投資について考えてみる

 先日、日本経済新聞の論説委員の方が講師を務めるセミナーを受講した。この中で読者に参考になるであろう事項と若干疑問を感じた事項を示し、皆様の判断を仰ぎたい。

資産4分割の運用は時代に合わない?

 いわゆる日本と海外の株式と債券に25%づつ分散投資するバランス型運用(日本ではGPIFの運用が代表例)はこれからの運用にふさわしくない、と講師は言う。それは、これからの日本の金利環境は下がることはなく、いつかは兎も角、いずれ上がってゆく環境にある。ということは債券の金利が上昇すると債券価格は下がるという法則からすると、価格が下がる債券を運用に含めるのはナンセンスであり、他の資産に入れ替えるべきだという。

 この指摘を受けて最初私もバランス運用の投信を見直さなくてはと正直思った。しかし、そもそも資産4分散の考え方は値動きの違う資産(株式と債券)を組み合わせて価格の変動リスクに備えるというものであり、慌てて修正すべきではないと考えるようになりました。ただ、資産分散の割合は今後株式の割合を増やし、債券の割合を減らすという手当は必要なのではないかと感じている。

“オルカン“だけで良いのか?

 今年1月からNISA制度が大幅改正され、新聞報道等によればネット証券が若年層の大半の証券口座を獲得し、1人1口座の口座獲得競争はほぼ決着したと言われている。もっとも野村証券等の大手対面型証券会社が本気でNISA口座獲得に動いていたという実感はない。そもそもネット証券が選好されているのは主に手数料が0円という点にある。手数料が0円ではいくら口座が増えても会社の利益には貢献しない。大手対面証券会社が冷ややかな?対応なのもわかる気がする。

 そして、本年2月の投資信託販売額最上位は1月に続き、三菱UFIモルガンスタンレー証券のEMAXIS-SLIMシリーズの「全世界株式(オール・カントリー)」、略称「オルカン」であり、購入額は1,892億円、第2位は同シリーズの「米国株式(S&P500)」で1,415億円であったという。(いずれも日経掲載記事より)

 この状況は全世界への資産分散、好成績のS&P500銘柄への投資であること、またEMAXISシリーズが同業投信の中で最低手数料(オール・カントリーで信託報酬は年0.05775%)であることから正しい選択といえるし、人気があるのもわかる。

 ただ、私が気になるのはNISAでオルカン等を積み立て投資を始めて(金額は人によって異なるだろうが)とりあえず時流に乗ったと思っている投資家・生活者に問いたい。確かに上記2つの投資信託は手数料も安いし、これまで成績も好調ではある。が、それは4資産分散の区分でいえば海外株式の1部に投資を始めたにすぎず、1本足打法的な危うさがありはしないか?

 勿論、投資資金にも限度があるという声があるのもわかる。たが、所得の中からだけでは投資資金に限度があるのもわかる。しかし、今回のNISAの改正は所得の中からだけではなく、既に保有している預貯金や課税扱いで行っている証券投資(株・投資信託)から非課税枠の広がったNISAに資金を移動させてこそ非課税のメリットを最大限享受出来るのではないだろうか?

                           CFP 重田 勉