高次脳機能障害って?

先月始め頃の神奈川新聞に、交通事故による高次脳機能障害者のための県支援集会が、横浜市中区の市技能文化会館で開かれたという記事が載っていました。あまり聞き慣れない言葉だと思いますが「高次脳機能障害」とは、皆さま御存知でしょうか?

高次脳機能障害とは、高次の脳機能(知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情を含めた精神機能を総称する)が、脳血管疾患(脳卒中等)や交通事故などで損傷を受け、障害が起きた状態のことを言うそうです。具体的な症状としては、

① 記憶障害… 事故や病気の前に経験したことが思い出せなくなったり、新し
い経験や情報を覚えられなくなった状態をいいます。

② 注意障害… 気が散りやすくなったり、長時間一つのことに集中できない等
周囲からの刺激に対し、重要なものに意識を集中させたりすることが、上手くできなくなった状態をいいます。

③ 遂行機能障害… 自分で計画を立てられなかったり、物事の優先順位をつけられない等論理的に考え、計画し、問題を解決し、推察し、そして、行動するといったことができない状態をいいます。

④ 社会的行動障害… 場違いな行動や発言をしたり、すぐ怒ったり泣いたり、行動や感情を場面や状況にあわせて、適切にコントロールすることができなくなった状態をいいます。

などが挙げられます。先の新聞記事によると、高次脳機能障害は認定の難しさなどから十分な賠償を得られるかが大きな課題の一つとなっていて、交通事故で高次脳機能障害を負った場合の損害賠償額が、裁判での解決を100%とすると、紛争処理センターもしくは弁護士による示談解決では約80%、被害者と保険会社による示談解決は約60%というデータがあり、弁護士や相談窓口の利用が重要ということでした。

これはどういう事かというと、例えばAさんが車で信号待ちをしていた時に後ろから衝突されて高次脳機能障害を負ってしまったとします。一般的に自動車保険で保険会社が相手側と示談交渉が許されるのは、契約者の過失部分に関してのみなので、被害者側に全く過失の無い被害事故の場合、被害者が加入している自動車保険会社は相手(加害者)側と交渉することは出来ません。したがって被害者本人又はご家族が加害者側保険会社と交渉する事になります。

仮に加害者側保険会社が、妥当な賠償保険金額を3千万円と主張したとして、そのまま示談に応じる場合と、納得がいかないので紛争処理センターに申立てをしたところ、加害者側保険会社も歩み寄って4千万円で示談解決となる場合、もしくは交通事故専門の弁護士に依頼して訴訟を起こし、最終的に5千万円の示談金を勝ち取る場合とで、1千万~2千万円の差が出るという事です。

しかしながら、自分で紛争処理センターに手続きをするのも面倒ですし、かといって弁護士に依頼するのも弁護士報酬等高額な費用が必要です。そんな時に役立つのが自動車保険の弁護士費用特約です。交通事故で保障対象者が身体又は財物に損害を受けた時に、弁護士に損害賠償請求を委託した際に生じる費用を、限度額(大体300 万円位)まで補償する特約です。特約保険料は、保険会社により若干違いますが年間2~3千円程度です。また交通事故だけでなく日常生活上の急激かつ偶然な外来の事故も補償されるワイドタイプもあります。

ここまで相手(加害者)側が任意保険に加入を前提に話を進めてまいりましたが、未加入だったら最悪です。そんな時には人身傷害補償特約がお薦めです。自動車事故等で保障対象者やご契約のお車に乗車中の方が、死傷(死亡・後遺障害・ケガ)された場合の損害に対して、過失割合に関わらず保険金額を限度に自分が加入している保険から保険金が支払われる特約です。保障限度額:大体3,000 万円~1億円(無制限)

それでも高次脳機能障害なんて聞いたこともないし、交通事故に遭う事も滅多にないと思う方もいらっしゃるかと思います。試しにネットで「高次脳機能障害」と検索してみてください。法律事務所の広告が結構出ています。過払金返還請求訴訟もピークを過ぎた今、交通事故訴訟が次なる収益源だと法律事務所が考える程、件数も増えているという事なんでしょう。

今一度自動車保険の加入内容をご確認してみたらよろしいかと思います。

自分だけでは難しそうと思われる方は、どうぞファイナンシャル・プランナー他専門家へご相談を!

(小野 宏治)