日々ニュースで「株高」が報じられ、日経平均株価は過去最高値を更新している。 それにもかかわらず、「自分の持ち株はまったく上がっていない」と感じている個人投資 家は少なくありません。この違和感は決して珍しいものではなく、むしろ現在の相場構造を よく表しています。

その背景を理解するうえで、まず日経平均株価の仕組みを押さえておく必要があります。 日経平均株価は東証プライム市場に上場する約2,000銘柄の中から、市場流動性の高い代表 的な225銘柄を選出し、その株価の平均を算出した指標です。 このため、株価の高い銘柄、いわゆる値がさ株の影響を非常に強く受ける指数なのです。 たとえば、ファーストリテイリングや半導体関連の東京エレクトロン、アドバンテスト、ソ フトバンクグループなどのような値がさ株が大きく上昇すると、それだけで日経平均全体を 押し上げる力になります。一方で、ソニーグループや任天堂、サンリオといった人気銘柄が 下落していても、それらの株価水準が相対的に低ければ、指数への影響は限定的です。 つまり、「指数は上がっているのに、自分の持ち株は上がらない」という現象は、日経平均 の構造上、むしろ起こりやすいのです。
ここで対比として重要になるのが、TOPIX (東証株価指数)です。TOPIXは東証に上場 する銘柄の時価総額をベースに算出されるため、市場全体の動きをより広く反映します。特 定の値がさ株に偏ることなく、大型株から中小型株までバランスよく影響が及ぶのが特徴 です。 そのため、日経平均が上昇している局面でも、TOPIXがそれほど上がっていない場合、「一 部の銘柄だけが相場を押し上げている」可能性が高いと読み取れます。逆にTOPIXも堅調 に上昇している場合は、市場全体に資金が広がっている健全な上昇と判断できます。

足元の日本株市場では、まさに前者の傾向が見られます。上昇をけん引しているのは一部 の半導体関連やグローバル企業に限られ、多くの銘柄は横ばい、あるいは調整局面にありま す。その結果、指数と個人投資家の体感にズレが生じているのです。 では、このような相場環境で個人投資家はどのように行動すべきでしょうか。 まず重要なのは、「指数=自分の成績ではない」と理解することです。特に日経平均は構造 的に偏りが出やすいため、それだけを見て一喜一憂するのは適切ではありません。TOPIX や値上がり銘柄数なども併せて確認し、市場の広がりを把握することが大切です。
次に、資金が流入している分野を把握することです。現在のようなテーマ相場では、半導 体やAIといった分野に資金が集中しやすくなります。ポートフォリオの一部をこうした分 野に振り向けることで、指数上昇の恩恵を受けやすくなるでしょう。
一方で、ソニーグループや任天堂のような競争力の高い企業が下落しているからといって、 すぐに見切る必要はありません。短期的な需給による下落であれば、むしろ⾧期投資の観点 では検討の余地があります。重要なのは、株価ではなく企業の本質的な成⾧力を見ることで す。
最後に意識したいのは、「相場の広がり」です。日経平均とTOPIXの動き、そして個別株 のパフォーマンスを比較することで、今の上昇が一部主導なのか、全体的なものなのかが見 えてきます。この視点を持つことで、過度な焦りや誤った判断を避けることができます。
現在の日本株市場は、「全面高」ではなく「選別の相場」です。指数の上昇に惑わされる のではなく、その中身を理解すること。それこそが、これからの投資成果を大きく左右する 鍵になるでしょう。
CFP 磯野正美




