加給年金と振替加算 

年金は私たちの老後の重要な要素であるが、年金制度は結構複雑だ。
本ブログには、これまで年金制度に関するテーマとして;
「年金の繰上げ・繰り下げ支給」(2019年5月)
「経過的加算って知ってますか?」(2024年6月)
をそれぞれ取り上げ、出来るだけ分かり易く説明した。
今回は加給年金と振替加算について説明する。
1.加給年金
まず加給年金について説明しよう。
日本年金機構のホームページには、次のような記述がある。
(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html)
「厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点
(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を
維持されている配偶者または子がいるときに加算されます。」
これを嚙み砕いて説明すると以下のようになる。
厚生年金に20年以上加入していた人が、65歳になり厚生年金を
受給できるようになった際に、生計を維持する(扶養している)配偶者・
子供がいると厚生年金に上乗せして支給される年金が加給年金だ。
ただし条件があり、配偶者は65歳未満であることで収入も850万円以下
であること、子供は18歳未満であること。

すなわち、ざっくり言えば配偶者が2歳年下であれば、配偶者が満65歳
になるまでの2年間加給年金が支給され、年上であれば加給年金の
支給は無い。加給年金は配偶者が65歳になり国民年金を受給すると、
支給停止となる。配偶者の加給年金額は、厚生年金受給者が
昭和18年4月2日以降生まれの場合、年間408,100円と中々の金額である。
加給年金は「年金の家族手当」と言われることもある。
加給年金は厚生年金の仕組みに基づくため、支給対象は厚生年金の
支給対象である会社員・公務員となることに注意していただきたい。
加給年金を受給するには、必要書類を添えて65歳誕生日の前日以降に
最寄りの年金事務所へ提出する必要がある。
老齢厚生年金が受給できる65歳に近づいたら、注意が必要だ。
2.振替加算
振替加算は経過的加算とともに、馴染みのない言葉だが、
厚生年金受給者の配偶者を持ち、配偶者が昭和41年4月1日以前に
生まれた方に限られる内容とはいえ、年金定期便に振替加算が記載されて
いる方には気になる内容であり、知っておきたい事項である。
振替加算は、加給年金とセットで考えると分かりやすい。
配偶者・子供が所定の年齢になり、加給年金が支給されなくなると、
ありがたいことに、配偶者が老齢基礎年金を受給できる場合は、
配偶者の老齢基礎年金に上乗せして支給されるのが振替加算である。

なぜ、加給年金が支給停止になると配偶者に振替加算が支給される
のであろうか。
これには、日本の年金制度の改正が関係している。
国民年金加入は、現在は義務化されているが、以前は任意加入であった。
現在のように加入が義務化されたのは、昭和61年(1986年)4月の年金制度
改正からだ。この改正で国民年金の加入が義務化された。
国民年金加入が任意であったので、昭和61年4月1日現在20歳以上で
あった方(昭和41年4月1日以前生まれの方)の中には、国民年金保険料が未納となる時期が生じる場合があり、その結果65歳になった際に国民年金が満額もらえない方が存在することになった。
振替加算は、これらの方の救済処置として設立された。
 振替加算額は生まれた年により変わり、最大は加給年金額(特別加算を
除く)とほぼ同額で、その他生まれた年により係数を掛けた金額となって
いる。参考として、日本年金機構のホームページに記載の振替加算額の抜粋を下記に示す。
下表に示すように、昭和41年4月1日以降に生まれた方への振替加算額は
ゼロとなっていることが分かる。

それでは、振替加算額は何を見れば分かるのだろうか?
振替加算を支給されている方は、毎年5月から6月頃送付される
「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」の『基本額』と
『支給停止額』の間に印刷されている。

以上、加給年金と振替加算について説明した。年金制度は適宜改正される。
今後も年金制度が改正されて、私たちの生活に影響が大きい項目について、
その都度ブログに載せて行きたい。

CFP 前川敏郎

派遣社員の年金作り

先週から、日経新聞に「働けない若者の危機 第4部氷河期時代」として若者の経済力について連載されています。

「就職氷河期を経験した現在の30代の多くは、結婚適齢期を迎えても十分な収入を得られず、30代男性の民間平均給与は469万円で、1997年ピークの15%減(国税庁2011年調査)。多くの女性は“結婚して専業主婦になりたい”と考えているけれども、現実は男性の20%、女性の54%が非正規雇用。経済的な不安が結婚をためらわせ、その結果、2010年時点で35~39歳の未婚率は男性36%、女性23%に達した。」

(日経新聞2013年1月15日朝刊より)

では、どうしたらよいのでしょうか? 婚活はしているけど、もしかしたら“おひとりさまになるかもしれない”と不安になってきたあなた。そういうあなたは、54%の中の女性派遣社員? このままずるずるいくと、ますます正社員の道は厳しくなり、どっぷり派遣の道へと突入します。

30代後半になると、その派遣さえすぐには見つからなくなってきます。(怖がらせてごめんなさい!)そろそろ「自分の老後は自分で守る」という意識が必要かも! そこで私がおすすめするのが、派遣社員で退職金のない方(2号)の“確定拠出年金個人型”です。掛けていない場合と、掛けた場合の比較をしてみます。

 

(下記数字の単位は円)


タイプ①

月収20万円で年収240万円を想定(けんぽ17等級、厚生年金13等級で計算)

<所得税>

① 支払金額 2,400,000

② 給与所得(給与所得控除後の金額) 1,500,000 {2,400,000-(2,400,000×30%+180,000)}

③ 所得控除額 686,456(基礎控除380,000、社会保険306,456、)

④ 源泉徴収税額 40,600 {(②-③)×5%}

<住民税>

① 支払金額 2,400,000

② 給与所得 1,500,000

③ 所得控除額 636,456(基礎控除330,000、社会保険306,456)

④ 住民税 86,300{(②-③)×10%}


タイプ②

確定拠出年金個人型を税額控除できる最大月額23,000(23,000×12=276,000)掛けると。

<所得税>

① ②は同じ

③所得控除額 962,456(基礎控除380,000、社会保険306,456、確定拠出年金276,000)

④源泉徴収税額 26,800{(②-③)×5%}

<住民税>

① ②は同じ

③所得控除額 912,456(基礎控除330,000、社会保険306,456、確定拠出年金276,000)

④住民税 58,700{(②-③)×10%}


タイプ①-タイプ②=(40,600+86,300)-(26,800+58,700)=41,400

1年で41,400円の節税になります!!   →  20年掛けたら828,000円も!! 他にも、掛けている間の運用益は非課税だし、受け取るときは年金形式なら公的年金扱い、一時金受取なら退職金扱いなので、とてもお得です。是非取り入れてみてください。

(佐藤 広子)

共働き妻が死んでも夫は遺族年金を貰えない?

最近はご夫婦とも仕事を持っているダブルインカム(非扶養)のご家庭が増えています。生命保険の見直し相談に来られて驚かれることは、奥様の万が一のための保障です。

初歩的なお話ですが、遺族年金は家族に万が一のことがあった場合に残された遺族の生活を国が保障する制度です。夫婦で家計を支える共働きの場合、妻に万が一のことがあっても、夫は遺族年金を貰えないということがあるのです。ここで少し、共働き妻が死亡した場合の遺族年金について解説します。

「遺された家族の生活を保障する年金」としての遺族年金には、大きく遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金(厚生年金保険)の2つの制度があります。

 

共働き夫婦で妻が死亡した場合の遺族年金は?

今日の年金制度は、夫が家計を支える家計主であって、夫が死亡した場合に遺された遺族である妻や子どもに、どのような年金がいくら支給されるかという視点で制度が成り立っています。
そのため、夫婦共働きでお互いに厚生年金に加入している場合、遺族年金はどのようになるのかわかりにくい部分であります。そこで、共働き夫婦で妻が死亡した場合の遺族年金について整理してみました。

共働きで子どもがいる夫婦の場合

遺族基礎年金

遺族基礎年金が支給されるのは、子のある妻または子となっています。そのため、夫には支給されず、子どもに対してのみ、18歳到達年度末(障害者 の場合は20歳未満)まで支給されます。ただし、父親と同居している場合は、子どもへの遺族基礎年金も支給停止する決まりになっているため、結果、遺族基礎年金は貰えないことになります。

遺族厚生年金

遺族厚生年金が支給されるのは、妻、子・孫又は55歳以上の夫・父母・祖父母となっています。そのため、夫には支給されず、子どもに対して、18歳到達年度末(障害者の場合は20歳未満)まで支給されます。

共働きで子どものいない夫婦の場合

遺族基礎年金

遺族基礎年金が支給されるのは、子のある妻または子となっています。そのため、子どもがいない夫には遺族基礎年金は支給されません

遺族厚生年金

夫に遺族厚生年金が支給されるのは、妻が死亡時に夫が55歳以上の場合となっています。但し、支給開始は60歳からとなっています。
共働きの夫婦で子どもがいない場合で、妻に万が一があっても、遺族基礎年金は貰えず、遺族厚生年金も、妻死亡時の夫の年齢が55歳以上でなければ貰えないということになります。夫は妻の遺族年金を頼りにできないといえます。

 

夫に対する遺族保障は少ない!

共働き夫婦で妻が死亡した場合、夫が貰える遺族年金は意外と少ない(貰えない)ということがわかりました。

遺族年金は、家計を支える者に万が一の場合に、遺された家族の生活を保障する制度です。普通に考えれば、妻に万が一のことがあった場合でも、夫も妻と同様に遺族年金が貰えると考えがちですが、現実の年金制度はそうなっていないのが実情です。妻には寡婦年金や高年齢寡婦加算のように手厚い保障が用意されていますが、夫への遺族保障は不十分です。

これは、年金制度設計時の家族と家計の考え方が、「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という発想だからです。世の中が大きく変わり、現在の家族・家計の支え方の実情に合わなくなっているといえます。

 

共働きならではの家計のリスク対策を!

最近は、夫婦共働きの世帯が増えてきました。勤労者世帯に関していえば、片働き世帯よりも共働き世帯の方が多くなっています。共働き世帯の中でも、夫婦2人の収入で日々の生活費や子育て費用、住宅購入費用などの家計を平等に負担している世帯が一般的になってきました。

夫婦が同じ年収で家計を支えている場合、夫に万が一があった場合と妻に万が一があった場合で、貰える遺族年金から考えると、家計に与える影響がずいぶん異なるということになります。そのことを念頭において、万が一の場合の家計のリスク対策を考える必要があります。

(石山 斉)