介護離職をしないために ~初動のポイントは介護休業の使い方&一人で抱え込まないこと~

1.はじめに
厚生労働省の雇用動向調査によると、2023年に離職した人は約798.1万人、そのうち個人的理由で離職した人は 約591.6 万人でした。個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約7.3万人で、2000(平成12) 年と比べて約2倍の人数となっています。(図1)男女別で見ると女性が約77%を占めており、年代別では50歳代が最も多くなっています。(図2)
働き盛りの現役世代が離職をすることは、本人やご家族はもちろん、企業、そして社会全体にとって大きな損失をも たらします。こうした介護離職者の増加に伴い、育児や出産をする人に対しての制度改正が行われてきたように、仕 事と介護を両立できる支援策が強化されつつあります。

2.介護離職のリスクと実情
・収入減少と支出増加
退職によって収入が途絶え、自身の生活費と介護に必要な費用が家計を圧迫します。(介護費用は親のお財布から、が基本ですが、介護には継続して出費がかさみます)
退職しなかった場合と比べ、将来受け取る年金が減る可能性があります。
・経済面・肉体面・精神面の負担増加
介護を理由に仕事を辞めても、経済面、肉体面、精神面、いずれも負担が増すという調査があります。介護によるストレスや体力の消耗に、孤独感や不安が加わります。

・再就職の難しさ
特に中高年では、再就職が困難になる傾向もみられます。また、再就職をした場合でも、再就職前と比べ収入ダウンとなるケースも多いようです。

3.介護休業制度の基礎知識
介護休業制度は、1995年6月に運用が開始されました。その後、1999年に改正された「育児・介護休業法」に基 づき仕事と介護の両立支援制度となりました。雇用されている従業員や家族の介護で休業できる権利や給付金、雇 用維持について定めているものです。2000年から始まった公的介護サービス給付制度の「介護保険制度」が介護される人への支援であるのに対し、介護をする家族などに対する制度となっています。
「育児・介護休業法は」今年4月にも改正が行われ、仕事と介護の両立支援制度がさらに強化されました。介護を 理由に仕事を休めることが法律で定められているものの周知されていない現実を踏まえ、介護に直面する前の早い 段階(40歳等)での情報提供、支援を必要としている方への個別周知や利用の意向確認など、事業主に対し、雇用 環境整備措置が義務化されました。なお、介護者に対する不当な降格や解雇・配置転換などの不利益な取り扱い が禁止されている事も知っておきたい点です。

4.介護で離職しないために
介護に直面したときに大切なのは、「早く相談する」ことと「一人で抱え込まない」ことです。
①職場への相談・・・会社や上司に「家族等の介護を行っている」ことを伝え、必要に応じて勤務先の制度の利用申 請をする。会社によっては、法律以上に介護のための制度を充実させているところもあります。例:介護の補助 金、遠距離介護の交通費など
②公的機関への相談・・・介護される方の住所地にある「地域包括支援センター」に相談、情報収集をする。介護の専門家(保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーなど)が介護保険についての質問や、各自治体でのサービス の紹介・申請支援、どこに相談したらよいかわからない事柄なども細やかに対応してくれます。公的制度・支援サー ビスを活用し最初から自分で「介護をしすぎない」体制を目指しましょう。

③家族やご近所との良好な関係・・・兄弟姉妹や配偶者、子どもと情報を共有し、状況に応じて協力しあえるよう日 頃から積極的なコミュニケーションをとる。認知症の要介護者には徘徊等お世話になることもあるため、近所の 方とも日ごろからお互い様の精神で良好な関係を築きましょう。
④自分の時間を確保する・・・当事者になるとなかなか難しいことですが、介護を深刻に捉えすぎず、介護者が自分 自身の生活や健康を第一に考えることも重要です。

5.おわりに
2024 年度の生命保険文化センターの調査では、介護にかかる費用は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など、一時的な費用の合計が平均47.2 万円、月々の費用が平均9.0 万円となっています。また、介護を行った場所別では、在宅が月平均5.3 万円、施設が月平均13.8 万円。介護を行った期間は平均55.0 ヶ月(4 年7 か月)、10 年を超えて介護した人は約16.1%となっています。いつ始まりいつまで続くか事前にわからない介護は、生活に大きな負担となります。しかし永遠に続くわけではなく、介護が終わった後もご自身の生活は続きます。親御さんの希望や懐事情の確認など今からできることは行動に移し、いざという時には一人で抱え込まず、ご自身の生活を守るためにもまずは周りに相談してみましょう。

2025年9月 CFP 依田いずみ

=参考資料=
・仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~ |厚生労働省
育児・介護休業法改正ポイントのご案内(R7.4/1から段階的に施行) 001259367.pdf
介護休業給付について ハローワークインターネットサービス – 雇用継続給付
介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター
介護休業について|介護休業制度特設サイト|厚生労働省
厚生労働省資料-3社内研修:仕事と介護の両立セミナーテキスト 001475082.pptx


やっぱり「介護は突然やってきた」

介護は突然やってくると言いますが、家族にそのような状態が来ると急に身近な事柄となります。なんとなくアタマの中ではわかっていても、実際に体験するとなるほどこういうことかと実感します。

知人のケアマネージャーからもアドバイスを受けたことも含め、いくつか注意すべきことを挙げてみます。

  • 関係者が多くてびっくりしますが、中心は自分たちだと自覚しましょう
  • 家族の思いを大切にし、どのような生活が望ましいかを関係者に伝えましょう
  • 慌てずに必要なことから少しずつ始めましょう

 

■関係者が多くてびっくりしますが、中心は自分たちだと自覚しましょう

介護状態は病院でスタートすることが多いと思います。それは、骨折などのケガによって入院し、特に高齢者になるほどリハビリによってもこれまでどおりの生活が送れるほどには回復できないからです。

介護を受ける場合、ケアマネージャーが付いてケアプランというものを立ててくれます。要介護者のリハビリや、自宅で生活するためのバリアフリー化などの相談に乗ってくれます。

ベッドや車イスは購入するのでなく、レンタルすることができます。玄関から自宅に車イスで出たり入ったりするためのスロープもレンタルできます。簡易トイレは購入することになりますが、このような一連の介護用品を扱う業者が必要で、特に希望がなければ病院から紹介を受けることができます。

そして、退院後もリハビリする場合は自宅での訪問リハビリを行い、デイケアサービスを受ける場合はそのような施設の選択も必要です。

病院ではそのような関係者がすでにそろっており、一気に話が進んでいきます。退院直前の会議では関係者が多くて圧倒されます。実際、私の母は

「あんなに人がいたら(家族の他に7人)、言いたいことも言えない」

とこぼしていました。
でも、決して圧倒されてはいけません。自分たちの生活のために集まってくれた人たちなのです。彼らは、できれば自分たちのサービスを利用してくれることを期待していると思いますが、それを使うことが前提ではありません。サービスを受けるのも、お金を払うのも自分たちなのです。一人で会議に出ることが心配であれば誰かに付き添ってもらうなど、良い話し合いができるようにしましょう。

 

■家族の思いを大切にし、どのような生活が望ましいかを関係者に伝えましょう

上のこと関わりますが、大切なのは自分たちの生活です。介護によってこれまでのように生活できないことは受け入れるとしても、その先どのような生活を送りたいか、という本人と家族の意思が大切です。人と交流し楽しい生活を送りたい人もいれば、不便ではあっても自宅で生活したい人など、考え方は人それぞれでしょう。
大事なことは、どのような生活を送りたいかを本人と家族で話し合って、それを実現してもらうためにケアマネージャを中心とする関係者に正しく伝えることです。
正しく伝えることができればきちんと対応してくれます。

 

■慌てずに必要なことから少しずつ始めましょう

介護が必要になると、車イスを押しやすいように床のバリアフリー化をしましょうとか、車イスでの生活のためにテーブルの生活に変えましょう、と言ったアドバイスされることがあります。でも、決して一気にやってしまわなくていいと思います。
確かに、要介護者が自宅にいてバリアフリーの工事をするのはたいへんなことは間違いないと思いますが、頭のなかで考えることと実際は違うことが多いです。それでなくても生活に変化が出ますから、まずは要介護者にとって必要と思われることだけ対応してスタートしてみても良いのではないかと思います。意外とやれてしまうこともあるでしょうし、足りないものをあとからやっても大丈夫なのです。

(源田 公平)