~59歳まで130万円の壁、60歳以上では180万円の壁になります!~
○○円の壁、と言われますが、いくつの壁があるのでしょうか。
大きく分けて、税法上の壁と社会保険上の2つの壁があります。その中でさらに複数の壁が存在しますが、今回は、60歳以上になると出てくる180万円の壁についてお話ししたいと思います。(図の青矢印部分です)
130万円の壁とは、社会保険の扶養に入れる年収の基準を表した言葉です。
社会保険上の扶養条件は次のように定められています。
≪社会保険上の扶養条件≫
表内の太字のとおり、60歳以上になると、扶養条件の年収が180万円未満に変わりますが、実はあまり知られていません。
扶養されている方が配偶者の場合、59歳までは、年金と健康保険料を自身で納入する事なく加入できましたが、60歳(厳密には60歳の誕生日の前日)になると厚生年金第3号被保険者の加入資格はなくなります。ですから60歳以降の扶養については、年収が180万円未満であれば、「配偶者の勤務先の健康保険に入ることができる」という意味になります。
扶養の条件について気をつけておきたい点がありますので、順に説明していきましょう。
【配偶者の年収の減少に注意!】
仮に、夫が扶養者、妻が被扶養者で同居している場合、年収180万円未満“かつ”収入が扶養者の1/2が条件ですので、夫に360万円以上の年収があれば、妻は年収180万円未満までが対象となります。しかし夫の収入が350万円であれば、妻の年収は175万円未満となる点に注意が必要です。雇用条件等に変化が起きることの多い60歳以降では、夫の年収の増減に伴って妻の収入条件が変わることに留意しましょう。
≪被扶養者自身の収入増加≫
60歳以降に給与以外に増える収入として、昭和41年4月1日以前生まれの方は、65歳以前に特別支給の老齢厚生年金があります。その他、個々の加入状況により、厚生年金基金や個人年金保険の受け取りがあれば、その合計が180万円未満かつ扶養者の年収の1/2であることが扶養の条件となります。65歳以降働く場合、本来の年金支給を加えると収入基準を超えてしまう可能性が高まります。その場合年金受給時期の引き下げを検討してもよいでしょう。
また、年収130万円(60歳以上では180万円)の壁を越えないよう就業調整をする方への対応として、年収の壁・支援強化パッケージと名付けられた施策が作られています。
【職場の状況等による一時的な給与収入増についての国の対応】
パート・アルバイトで働く方が繁忙期に労働時間を延ばすなどにより収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで引き続き被扶養者認定されるものです。
(詳しくは厚生労働省HP:年収の壁・支援強化パッケージ
こうした施策がある一方で、10月からは更に加入対象者を増やす改正が行われます。
【2024年10月の改正に注目】
すでに2016年10月から従業員501人以上、2022年10月から従業員101人以上の勤め先で働くパート・アルバイトの方は社会保険の加入対象になっていますが、2024年10月から新たに、従業員51人~100人の企業で働くパート・アルバイトの方が社会保険の加入対象になります。なお、従業員数50人以下の企業においても、従業員と企業が合意することで51人以上の企業等と同じ加入要件にすることができるようになります。
≪対象となる従業員の要件≫
詳しくは社会保険適用拡大ガイド
社会保険加入対象者拡大の動きはこの10月の改正にとどまらず、今後は、従業員数など企業規模の要件をも撤廃する方針を固めています。また、7/3に発表された、5年ごとに行われる年金の定期健診、「財政検証」の結果では、パート労働者の加入要件である、企業規模要件・賃金要件・個人事業所の要件・週の所定労働時間要件などを撤廃した場合について、それぞれ試算と効果が示されています。支え手である加入者を増やして制度の安定を目指します。
60歳以上の方が180万円の壁を越えるなどで扶養条件から外れると、社会保険料負担(約15%)が発生し、手取り収入が減少します。では、メリットはないのでしょうか?
60歳になると第3号被保険者の資格はなくなると前述しましたが、厚生年金第1号被保険者としては70歳
になるまで加入することができますので、納付の月数に応じて年金受取額が増加します。また、自身で健康保険被保険者になることで傷病手当金の支給対象になります。
60歳以降も継続して働く人は年々増えています。ご自身の健康状態・給与以外の収入状況、ご家族の状況などもふまえ、配偶者や子どもの被扶養者になる、または被保険者として自分の年金を増やしながら働く、など今後のライフプランを考えてみてはいかがでしょう。
詳しくは厚生労働省HP
および配偶者の勤務先の健康保険組合にご確認ください。