長引くコロナ禍!子ども・子育て支援の税制改革について

長引く新型コロナウィルスの影響により保育所(※1)の休園が相次いでいます。厚生労働省の発表では、園内に感染者が出たことにより、9/2時点で保育所休園数が全国15都道府県185ヵ所にのぼりました。最新9/9時点では16都道府県126カ所となりましたが、7/1の休園数16ヵ所から急激な増加となっています。(※1:この調査における保育所とは、認可保育所、保育所型認定こども園、地域型保育事業所、へき地保育所を指します)

出典:厚生労働省 保育所等における新型コロナウィルスによる休園等の状況

このような状況の中、今年度の税制改正では、認可外保育、ベビーシッター、一時預かり等の利用に対する助成金が非課税になりました。令和3年税制改正「国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置」の創設です。改正前は、国や東京都が行うベビーシッター支援事業としての利用料助成や、自治体が行う認可外保育施設の利用料助成などを受けると、「雑所得」として課税対象でした。

「あれ?幼児教育・保育って無償では?」と思われた方、実は、すべての保育施設が無償というわけではありません。

ここまでに至る経緯を少しお話ししましょう。

■社会全体で支える子ども・子育て

さかのぼる事6年、2015年(平成27年)に「子ども・子育て支援新制度」が本格的にスタートしました。背景には、少子高齢化が進み、年金など社会保障の現役世代の負担増や、若年労働力の減少による社会の活力の低下がありました。子育てと仕事を両立して女性が働きやすい環境作りが必要とされ、更に、子育ては家庭内だけではなく、企業や地域も含めた社会全体で支えることが求められていました。

そこで、「内閣府子ども・子育て本部」を立ち上げ、それまでは保育所は児童福祉法に基づき厚生労働省が、幼稚園は学校教育法に基づき文部科学省が、と別々だった制度を省庁の枠を越えて連携し、総合的に子育て支援を推進出来得る体制を整えました。

財源は消費税引き上げによる0.7兆円程度を含め約1兆円を確保し、幼児教育・保育、地域の子ども・子育て支援の質と量の拡充を図り、また、各施設で働く職員の労働環境や給与の改善も行われてきています。(図1の(ア)(イ)は、図2で説明する(ア)(イ)と同じ項目を表しています)

出典:内閣府/子ども子育て支援制度概要p6/吹き出し筆者追記

■「幼児教育・保育の無償化」

出典:子ども・子育て支援制度についてより抜粋[内閣府資料 98/119]/吹き出しと囲みは筆者追記

2019年(令和元年)10月1日から、「幼児教育・保育の無償化」が実施されました。【図2】の(ア)〈幼稚園、認可保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育〉を利用する3歳から5歳までのすべての子どもたちの利用料が無償となりました(0歳から2歳の場合は、非課税世帯が対象)。保育料は不徴収です。

一方、【図2】(イ)〈認可外保育施設(※2)、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業〉を利用するこどもたちについては基本利用料のうち、上限付きで助成金が給付される事になりました。(※2:この認可外保育施設は一般的な認可外保育施設、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーシッター、認可外の事業所内保育等を指します) ところがこの助成金は原則、課税所得となり、「雑所得」として確定申告を行う必要がありました。そこで今年、(イ)を利用している子どもたちの中で、保育所や認定こども園等を利用できていない子に対する助成金を、新たに非課税にする税制改正 が行われたのです。

仮にAさんのケースで改正前と改正後を比較してみましょう。

【図3】のように「改正前」は333,000円の助成を受けると、元々の納税額が385,000円のAさんの場合では、納税額が5万円以上増え、438,340円となります。せっかくの支援の効果が目減りしていました。助成金を得ているので、家計上マイナスになっているわけではありませんが、何か腑に落ちません。また、実際の所得が増えたわけではないのに課税されるのは不公平だという指摘が多かった事も頷けます。

「改正後」は助成を受けても納税額は助成金を受けていない時と変わらず385,000円。額面通りの助成を受けられるようになりました。令和3年度分以後の所得税について適用されます。地方税については令和4年度分以後の住民税について適用されます。

新型コロナウィルスの影響や個々の事情により、認可保育所の入所待機中など、助成金対象の施設を利用している方、これまで金銭面でベビーシッターや認可外保育所の利用を躊躇していた方にとってはメリットのある改正です。

助成を利用する場合、利用者は保育料全額を一度対象施設に支払います。その後請求書を提出すると対象者に自治体から払い戻しがあるという仕組みです。自治体や施設により異なる場合がありますので、確認が必要です。また、事前に認定申請が必要ですので、契約するベビーシッター事業所や保育施設、自治体にお問い合わせください。

お近くの施設を探す際、昨年9月にスタートした、こども・子育て支援情報公表システム「ここdeサーチ」では全国の教育・保育施設の情報が閲覧可能です。

「ここdeサーチ」 https://www.wam.go.jp/kokodesearch/ANN010100E00.do

■結び

新型コロナウィルス感染症の一日も早い終息を願いつつ、ウィズコロナの日常が続いています。子育て世代の皆さんは、教育資金、住宅ローン、保険加入、資産運用等々お金にまつわる不安や疑問も多いことでしょう。そんな時は、FPみらいまでお気軽にご相談ください。一緒に考えていきましょう。

2021年9月 CFP依田いずみ