになっている。

残念な登録状況

 では住宅をめぐる諸問題を解決するこの制度の利用状況はどうだろうか?「セーフティネット住宅情報提供システム」で登録されている住宅を検索すると全国にこの住宅は3,580件

(2018年8月時点)しかない!また都道府県によるばらつきが大きく登録件数0件の県さえある。

だが新しくなった住宅セーフティネット制度を知っているという人の割合はある住宅関連誌の調査では約67%に上っている。

 理由を推察するに“入居を拒めない”という点がオーナーの理解が得られない最大のものであろうし、制度が改正されてまだ時間が経っていない(周知されない)ことも登録が進まない理由と思われる。

FPとしてどうかかわるか

 我々FPの役割としてはまず我が国の住宅関連の問題を知り、住宅セーフティネット制度等の知識を深めて相談者にアドバイス出来るようにすると共にいざ相談があった時に専門家を紹介出来るように日頃から弁護士・司法書士・あるいは地元の不動産業者等のネットワークを築いておくことだろう。相談者と専門家・行政・業者等を繋ぐ中間にいるFPだからこそ出来ることは多いのではないか。空き家問題と住宅確保要配慮者の存在や住宅セーフティネット制度の問題を別々の問題ではなく住宅関連の問題として一体的に把握してゆく必要があろうし、FPこそこのような視点を持てる職種ではないだろうか。このような視点を持ち・動きをすることでFPへの認識も更に固まってゆくと思う。

                              CFP 重田 勉