相続した土地、登記していますか? ~来月以降続々と!土地の相続登記義務化に向けて法改正がされます~

ご存じですか?

現在、土地の相続登記は義務化されていない為、国土交通省の調査によると、地籍調査の対象地区(宅地・農地・林地等)のうち、所有者不明率はおおよそ2割、面積では九州より広い面積が所有者不明と推計されています。そして今後ますます増えていくと予想されています。

相続登記とは?

正確には「相続による所有権の移転の登記」といい、土地や建物の不動産の所有者が亡くなったときに、その土地や建物の名義を亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続きのことです。

・所有者不明土地とは?

  • 不動産所有者の登記が行われず現在の所有者がわからない土地
  • 所有者が特定できてもその所在が不明で連絡がつかない土地

・所有者不明土地が増える原因

土地の相続が発生した時に登記の名義変更が行われていない 約63%

所有者が転居した時に住所変更の登記が行われていない 約33%(R2国土交通省調査)

・所有者不明土地による問題点

[政府広報オンラインより]

イラストのように、相続人が相続登記をせず年月を経てしまうと、相続人の特定が困難になり、土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となります。公共事業や災害等の復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用の阻害要因になる、また土地が管理されず放置される事で、隣接する土地への悪影響が発生するなど様々な問題が生じています。

・そこで!来年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化されます

所有者不明土地を解消するため、不動産登記法が改正(令和3年4月)され、来年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化され、土地の相続から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由がなく申請を怠った場合は10万円以下の過料の適用対象となります。

・先がけて来月4月1日から導入「具体的相続分による遺産分割の時的限界」の新ルール!

この相続登記の義務化に先行して、来月以降、不動産関連の改正が続々と施行されます。来月4/1からは遺産分割に関する新たなルール「具体的相続分による遺産分割の時的限界」が導入されます。

遺産分割のルールは、法定相続分を基礎としつつ、生前贈与を受けたことや、療養看護など特別の寄与をしたことなどの個別の事情を考慮して具体的な相続分を算定するのが一般的です。ところが、遺産分割がされずに長期間経過した場合、具体的相続分に関する証拠がなくなってしまい、遺産分割が更に難しくなるといった問題があります。

そこで、遺産分割がされずに長期間放置されるケースの解消を促進するため、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分(または指定相続分(遺言による相続))によって画一的に行うこと とルールづけられました。

・【注目ポイント!】改正法の施行日前に相続が開始した場合の遺産分割の扱い

この改正法の施行前に亡くなった方の遺産分割についても、新しいルールが適用されますので要注意です。但し、経過措置により、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられます。

■長期間経過後の遺産分割のルール

[法務省民事局パンフレットより]

2023年4月が施行ですので、例えば相続開始(被相続人が亡くなった時)が2012年4月の方は図のAのケースにあたります。施行時から5年の猶予期間がある場合、2028年4月以降具体的な相続分による分割となります。Bのケースは、例えば2017年4月の相続開始の場合、2027年4月に10年が経過しますが、やはり2028年4月以降、具体的相続分による分割とされ利益喪失が発生することもある、ということになります。

■例外も確認しましょう

相続開始時から10年を経過していても具体的相続分により分割できる場合もあります。

  • 10年経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。
  • 10年の期間満了前6ヶ月以内の間に、遺産分割の請求をする事が出来ないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6ヶ月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。

◆相続した土地で悩んでいる方には、来月27日にスタートする「相続土地国庫帰属制度」も視野に

所有者不明土地が増加している一因として、都市部への人口移動や人口の減少・高齢化などにより土地のニーズが低下する中で、土地所有に対する負担感の増加も挙げられるでしょう。相続したものの遠方であるため管理ができない、使い道がなく手放したいけれど引き取り手もない、など処分に困っている土地、所有が困難な土地、いわゆる所有者不明土地予備軍について、所有者不明土地発生予防の観点から来月4/27以降、一定の要件を満たせば、国に帰属する事ができるようになります。

・申請できるケース

基本的に相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば申請できます。制度の開始前に相続した土地も対象ですが、売買等によって土地を取得した方や法人については対象外です。土地が共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。

・国庫帰属が認められない土地の主な例

次のような土地は、通常の管理や処分をするに当たり多くの費用や労力が必要になるので引き取りの対象外です。

・建物、工作物、車両等がある土地

・土壌汚染や埋設物がある土地

・危険な崖がある土地

・境界が明らかでない土地

・担保権などの権利が設定されている土地

・通路など他人による使用が予定される土地

・手続きと納付金

手続きは法務大臣(窓口は法務局)宛に実費等を考慮した審査手数料を納付して承認申請をします。法務大臣(法務局)による書面審査・実地調査を経て、国に土地を引き取ってもらうことが認められた場合は、30日以内に負担金(10年分の土地管理費相当額)の納付が必要となります。下の図のように、負担金は通常20万円、ただし市街化区域など一部の宅地や田畑、森林は面積に応じた算定額となります。



[法務省資料:相続土地国庫帰属制度の負担金より]

この他にも2023年4月以降、不動産関連の法改正が目白押しです。気になる方は法務省のHPやパンフレットなどをご覧ください。(末尾にURL記載あり)

相続とは財産を次の世代に引き継ぐこと…遺されたお子様や親族に、揉め事や悩みの種をも引き継ぐことは誰しも望んでいないでしょう。また、広くは近隣住民や地域の為にも、自分の代でできる事をクリアにしておくことも大切な終活の1つかもしれません。

2023年3月
CFP 依田いずみ

 

=参考資料=

◆「所有者不明土地の解消に向けて不動産に関するルールが大きく変わります」パンフレット

001381764.pdf (moj.go.jp)

◆平成29年度 土地所有・利用概況調査報告書 001237784.pdf (mlit.go.jp)

◆政府広報オンライン 令和4年(2022年)3月31日

なくそう、所有者不明土地! | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)

siryou2.pdf (cas.go.jp)

◆法務省民事局 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

https://houmukyoku.moj.go.jp/matsuyama/content/001344983.pdf

◆法務省資料:相続土地国庫帰属制度の負担金

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

法務省:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法) (moj.go.jp)

◆国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」

本検討会で扱う「所有者の所在の把握が難しい土地」とは (mlit.go.jp)