先日新聞記事の生活欄に、銀行で住宅ローンを組む際に契約する団体信用生命保険(以下団信)に、死亡した場合だけでなく重大疾病に罹った際も補償される疾病保障付タイプが増加しているという記事が出ていました。
そもそも団信とは、ローン返済中に亡くなられたり両目失明等といった高度障害状態になられたりした場合に、加入者に代わってローンの残債を全額弁済してくれる保障制度です。保険料は、金利に上乗せされローンと一緒に支払うタイプや、任意加入でローンとは別に保険料を負担するタイプがあります。
疾病保障付団信には、①がん②三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)③七~九大疾病(②に加え、高血圧症・糖尿病・慢性膵炎・肝硬変・慢性腎不全・ウイルス肝炎)等が一般的なタイプとしてあります。
こういった疾病保障付団信が増加した理由としては、少子高齢化を要因とした社会保障制度や経済の先行き不安といった問題から、従来の死亡・高度障害リスクだけでなく、重大疾病に罹ることで健康な時と同じような収入が得られなくなったり、また高額な治療費が必要になることも考えられ、長期に渡る高額な借入れを不安に思う借主が増えているというが原因だと思われます。
となれば、住宅ローンの借入れの有無に関係なく、重大疾病保障のニーズは高まっており、医療保険会社各社も重大疾病を重視した医療保険の販売に力を入れているみたいです。多くは三大疾病に罹患したら、①一時金を受け取れる。
②以降の保険料お支払を免除といった場合が多く、これに入院給付金を上乗せしたり、給付日数を延長・無制限にしたり、高血圧・糖尿病・肝疾患・腎疾患を加えた七大疾病の場合に一定保障するものもあります。
但しここで注意しなければいけないのは、冒頭の疾病保障付団信にしても医療保険にしても、どれも全て同じように思えるかもしれませんが、保障(保険)会社によって保障内容が違っていたりすることです。例えば、三大疾病と言ってもガンは判り易いですが、他の2つはどうでしょう。保険会社によって、心疾患・脳血管疾患としているところもあれば、急性心筋梗塞・脳卒中と限定しているところもございます。皆さんはこの違いお分かりになりますか?
高血圧性のものは除き、対象となる心疾患には狭心症や不整脈等も含まれます。全国では心疾患全体の患者数172万人(※)に対して、急性心筋梗塞の患者はわずか3.3万人(※)だそうです。脳血管疾患は、全国の患者数117万人(※)のうち脳卒中(くも膜下出血・脳内出血・脳梗塞)に該当する患者数が104万人(※)と大半を占めておりますが、脳卒中以外にも今年2月に芸能ニュース等で男性歌手が再発したと話題になりました「もやもや病」や、2年前に元おニャン子クラブのタレントが告白した「脳動脈瘤」も含まれます。
また保障対象事由もガン以外は、所定の手術を受けるか継続20日以上の入院をされたら対象となる会社もあれば、初めて医師の診療を受けた日から60日以上所定の状態が継続したと医師の診断がされなければ対象とならない会社もあります。
ある保険会社の2011年1月~2015年12月までの手術給付金支払い実績では、脳血管疾患では脳卒中45.7%に対しそれ以外の脳血管疾患の割合は54.3%、心疾患においては急性心筋梗塞16.7%に対しそれ以外の心疾患の割合は83.3%となっていたそうです。
重大疾病のリスクは、働き盛りの40歳代から増加する傾向があり、治療中の収入減や治療費の負担を軽減する為に保険に加入したのに、狭心症(58.4万人※)や不整脈(52.3万人※)で対象にならなかったなんて事にならないよう、加入にあたっては十分保障条件を確認する必要があると思います。
自分だけでは難しそうと思われる方は、どうぞファイナンシャル・プランナー他専門家へご相談を!
※厚生労働省「平成26年患者調査」総患者数より算出。千人未満切捨
FP 小野 宏治