NISAの日に思うこと

  2月13日はNISA(日本版ISA)の日だそうです。昨年末から年明けにかけて金融機関の大規模な宣伝・広告が繰り広げられたこの制度、1月の開始時点の口座開設数は475万件と新たな制度としては大きな成果が上がっているというべきでしょう。しかしながら、その内容を見てみるとそこには本来の狙いとは異なった結果が出ているようです。以下、日本経済新聞2月13日の記事を基に問題点を考えてみたいと思います。

              2014年末時点のNISA利用者予測

年令区分 利用者(万人)
60代以上 420
50代以上 140
40代以上 125
30代以上 110
20代以上 90

                     (野村総研の予測・概算)

 本来若年層の資産形成支援という狙いを込めたこの制度の趣旨とは逆にその中心利用者は60才以上のシルバー層が利用者の中心となりそうだということです。

 なぜ若年層の利用が進まないのか?

             金融資産ゼロ世帯の割合

1980年 5%
1990年 9%
2000年 11%
2005年 22%
2010年 23%
2013年 31%

             (金融広報中央委員会の調査より・2人以上世帯)

 上記の表から見て分かるように昨年時点でほぼ全世帯の三分の一の世帯で金融資産がゼロとなっている。この中には20代が多く含まれるという。非正規雇用で働かざるを得ないことが多いと言われる現在の若年層。これでは資産形成しましょうと言っても所詮無理な話になってきます。 更にに若者達がNISAや投資を敬遠する理由として「成功体験の乏しさ」があるという。

1989年末に最高値をつけた日経平均株価はその後バブル崩壊によって長期低迷を抜け出せず、現在の株価はピークの4割にも達していない。また、今年に入ってからも日経平均は不安定な動きを示しており、このような状況では「株は値上がりしても一時的なもの。元本割

れのリスクが怖い。」と投資・NISAから遠ざかってしまうのが現実のようです。

打開策はないのか?
英国「子ども版NISA」とは?
日本がNISAを導入するにあたって参考にした英国で導入している制度。
「親や親族が資金を出し、子どもが一定の年齢になるまで引出しは出来ない」というもの。
この考え方は昨年来孫に喜んでもらおうと祖父母が励んでいる日本の制度(教育資金贈与非課税税制)に似ていないでしょうか?

 現状の日本のNISA
「自分の責任で投資判断できる20才以上の成人に限る」
この考え方自体は間違ってはいないでしょうが、制度が始まってみての現実を考えればISAの先輩英国の取り組みは十分に検討する価値があるように思えます。
 

 無論NISAはまだ始まったばかりであり、既に2年目以降金融機関を変更出来るようにする等使い勝手の良さを求めて様々な改善が図られてゆくと思われます。ただ投資をしようにも日常使用の預貯金以外を持たない若者達が増えている現状を見るにつけ日本の家計の金融資産約1600兆円の内の約1000兆円を保有すると言われる60才以上の“高齢者”が「教育資金贈与」等の考え方を理解して有効活用することを期待したくなります。先々NISAの非課税枠も広がるかも知れませんが、その枠が現在100万円で、贈与税の暦年贈与の非課税枠が110万円なのも不思議な一致なのかと思う今日この頃です。

 

                  (重田 勉)