皆様本年もどうぞ宜しくお願いします。
さて、このごろ喧しい話題がいわゆる年収103万円の壁問題です。
年初こそ少し静かになりましたが、昨年末は次年度税制大綱の決定までいろいろな報道がされていました。
そもそも年収103万円(月額約86千円)を超えないように働いている人(主に世帯主に扶養されている主婦やアルバイトの学生等)は約100万人以下と推測されています。それでも有権者としての勢力では侮れないようです。
今後年度末に向けて政府・自民党・公明党と国民民主党との駆け引きが続くのでしょうが、年末に自民党が決めた税制大綱では123万円と20万円の増加案を中心に議論が進むと思われます。国民民主党の主張する173万円への引き上げは税収減が大きすぎ実現は難しいと推測されます。
いずれにしても今回の年収103万円の壁問題は私たちに良い教訓を示してくれたと思います。いかに過去30年間デフレ等の問題があったとしても、約30年間所得税の基礎控除と給与所得控除が一定のままであったことは政府・政党・国民の怠慢であったと言わざるを得ないと思うのです。この間国民民主党の言うように最低賃金は
1.7 倍になったのですから。欧米諸国では毎年のように基礎控除や給与所得控除の額が検討・変更されているのです。ですから一気に1.7倍ということではなく数年かけて引き揚げてゆくというような妥当な出口に向かうことを期待しております。
読書感想
最近読んだ本で紹介したい本があります。スコット・ギャロウェイ著「THE ALGEBRA OF WEALTH」(邦訳名、一生お金を吸い寄せる富の方程式)ダイヤモンド社刊、2024年12月初版刊行。ALGEBRAとは一般的には代数学と訳されることが多いようですが本書では方程式と訳しているようです。著者のスコット・ギャロウェイ氏はニュウヨーク大学スターン経営大学院教授で過去には「THE FOUR GAGA](4騎士が創り変えた世界)が日本でも15万部のベストセラーとなったことでも知られている。
本書の主な主張は以下の方程式に表されている。
富=フオーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
これを分かりやすく言い換えると
「富=仕事に集中して収入を高める+無駄遣いしない節度ある生活×複利の力を生かした長期的な投資×分散投資でリスクを減らす」となる。
本書では富とは経済的自立という目的を実現する手段と規定し、経済的な不安がないことが富だとしている。
この方程式は考えてみればごくごく当然のことを言っているように見える。FPの方やファイナンスについて関心がある人ならば後半の複利の力を生かした長期的な投資や分散投資でリスクを減らすという語句は腹に落ちやすいのではないか。
その他、長期投資のベンチマーク(指標銘柄)としてはS&P500が良く、その水準は8%だともいう。それは過去20年間のS&P500の平均リターンが8%であるからだと主張する。だが、これはアメリカの話であって日本特に私にとっての目指すべき平均リターンは4~5%程度ではないかと感じる。
また、この様な本ではあまり触れることが少ない利益が出ている場合の対処法も示している。これは一言で言うなら「積極的に利益を確定しよう」となる。利益が出たらその一定部分を換金して、他の資産に分散投資することを勧めている。
よく聞く話が、今この銘柄がいくら儲かっている、いた、というももの。評価益のままではいつなくなってしまうかもしれない。実現益にしてこそ利益確定したことになる。この部分は私のかねてからの思いと合致するものがあると感じました。
以上
CFP 重田 勉