迷惑メールとフィッシング詐欺

 みなさまは最近迷惑メールが増えたなって感じていませんか?
私のところにも過去から迷惑メールはありましたが、最近急に多くなりました。
その都度、迷惑メールに対しては、同じアドレスからのものは自動的に次回から迷惑メールフォルダーに 振分けられるよう設定しているのですが、アドレスの一部だけをランダムな文字列などにして この設定をしてもすり抜けて届くメールが多かったです。
迷惑メールのアドレスをみると最後が「.cn」で中国からのメールアドレスから配信されているようで、 この「.cn」で終わるメールアドレスは、自動的に迷惑メールフォルダーに振り分けられるようにしたいと思っていいましたが、
いろいろ検索してみて、そのような設定が出来ることがわかったので紹介します。

 私が使用しているメールソフトはMicrosoft Outlookです。
その他のメールソフトを使用している人は、別な方法になるかと思いますが
たぶん、同様な設定が可能だと思います。
以下の文章は、Microsoft Outlookを前提にした迷惑メールへの対応です。
Microsoft Outlookはメールソフトの中でも一番シェアが高いと思われるで、
この記事を見ている人の中にも使用している人も多いのではないでしょうか。

 最近、多くなった本来の会社を装った、明らかに迷惑メールでフィッシング詐欺に
とわかるものは、次回から受信フォルダーに入らずに迷惑メールフォルダーに入るように、 下記のように迷惑メールリストに登録してました。
➀メールタイトルを右クリックして、そこから迷惑メールを選び、受信拒否リストに追加
②選択項目から迷惑メールをクリック
➂出てきた対応方法から受信拒否リストを選ぶ

でも、この方法だとアドレスの一部をランダムに変えた下記のようなメールが多いと、毎回処理するのが大変です。

そこで、このアドレスの最後が「.cn」で終わるメールは中国発のメールなので、最後の文字が「.cn」で終わるものを自動的に 迷惑メールフォルダに入れることが出来ないかと方法を探してみたら下記の方法が見つかりました。
ただ、この方法は中国のサイトからネット通販などでお買い物をしている人には、正規のメールも迷惑メールに入ってしますので お勧め出来ません。


「.cn」で終わるメールを迷惑フォルダーに自動的に振り分ける方法

1.[ホーム]タブの[削除]グループの[迷惑メール]をクリックして[迷惑メールのオプション]をクリックします。

2.[迷惑メールオプション]ダイアログボックスの[インターナショナル]タブを開き、 [ブロックするトップレベルドメインリスト]ボタンをクリックします。

3.ブロックする国のトップレベルドメイン(この場合はCN)にチェックを入れて[OK]ボタンをクリックします。

最近は、証券会社を装って、早く二重認証を設定しないと・・
というメールも多いので、メール本文にあるリンク先は絶対にクリックしないようにしましょう!

CFP 磯野 正美


共働き・共育てを推進、支援する 『出生時育児休業(産後パパ育休)』と『出生後休業支援給付金』

約5年前、2020年4月に「『パパ休暇』と『育児休業社会保険料免除制度』を利用しよう!」というテーマでブログを書きました。厚生労働省が、毎年実施している「雇用均等基本調査」によると、当時、2018年の男性の育児休業取得率は、6.16%で2020年に13%にするという政府目標を掲げていました。結果的に初めて10%を超えたものの12.7%と目標未達でした。3年後の2023年には、女性の取得率84.1%にはまだまだ及びませんが、30.1%と急増で、前年対比13%上昇しました。取得期間を見ると、最多が、1ヶ月~3ヶ月未満で28%、2週間~1ヶ月未満と合わせると約半分が、2週間以上取得していることになります。5年前の取得期間は、2週間未満が71.4%を占めていたのですが、数日や2週間未満が半数以下に減少し、2週間以上の育児休業を取得する人が増えていることがわかります。状況は改善されていますが、世界各国と比較しても、まだ日本の男性の家事・育児参加率は低いのが実態です。少子高齢化が進む中、働く世代が育児や介護と両立してキャリアアップ出来るような環境の整備が急務であり、こうした社会的な背景を踏まえ、『育児・介護休業法』が継続的に改正されています。加えて、2025年4月から『雇用保険法』改正により2つの新たな育児休業給付金が創設されました。
■育児休業法関連の主な法改正
・『育児休業法』は、1991年に制定、1992年4月1日に施行されました。施行当時、法律の適用対象は常時雇用する従業員数が常時30人以上の事業所でしたが、1995年4月1日に改正され、新たに介護休業制度が創設され法律の名称が、『育児・介護休業法』に変更され、従業員数に関わらずすべての事業所が法律の適用対象となりました。
・『育児・介護休業法』には、出産や育児、介護などの理由による労働者の離職を防ぎ、男女ともに家庭と仕事を両立できる雇用環境を整備する規定が定められており、より柔軟で現代のニーズに応じた様々な制度が創設されるなどの改正が継続的に行われています。
・2023年、夫婦共同での子育て支援を推進し男性の育児休業取得率を大幅に上昇させた改正内容に、「出生時育児休業(通称「産後パパ育休」)の創設、(2022年10月1日施行)、「育児休業の分割取得」、が挙げられます。2023年4月1日には、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、男性労働者の育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられています。
■出生時育児休業(産後パパ育休)
・出生時育児休業は、原則、男性労働者(特別養子縁組里親の場合は女性も可)が、子の出生後8週間以内(配偶者等の産後休業期間に相当)に最大4週間まで休業することができる制度で『男性版の産休』とも呼ばれています。
男性の育児休業取得促進のため、男性の取得ニーズの高い子の出生直後の時期について、従来の育児休業よりも柔軟で取得しやすい枠組みの休業として追加して制定された別の制度です。
・出生時育児休業は、原則、休業の2週間前までに申し出ることで休暇を取得できます。初めにまとめて申し出れば、分割して2回取得することも可能です。通常の「育児休業」も2回に分割して取得することができます。このため子の出生後8週間以内に「出生時育児休業」を2回に分割して取得、その後、子が1歳となるまでに「育児休業」を2回に分割して取得すれば、合計4回に分割して休業することが可能(下記例2)になります。長期の育児休業取得の不安がある場合は、まず出生時育児休業で短期間の育児休業を試すという活用もできます。

*出生時育児休業と従来の育児休業の違いについては下記表ご参照ください。

・出生時育児休業期間中の就業は、認められていますが、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することを可能とするものです。この就業に関しては、労働者又は使用者の都合で自由に行えるものではなく、事前の手続きを経る必要があるなどかなり細かいルールがあります。
【出生時育児休業期間中に就業するための手順】
①労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申出
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
(候補日等がない(就業させることを希望しない)場合はその旨)
③労働者が同意
④事業主が通知
【出生時育児休業期間中に就業するための要件】
・就業日数(時間数)の合計は、休業期間中の総所定労働日数(時間数)の半分以下とすること
・休業開始日と終了日については、所定労働時間に対しフルタイム就業不可(一部就業は可)
・所定労働時間を超えて労働しないこと(所定外残業は一切禁止)

■育児休業等給付
・『育児・介護休業法』により労働者(日々雇用される人期間を定めて雇用される人(有期契約労働者)で、一定の条件を満たせない人・労使協定により、育児休業の対象から外された人を除く)は、その養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができますが、その期間中は、「ノーワーク・ノーペイの原則」によって無給であることが一般的なので経済的不安があります。育児期間中の収入減を補う目的で支給されるのが育児休業等給付です。
・育児休業等給付は、『雇用保険法』に基づき支給されるもので、雇用保険に一定期間加入している加入者が受給対象者です。育児休業期間に、子の年齢や養育の状況に応じて、要件を満たす場合に「育児休業給付金」「出生時育児休業金」が支給されます。支給額は、休業開始から通算180日までは休業開始時賃金日額の67%、180日経過後は50%です。[※休業開始時賃金日額は、原則として、育児休業開始前6か月間の総支給額(賞与は除く)を180で除した額]
さらに『雇用保険法』の改正により、2025年4月1日から「出生後休業支援給付金」、「育児時短就業給付金」が創設されました。育児休業中の給付金が充実することで、特に男性の育児休業取得の促進が期待されています。
■出生後休業支援給付金
・同一の子の出生直後の対象期間(※1)に、両親とも出生時育児休業および育児休業を通算して14日以上取得した場合、28日間を上限に出生後休業支援給付金として(出生時)育児休業給付金にプラスして13%の上乗せ支給を申請できます。なお、子の出生日の翌日時点で、「配偶者(妻)が産後休業期間中」である場合や「配偶者が就業していない(妻が専業主婦である場合など)」「配偶者が自営業やフリーランスで働いて雇用される労働者でない」もしくは「ひとり親の場合」などの事由に該当している場合は、両親ともに(出生時)育児休業を取得していなくても、申請することができます。
・支給額は、休業開始時賃金日額(※2)×14日以上休業した期間の日数(上限28日)×13%
・一般的に、給与の総支給額から社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)と所得税を控除した後の手取り額は支給総額の約80%と言われているので、支給される給付金は非課税であり、育児休業中は一定の要件の下に申請により社会保険料が免除されるため、「出生後休業支援給付金」(給付率13%)と(出生時)育児休業給付金(給付率67%)を活用して給付率80%となれば、実質的な手取り額は、変わらないということになります。

※1「対象期間」
・被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親または子が養子の場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間。                     (下記表の例1、例2参照)
・ 被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親、かつ、子が養子でない場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間。(下記表の例3、例4参照)
・施行日の2025年4月1日より前から引き続いて育児休業をしている場合は、下線部分を「2025年4月1日」として要件を確認します。対象期間が施行日をまたぐかどうかが重要なポイントになります。具体的には、産後休業をしていない場合(主に男性の場合)は、2025年2月17日以降、産後休業している女性の場合は、2024年12月23日以降に出生日または出産予定日の遅い日がある場合に支給対象になる可能性があります。(ハローワークでご確認ください。)


※2「休業開始時賃金日額」には上限額が設定されているので、必ずしも実際の休業前賃金額に対して手取り額が変わらないとは限りません。(2024年4月1日時点:15,690円(毎年8月1日に改定))目安として月収47万円以上の方ですと、実質的な手取り額は、減少します。

◆2022年10月施行された育児休業「出生時育児休業」と2025年4月1日に施行された「出生後休業支援給付金」をご紹介しました。2024年の『育児・介護休業法』改正には、男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化などの内容が多く盛り込まれ、段階的に2025年4月1日から施行されています。
また、同時に『雇用保険法』も改正され育児休業取得や短時間労働の取得時の収入減の補填として「出生後休業支援給付金」・「育児時短就業給付金」の2つの給付金が創設されました。
男性の育児参加を促し、女性に偏りがちな家事・育児を見直し、女性の就業機会の拡大、出産意欲向上、男女の雇用格差の改善につながることが期待されます。男性労働者の育児休業取得率等の取得状況を年1回公表することが、常時雇用する労働者が300人超1,000人以下の企業に義務付けられたことも男性育休取得率上昇の支援となりそうです。
仕事をしながら「育児・介護」に関わっている方、今後関わられる方、利用できる制度があるかもしれません。
是非、下記の資料をご参照ください。育児休業等給付についても細かいルールがあるので、わからないことは、ハローワークでご確認ください。

2025年4月 CFP 石黒貴子

厚労省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和7年4月1日から段階的に施行』
001259367.pdf

厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続 令和7年1月1日改訂版」
001461102.pdf

知っておきたい傷病手当金

~病気やケガで働けなくなった時の支えになります~

 企業に勤務されている方の健康保険制度には、病気やケガで働けなくなった時に支えとなる傷病手当金制度があります。

 傷病手当金は、業務外の病気やケガでの療養中に仕事が出来ず、給与が支払われない場合に、組合健保、協会けんぽなどに加入している被保険者に、健康保険から支給される給付金です。民間の保険に就業不能保険、所得補償保険等ありますが、傷病手当金は、療養中の収入減少を補填する重要な公的保障制度です。国民健康保険、後期高齢者医療の加入者は原則対象外となります。

 全国健康保険協会令和5年度の調査では、総数169,957件297億円余りが支給されており、年齢階級別状況では、50歳~54歳が20,639件約39.6億円、次いで55歳~59歳19,279件約38.8億円が支払われています。

同調査による傷病手当金の現況、受給の要因となる病気やケガについて、全体の35%を精神および行動の障害、次いで13.5%がガン等の新生物が上位を占めています。

■受給条件
以下の条件を全て満たす必要があります。
1.協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などに加入する被保険者本人であること
国民健康保険の加入者は受給できません
2.業務外の病気やケガによる療養であること
3.仕事に就けない状態であること
4.連続する3日間(待期期間※1)を含む4日以上仕事を休んだこと
5.休業期間中に給与が支払われない事
 ただし給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては支給されません。

※1待期3日間の考え方(下図参照)
会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事に行った場合には「待期3日間」は成立しません。また待期期間の3日間連続の休日は、有給休暇でもあらかじめ定められた休暇(公休)でも無給休暇(欠勤)でも構いません。

■支給額の計算方法:
1日あたりの傷病手当金 = (直近12ヵ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30) × 2/3

■支給される期間
支給期間は通算で最長1年6ヶ月です。
令和4年1月1日からの法改正により、支給期間が通算されるようになりました。途中、就労などで傷病手当金が支給されない期間は、支給期間から除外されます。

・同一の病気やケガに関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象
・支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能です。

■申請のポイント
・「傷病手当金支給申請書」に事業主と療養担当者(医師等)の証明を受け協会けんぽに提出します。内容が審査され不備等がなければ約2週間程度で支給となります。
・申請先、支給は加入している健康保険の保険者です。勤務先が傷病手当金を負担する、支払うものではありません
・共済組合や健康保険組合に加入している方は独自の傷病手当付加金もある可能性があります。勤務先の健保担当者または健康保険の保険者へ確認しましょう。
・申請する場合は、勤務先とも相談し、申請日や休みの取り方をすり合わせたうえで医師が、作成する労務不能の証明書を依頼してもらうとスムーズにすすめられるようです。

■注意点
・休職中でも社会保険料や住民税の支払い義務があります
・会社が本人負担の保険料を負担した場合、賃金の支給とみなされ、傷病手当金が調整される可能性があります。

■退職後に継続受給可能なケース
・資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上ある
・資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、または受けられる状態にある(待期完成しているなどの支給要件を満たしている)
⇒遅くとも退職日の3日前からの申請をし、労務不能で休んでいる状態。また退職日も出勤できず、その後も労務不能状態が継続する方が対象となります。

似ている名称のため混同しそうですので付記しますと、雇用保険の制度に「傷病手当」があります。こちらは傷病手当金とは別の制度です。雇用保険の受給資格者がハローワークで求職の申し込みをした後に、15日以上引き続いて病気やけがのために職業に就くことができない場合に、失業保険(基本手当)の受給ができない日の生活の安定を図るために支給されます。(14日以内の病気やけがの場合には基本手当が支給されます)傷病手当の日額は基本手当の日額と同額です。また、30日以上引き続いて職業に就くことができないときには、基本手当の受給期間を最大4年間まで延長できます。

病気やケガで働けなくなった際の重要な収入源となる公的制度を知っておくと、いざという時あわてずに対処できるかもしれません。下にパンフレット及び協会けんぽのURLを付けますので、気になる方はご覧ください。
※傷病手当についてはハローワークが窓口となります。

CFP 依田いずみ
2025年3月

=資料=

病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

患者・国民に身近な医療の在り方 (厚生労働省)

現金給付受給者状況調査(令和5年度) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

健保総合_35-56.indd (パンフレット)

ハローワークインターネットサービス – 基本手当について (傷病手当について)

加給年金と振替加算 

年金は私たちの老後の重要な要素であるが、年金制度は結構複雑だ。
本ブログには、これまで年金制度に関するテーマとして;
「年金の繰上げ・繰り下げ支給」(2019年5月)
「経過的加算って知ってますか?」(2024年6月)
をそれぞれ取り上げ、出来るだけ分かり易く説明した。
今回は加給年金と振替加算について説明する。
1.加給年金
まず加給年金について説明しよう。
日本年金機構のホームページには、次のような記述がある。
(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html)
「厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点
(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を
維持されている配偶者または子がいるときに加算されます。」
これを嚙み砕いて説明すると以下のようになる。
厚生年金に20年以上加入していた人が、65歳になり厚生年金を
受給できるようになった際に、生計を維持する(扶養している)配偶者・
子供がいると厚生年金に上乗せして支給される年金が加給年金だ。
ただし条件があり、配偶者は65歳未満であることで収入も850万円以下
であること、子供は18歳未満であること。

すなわち、ざっくり言えば配偶者が2歳年下であれば、配偶者が満65歳
になるまでの2年間加給年金が支給され、年上であれば加給年金の
支給は無い。加給年金は配偶者が65歳になり国民年金を受給すると、
支給停止となる。配偶者の加給年金額は、厚生年金受給者が
昭和18年4月2日以降生まれの場合、年間408,100円と中々の金額である。
加給年金は「年金の家族手当」と言われることもある。
加給年金は厚生年金の仕組みに基づくため、支給対象は厚生年金の
支給対象である会社員・公務員となることに注意していただきたい。
加給年金を受給するには、必要書類を添えて65歳誕生日の前日以降に
最寄りの年金事務所へ提出する必要がある。
老齢厚生年金が受給できる65歳に近づいたら、注意が必要だ。
2.振替加算
振替加算は経過的加算とともに、馴染みのない言葉だが、
厚生年金受給者の配偶者を持ち、配偶者が昭和41年4月1日以前に
生まれた方に限られる内容とはいえ、年金定期便に振替加算が記載されて
いる方には気になる内容であり、知っておきたい事項である。
振替加算は、加給年金とセットで考えると分かりやすい。
配偶者・子供が所定の年齢になり、加給年金が支給されなくなると、
ありがたいことに、配偶者が老齢基礎年金を受給できる場合は、
配偶者の老齢基礎年金に上乗せして支給されるのが振替加算である。

なぜ、加給年金が支給停止になると配偶者に振替加算が支給される
のであろうか。
これには、日本の年金制度の改正が関係している。
国民年金加入は、現在は義務化されているが、以前は任意加入であった。
現在のように加入が義務化されたのは、昭和61年(1986年)4月の年金制度
改正からだ。この改正で国民年金の加入が義務化された。
国民年金加入が任意であったので、昭和61年4月1日現在20歳以上で
あった方(昭和41年4月1日以前生まれの方)の中には、国民年金保険料が未納となる時期が生じる場合があり、その結果65歳になった際に国民年金が満額もらえない方が存在することになった。
振替加算は、これらの方の救済処置として設立された。
 振替加算額は生まれた年により変わり、最大は加給年金額(特別加算を
除く)とほぼ同額で、その他生まれた年により係数を掛けた金額となって
いる。参考として、日本年金機構のホームページに記載の振替加算額の抜粋を下記に示す。
下表に示すように、昭和41年4月1日以降に生まれた方への振替加算額は
ゼロとなっていることが分かる。

それでは、振替加算額は何を見れば分かるのだろうか?
振替加算を支給されている方は、毎年5月から6月頃送付される
「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」の『基本額』と
『支給停止額』の間に印刷されている。

以上、加給年金と振替加算について説明した。年金制度は適宜改正される。
今後も年金制度が改正されて、私たちの生活に影響が大きい項目について、
その都度ブログに載せて行きたい。

CFP 前川敏郎

令和7年年頭所感

 皆様本年もどうぞ宜しくお願いします。
 さて、このごろ喧しい話題がいわゆる年収103万円の壁問題です。
年初こそ少し静かになりましたが、昨年末は次年度税制大綱の決定までいろいろな報道がされていました。
 そもそも年収103万円(月額約86千円)を超えないように働いている人(主に世帯主に扶養されている主婦やアルバイトの学生等)は約100万人以下と推測されています。それでも有権者としての勢力では侮れないようです。
 今後年度末に向けて政府・自民党・公明党と国民民主党との駆け引きが続くのでしょうが、年末に自民党が決めた税制大綱では123万円と20万円の増加案を中心に議論が進むと思われます。国民民主党の主張する173万円への引き上げは税収減が大きすぎ実現は難しいと推測されます。
 いずれにしても今回の年収103万円の壁問題は私たちに良い教訓を示してくれたと思います。いかに過去30年間デフレ等の問題があったとしても、約30年間所得税の基礎控除と給与所得控除が一定のままであったことは政府・政党・国民の怠慢であったと言わざるを得ないと思うのです。この間国民民主党の言うように最低賃金は
1.7 倍になったのですから。欧米諸国では毎年のように基礎控除や給与所得控除の額が検討・変更されているのです。ですから一気に1.7倍ということではなく数年かけて引き揚げてゆくというような妥当な出口に向かうことを期待しております。
 読書感想
 最近読んだ本で紹介したい本があります。スコット・ギャロウェイ著「THE ALGEBRA OF WEALTH」(邦訳名、一生お金を吸い寄せる富の方程式)ダイヤモンド社刊、2024年12月初版刊行。ALGEBRAとは一般的には代数学と訳されることが多いようですが本書では方程式と訳しているようです。著者のスコット・ギャロウェイ氏はニュウヨーク大学スターン経営大学院教授で過去には「THE FOUR GAGA](4騎士が創り変えた世界)が日本でも15万部のベストセラーとなったことでも知られている。
 本書の主な主張は以下の方程式に表されている。
 富=フオーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
これを分かりやすく言い換えると
「富=仕事に集中して収入を高める+無駄遣いしない節度ある生活×複利の力を生かした長期的な投資×分散投資でリスクを減らす」となる。
本書では富とは経済的自立という目的を実現する手段と規定し、経済的な不安がないことが富だとしている。
 この方程式は考えてみればごくごく当然のことを言っているように見える。FPの方やファイナンスについて関心がある人ならば後半の複利の力を生かした長期的な投資や分散投資でリスクを減らすという語句は腹に落ちやすいのではないか。
 その他、長期投資のベンチマーク(指標銘柄)としてはS&P500が良く、その水準は8%だともいう。それは過去20年間のS&P500の平均リターンが8%であるからだと主張する。だが、これはアメリカの話であって日本特に私にとっての目指すべき平均リターンは4~5%程度ではないかと感じる。
 また、この様な本ではあまり触れることが少ない利益が出ている場合の対処法も示している。これは一言で言うなら「積極的に利益を確定しよう」となる。利益が出たらその一定部分を換金して、他の資産に分散投資することを勧めている。
 よく聞く話が、今この銘柄がいくら儲かっている、いた、というももの。評価益のままではいつなくなってしまうかもしれない。実現益にしてこそ利益確定したことになる。この部分は私のかねてからの思いと合致するものがあると感じました。                            

以上
CFP 重田 勉


始まった「信用スコア」

信販会社に20年ほど勤めていたこともあり、先月11月28日に始まった 「信用スコア」に興味を持ちました。通常クレジットカードや住宅ローン を申込む時は、カード会社や金融機関は申込者の支払能力を必ず「審査」 します。審査には申込者の年齢、年収、勤務先、勤続年数などの属性に加
えて「信用情報機関」に蓄積されている信用情報が使われます。その信用情報をわかりやすく指数(スコ
ア)化して見られるサービスが、クレジットカード会社や貸金業者などが加盟する信用情報機関のシー・ アイ・シー(CIC) で始まった「クレジット・ガイダンス」です。
今までもCICに個人で開示は申し込めましたが、それはカードやローンの契約件数や支払状況など確認 できても、全体として自分の信用情報がどう評価されるかはわかりにくかったのが、今回CICが始めた 「クレジット・ガイダンス」は総合的に統計処理して200~800のスコアで示し、信用力がどの程度なの か客観的にわかるようになりました。

上記図のように、消費者がクレジットカードを申し込むと、カード会社 は信用情報機関に登録されている情報を照会します。そこで既に保有す るカードの枚数、ローンの借入件数、利用限度額、残債の額、毎月の支 払状況、過去6ヶ月間の新規申込み件数などを確認し、自社で収集する 情報も加味した上で、支払能力に問題がないと判断すればカードを発行 します。そして、その後の利用者の残債額や支払状況などの情報を信用 情報機関に随時登録します。


2025 年 4 月1日からは加盟企業へのスコア開示が始まりますので、審 査に要する時間は短縮されるでしょう。

でも一番大事なのは自分のスコ アを知り、自分で債務超過を防ぐことです。

次に中国や米国も見てみましょう。
中国では、信用スコアを活用したサービスがかなり普及しており、特に電子決済サービスのアリペイ(支 付宝)で有名なアリババグループの傘下「芝麻信用(セサミクレジット、ジーマ信用)」の信用スコアは 事実上、中国の信用スコアの標準として普及しています。
チェック項目は以下の5つです。太字の所は中国らしい特徴があります。

身分特質(社会的地位、年齢、学歴、職業など)
② 履行能力(過去の支払い状況、資産など)
③ 信用歴史(クレジット、取引履歴など)
人脈関係(交友関係、相手の身分など)
行為偏好(消費の特徴など)


芝麻信用は右表のように5段階評価です。

アメリカFICOスコアは、個人の信用力を300から850の間で評価し、5つの要素によってクレジット スコアが数値化されています。
返済履歴:35% 月々の支払が遅延なく行われているか
未払い残高:30% 利用限度額に余裕を持っているか。利用限度額の30%くらいまでが理想的
信用履歴の長さ:15% 返済履歴が長いほど信用が増していく
借入の種類や構成:10% クレジットカードだけでなく、車や家のローンなど様々な借入をして いるとクレジットスコアが下がる
新しい借り入れ:10% 頻繁に借入をしているとクレジットスコアが下がるため、クレジット カードを作成してから3ヶ月以上の期間を空けないと、次の新しいクレジッ
トカードは承認されにくい
全米平均は680ほどで、大多数の人のスコアは600から800の間に収まるが、720以上の人々は「スー パープライム」、660~719の人々は「プライム」、その下の580~619の人々が「サブプライム」と呼ばれ ています。このあたりから、明確にリスクありとみなされはじめ、借入条件も厳しいものとなります。
(2007 年に起きたサブプライムローンの崩壊)
米国では住宅ローン金利が高まっていますが、すべての人が同じ金利で借りられるわけではなく、 有利な条件で借りられるかどうかは様々な要因で決まり、特に影響が大きいのが信用力スコアとのこと です。なんだか怖い気がしてきました。

以上、3つの国を見てきましたが、日本も信用スコアにより借り入れ 利率も変わるという流れになっていくのか今後も注視していきたい と思います。

CFP 佐藤広子

イチオシ! エンディングノート

    ~法的に価値はないが自由度抜群で書きやすいし、さらに・・・~
「エンディングノート」は「終活」のひとつのアイテムと言われています。
昨今、世界中で政治、経済に波乱が起き、戦争も続いています。さらに、今夏はいつもと違う予測不能な台風も出現しました。また、突然に友人が大病を患ったなどの連絡がありませんでしたか? 日々、うっすらと不安を感じて過ごしている方がいらっしゃったら、始めましょう「終活」を。そうは言っても、何から始めればいいか分からない方が多いと思いますが、一般的に取り組みやすいと言われている「エンディングノート」(初心者向け)をお勧めします。当該ノートは公的機関で配布されている物もありますが、わたしは市販品を購入し、パソコン・スマホへのデータ入力ではなく、ひさしぶりに鉛筆と消しゴムを握っての手作業で作成しました。

「エンディングノート」には3つの大切な役割があるようです。
① 自分の情報を記入することで自分自身の今の状態を再確認します。
万一の場合の連絡先(親戚・友人・会費を納めている所属グループ)、主治医と服薬(おくすり手帳がある)、使用中のカード情報、通帳(分かる範囲で印鑑)、光熱費などの口座引き落し先、定期購入商品や月極め支払いの通信会社、保険、年金、有価証券、不動産、PCとスマホ(IDとパスワード)、クレジットカード、ポイントカード、ホームページ、SNSなど。箪笥やバッグからそれぞれを取り出してランダムに記入していきます。最初からノートに一覧表があるから何も考えずに記入が進みます。間違えても、消しゴムを使って、訂正や削除も簡単にできます。しかし、作業中、自分のことが意外にわかってない事に気づきます。「えっ、そうなんだ」状態です。私に万一の事が起こったら、家族はなおさらです。

② 万一の場合に引き継ぐべき事を家族にお願いする。
たとえば、自分の荷物、ペット、介護、告知、延命治療、臓器移植、葬儀、お墓、供養、遺言書、家系図などです。私に何かあったとき、残された家族がさまざまなつらい判断を迫られる可能性があると思います。自分の考えを書き留めて置くと家族の苦悩を大幅に減らすことができるのではないでしょうか。なかには難しく悲しい決断を記入する箇所もあり、不安と寂しい気持ちになりますが、そこは残された家族のことを考えて、きっぱりと記入しましょう。家族へのお役立ち相続ツールです。

③ 最後に、今後、私はどう生きていくかを考えます。
現在及び今後の収入・支出のシミュレーション、家族の生年月日他(これは間違いなくキチンと書きましょう。間違えられた本人が悲しみます)、自分の歴史(物語り風に大げさにドラマの主役になった気分で書く)、やってみたいこと(たくさんあればあるほど良い)、やってみること(今後の行動の決心と宣言)、皆さんへの個別メッセージ(素直な気持ちと多めの感謝を)など自由にわがままにざっくばらんに記入します。これからの人生に希望が湧いてきます。

 前半は少々寂しい気持ちになりますが、後半になると非常に楽しく、なぜか元気になってきます。そして、記入を完了すると今まで後回しにしていた他の「終活」である断捨離(アルバム、本や衣類,物の整理)が自然にできる、いやいや、せざるを得ない状態になると思います。だって、それらは今後生きていくのに邪魔な物だからです。
「エンディングノートは今を生きる糧になります」
これからももっと、楽しく、愉快に過ごしましょう。
以上が年齢的にもそろそろと思いながらも後回しにしているあなたに「エンディングノート」をお勧めする理由です。
残念ながら、なかには、③の「今後の収入・支出のシミュレーション」から老後に一抹の不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。
その際は是非、「FPみらい」へ迷わず、ご相談ください。
なお、「エンディングノート」はいつでも自由に書き換えができます。時々は見直すことも大事です。


分譲マンションの相続税評価額計算ルールの見直し~相続税の負担が増える可能性があります~

2023年度の税制改正で分譲マンションの相続税評価額の算定方法が見直され、2024年1月1日以降に発生する相続、贈与、遺贈について、新ルールが適用されています。
これは、分譲マンションの相続税評価額と市場価格との乖離を利用した相続税の過度の節税が問題となっていたためです。

従来の評価方法では、分譲マンション一室の相続税評価額は建物の固定資産税評価額と、路線価から算出した敷地利用権の価額を合計したものであったため、高層分譲マンションのように住居戸数が多く建物全体の敷地面積に対する各住居部分の面積の割合が小さくなる場合、相続税評価額が低くなりがちになります。また、市場価格は建物の階数や所在階数は反映されますが築年数の反映が不十分となり、高層の建物で高層階の物件は築年数によらず高くなりやすい状況となっていました。
新ルールによる相続税評価額は、市場価格との乖離が少なくなるよう従来の相続税評価額に、建物の築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度を反映し算出した区分所有補正率を掛けたものとなります。

1.分譲マンション一室の相続税評価額算定方法

1.1従来ルールによる相続税評価額

従来ルールによる相続税評価額

=区分所有建物の価額   +    敷地利用権の価額   

(固定資産税評価額)   (敷地全体の価額 x 敷地権の割合)

1.2 新ルールによる相続税評価額

 新ルールによる相続税評価額=従来ルールによる相続税評価額 x 区分所有補正率

 1)区分所有補正率

 区分所有補正率は、分譲マンションの多数の売買実例をもとに予測した市場価格と、従来ルールによる相続税評価額からの乖離の比率である評価乖離率を計算し、その逆数である評価水準(=1/評価乖離率)から求めます。

評価水準は、評価乖離率の逆数であるため市場価格が従来ルールによる相続税評価額よりも大きいと評価水準の値は小さくなります。

  評価水準     区分所有補正率

0.6未満      評価乖離率x0.6

0.6以上1以下      1 

1超        評価乖離率   

新ルールによる相続税評価額は、従来ルールで算出した相続税評価額が市場価格の60%未満の場合は市場価格の60%に引き上げられ、60%以上100%以下の場合は補正はなく、100%を超える場合は100%に引き下げられます。

2)評価乖離率の計算式

 区分所有補正率を求める際の基となる評価乖離率は以下の数式をもとに計算されます。

築年数にはマイナスの係数が掛けられていますので、築年数が大きいと評価乖離率が下がります。 建物の総階数と所在階にはプラスの係数が掛けられていますので、これらの数字が大きいほど評価乖離率は上がります。建物の敷地面積全体に対する各居住部分の敷地利用権の面積の比率である敷地持分狭小度については、マイナスの係数が掛けられていますが、高層マンションのように敷地持分狭小度の数値が小さい場合は、評価乖離率は下がりにくいことになります。

評価乖離率

=築年数x△0.033+総階数指数x0.239+所在階x0.018+敷地持分狭小度x△1.195

総階数指数:総階数/33

2.新ルールによる相続税評価額の計算

分譲マンションの相続税評価額が新ルールの適用によりどれだけ影響を受けるかを具体的な事例で見てゆきます。

事例は、国税庁の「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」で使用された数値を使用しています。

    所在地 総階数 所在階数 築年数 専有面積 市場価格  相続税評価額* 乖離率  事例1 東京都  43階  23階   9年  67.17㎡ 11,900万円 3,720万円   3.20倍

事例2 福岡県  9階  9階   22年  78.20㎡  3,500万円  1,483万円   2.36倍

事例3  広島県  10階  8階      6年   71.59㎡  2,240万円   954万円   2.34倍

*従来ルール適用

1)新ルールによる相続税評価額

     評価乖離率  相続税評価額  

事例1  3.41倍   7,611万円    

事例2  2.07倍   1,842万円

事例3  2.59倍   1,483万円

新ルールによる相続税評価額は、超高層分譲マンションである事例1では従来ルールによる相続税評価額の2.0倍となり、新ルール適用の影響が最も大きく表れていますが、事例2および3でも各々1.2倍、1.6倍となっており、新ルール適用により分譲マンションの相続税評価額が影響を受けるのは超高層分譲マンションだけではないことがわかります。

区分所有補正率は、国税庁のサイト「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」で簡単に計算することができます。また、従来ルールによる相続税評価額は、お住いの市役所から送付される「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)納税通知書」や登記簿等から計算できます。

「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」サイト

新ルールではお住まいが分譲マンションの方は相続税評価額が高くなる可能性があるため、相続税評価額を具体的に計算することで相続税対策を早めに検討されてみてはいかがでしょうか?

CFP 岩船康則

新NISA始めてますか?早くスタートした方がこんなにお得に!

 ここに架空の高校での同級生二人(AさんとBさん)がいます。

 Aさんは高校卒業後18歳で、すぐに会社に勤め始め新NISAを開始
生活をきりつめ、毎年120万円積立を15年間行いました。
NISA累計投資限度額は1,800万円なので、そこまで15年間投資を行った後は、 投資は一切せずに、給料は全部使って自由な生活を続け定年を迎えました。

 一方Bさんは大学院まで進み、その後一流企業に勤め24歳から新NISAを開始しました。 BさんもAさん同様一年間の毎年120万円積立、 新NISA限度額1,800万円になるまで積立完了しました。 積立完了した38歳の時にAさんと会って、 その時の資産額を聞いてみると、Aさんは4,757万円で、 自分は、まだ3,170万円とだいぶ負けていたので、NISA枠を使い切ったあとも、 生活は質素のまま暮らし課税口座である特定口座で 毎年120万円 積立を継続していきました。
65歳定年を迎えた時の累計投資額は5,040万円となりました。

  そこで、お互い65歳になり定年退社した時、久しぶりにAさんと会って、資産の額を比べました。
BさんはAさんよりずっと多く投資し続けてきたので、当然自分が多いと思ったのですが、 結果は以下の通りでした。

Aさんの投資額 15年間1,800万円
Bさんの投資額 42年間5,040万円
65歳時点のAさんの評価額 2億9,558万円(無税で全額受け取れる)
65歳時点のBさんの評価額 2億9,171万円(課税口座で積立分の税金1,266万円控除後)

 たった、6年遅くNISAを開始しただけなのに、Aさんは1800万円投資してその後、
一切投資しないのにBさんはその後もずっと投資続けたにも関わらず、 65歳時点ではまだ追いつけませんでした。
 この例では、7%で運用するという前提でシミュレーションしました。
7%という数字は過去30年の全世界株式(オルカン)は8.7%(注1)なので、 そんなに非現実的な数字ではありません。
注1:円ベース配当込み 2024年1月時点 株式会社インベストメントブリッジ WEB「いろはにマネー」より 全世界株式30年平均

 これは、「複利の効果がどれだけ凄いか」がわかるお話だと思います。

この物語はリック・イーデルマン著の「家庭の金銭学」という本に出てくる、 複利の凄さを教える有名なジャックとジルの投資話をNISA版にアレンジしたものです。

 今回の例では、極端に投資にウェイトを置いていますが、 実際には若い時に色々な体験を積むのも人生を豊かにすることになるので、 バランスを取って適度に積立を行っていくことが大事です。
最近では、ポイントで投信積立も出来る証券会社もあるので、 まずは証券口座を開設して少額でもスタートすることが大事だと思います。.

CFP 磯野 正美

転職・中途退職された方!企業型DC(企業型確定拠出年金)を放置していませんか? ~自動移換はデメリットしかありません~

◆企業型DC導入企業数・DC加入者数が増加している
『企業型DC(企業型確定拠出年金)』とは、企業が従業員の退職金や年金を支援するために導入する福利厚生制度です。企業が掛金を毎月拠出し、その運用は、従業員自身が行います。拠出金は確定していますが、将来受け取る退職金や年金は運用成績次第で増やせる可能性があるため、「確定拠出年金Defined Contribution」と呼ばれています。
企業型DCは、会社が規約を定めれば従業員が一定の範囲で上乗せして拠出することも可能で、年々導入企業が増え、加入者数も増加しています。厚生労働省の確定拠出年金統計資料によれば令和5年3月現在、企業型の規約数は、7,049件。企業型DC加入者数は、805万人。正規従業員(3,615万人)の4.5人に1人が加入していることになります。

◆自動移換者数が増加

企業型DCに加入されていた方が、転職などで会社を退職すると加入資格を失います。資格喪失してから6ヶ月以内に手続きを行わないと、積み立てられた年金資産は、国民年金基金連合会に自動的に移換され(『自動移換』)その後は運用されない等デメリットがあります。
国民年金基金連合会の資料(右表)によると令和3年3末までは、自動移換者数が正規移換者数を上回っていました。令和5年3月末時点の自動移換者数は、118万人、その内66万人の口座には資産があるまま放置されている状況です。

◆自動移換されるとデメリットしかありません
①運用されない。(➢運用機会を逸する・運用益非課税メリットが享受できない)
運用していた年金資産は、いったん全て売却され現金化されます。その後に国民年金基金連合会に移換されるので
投資信託などの運用ができません。DCは、運用益が非課税になるメリットがあるのに享受できないだけでなくインフ
レが進むと資産価値が目減りしてしまいます。
②手数料が差し引かれる。
自動移換される際には国民年金基金連合会に事務手数料として1,048円、特定運営管理機関に対して3,300円の手数料が徴収されます。自動移換されてから4ヶ月後の月末までに移換などの手続きをしなければ、その後は月額52円の管理手数料が年金資産から徴収され続けます。(例:11月に自動移換→翌年3月分から徴収される)
自動移換された場合でもその資産を企業型や個人型(イデコ)へ移換することは可能ですが、手数料が発生します。

③受給開始の時期が遅くなる可能性ある。
確定拠出年金の老齢給付金を受け取るには、10年以上の通算加入者等期間が必要です。自動移換中は老齢給付金を受け取るための加入者期間に算入されません。そのため、通算加入者等期間が10年未満であれば、最大65歳まで受給できない可能性があります。
④「退職所得控除」の金額が減る可能性がある。
自動移換中は「退職所得控除」の計算に必要な勤続年数に算入されないため、一時金受取時の税制優遇効果が低下する可能性があります。
◆自動移換を回避する手続き期限の6ケ月以内とは?
自動移換手続きの期限は、前職の加入者資格を喪失した月の翌月から起算して6ヶ月以内(下表参照)です。

『自動移換』されると国民年金基金連合会から「自動移換通知」が送付され、その後年1回「定期通知」が送られてきます。通知には、資産の状況や手数料などが記載されています。

◆企業型DC加入者が退職した場合の移換先
・選択肢としては、下記の図のようになります。退職後の転職先や職種によって移換先や掛金上限額も異なります。

・積み立てた年金資産は、原則60歳まで引き出すことはできません。【E】の脱退一時金を受け取るという選択肢もありますが、法律に定める要件をすべて満たす必要があり、通常では、選択肢として考え難いです。

◆『自動移換』による年金資産の放置回避への取組・救済措置
・『自動移換』が増加している背景には、退職時の忙しさや手続きの煩雑さ以外で、制度の理解不足があると考えられます。厚生労働省では、「企業が掛け金を負担するため、自分の資産という認識に乏しく、自覚なく放置する人が多い。」として、事業主および運営管理機関に対し、退職者に対する移換手続きの説明・勧奨を行うよう指導しています。
国民年金基金連合会でも、自動移換者に対して、年1回送付する通知の中で、2017年1月から個人確定拠出年金(iDeCo)の加入範囲が拡大され、より多くの退職者が加入可能になっている旨等を周知しています。
・自動移換を減少させる取り組みとして、自動移換する前に別の確定拠出年金の口座が開設されていることが判明した場合、 もしくは既に自動移換された方が新たに確定拠出年金口座を開設した場合、自動的にその確定拠出年金口座へ移換されるようになりました。

◆アクションを起こすのは、ご自身です。
・退職後、その資産を期限内に移換する必要があることをお話してきました。企業型DCは、持ち運ぶこと(ポータビリティ)が出来るので、きちんと手続きをすることで、年金資産を継続して積立運用し資産形成をすることができます。
・移換手続きでは、運用している資産をいったん解約して預け替えることになります。それまで運用していた商品を売却して現金化し、移管先の制度の商品ラインアップの中から選択した商品を購入することになります。残念なことに売却のタイミングを指定することができないので、例えば投資信託を選んで運用をしている場合は、市場の状況によっては含み損の商品を売却してキャッシュにするため、損失を確定してしまうことになります。転職を予定している場合は、運用状況の良い状態の時にスイッチングして定期預金などの元本確保型の商品に資産を置いておくようすることで、残高が急激に減ることを防ぐことが出来ます。
・転職先に企業型DCがあれば、移管する箱はありますが、移管先としてiDeCo口座開設される方は、早速、行動開始です。iDeCo口座開設には、1~2ヶ月位かかります。iDeCo口座は1人一つの口座しか開設できません。年金資産運用口座として長いお付き合いになるので、商品のラインナップ・口座管理手数料・サポートサービス・その他の付加価値を比較して自分に合った金融機関を選ぶことが大切です。
・企業型DCに加入していた人は、退職した企業からの郵便物やメールなどは必ず確認してください。
退職した企業が積立ててくれた「大切な自分のお金」です。『自動移換』されて、残念なことにならないように、行動しましょう。
・ご自分が「自動移換」されているかもと思われた方は、下記サイトをご参照いただきくか、自動移換者専用コールセンター 03-5958-3736へ問い合わせしてみてください。
『自動移換』されてからでも移換して資産形成を継続することができます。

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