「おひとりさま」のライフプラン

ライフプランセミナーや年金セミナーでは「夫婦と子供2人」の標準世帯 を基に、収入や支出の状況、将来の計画を反映した金融資産残高の推移をシミュレーションし家計収支の改善策を検討してゆきますが、終了後の参加者からのアンケートでは「おひとりさま」を基にしたシミュレーションを望む声が特に女性の参加者から多く寄せられます。そこで今回、女性の「おひとりさま」のライフプランについて考えてみます。

図1は一般世帯総数に占める夫婦と子供の世帯と単身世帯の比率の推移です。1980年では4割強を占めていた夫婦と子供の世帯の比率は2005年過ぎに単身世帯と逆転し2020年には2割台半ばにまで低下する一方単身世帯の比率が3割台半ばまで増加しています。この傾向は今後も継続すると予測されています。

単身世帯は高齢化が進む中で配偶者の死亡や離婚で単身になる人の他、結婚を望まず「おひとりさま」の人生を選択する人も増加しています。図2は50歳までに一度も結婚しない人の割合を示す「50歳未婚率」の推移です。 1980年では男性2.6%、女性4.5%だった50歳未婚率は、2020年には 各々28.3%、17.8%にまで増加しています。男性の3人強にひとり、女性は5人強にひとりが「おひとりさま」の人生を歩んでいます。この傾向は今後も継続すると予測されています。

「おひとりさま」のライフプランでは、住み方(住宅を購入するか賃貸にするか)、病気になった場合の収入減少のリスク、セカンドライフでの収入・病気・介護への備えさらに人生の幕を閉じるときのことを含め、同居する家族がいないことによる特有の準備が必要になります。

現在50歳の会社員の独身女性を例に、老後に必要となる資金額及び資金確保に必要な方策について考えてみます。

1.おひとりさまの収入、支出、金融資産残高

1.1 収入

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると女性勤労者の平均年収は3百万円台ですが、この平均年収で40年間厚生年金に加入した場合、国民年金と厚生年金を合わせた65歳からの受給額は年額で150万円程度となります。

1.2  支出

 総務省の「2022年家計調査報告 家計収支編」によると、女性単身勤労者の消費支出は年額で237万円(35歳~59歳の平均値)、これが65歳以上の単身無職世帯になると 男女平均で年額172万円となります。

1.3 金融資産残高

総務省の「2019年全国家計構造調査  所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果」によると、50歳代の女性単身者の金融資産残高(金融資産額から金融負債額を引いた額)は850万円となります。

2.「おひとりさま」の50歳から90歳迄の金融資産残高の推移

図3は前記の資料を基に勤務期間・年金受給開始年齢及び金融資産運用の有無別に6種のケースについて作成した現在50歳の女性のおひとりさまの90歳まで(65歳時点の女性の平均余命から算出した平均寿命)の金融資産残高の推移です。

金融資産の運用をする際の期待収益率(年率)は59歳までは3%、60歳以降はより安定的な運用を目指し1%としています。

      勤務期間 年金受給開始 資産運用                       

ケース1  59歳迄     65歳          なし      

ケース2   59歳迄    65歳       あり        

ケース3   64歳迄    65歳       な し        

ケース4   64歳迄    65歳       あり          

ケース5   69歳迄    70歳       なし                

ケース6  69歳迄     70歳      あり     

1)90歳時点の金融資産残高

・ケース―1及び2

会社を59歳で退職し公的年金を65歳から受給し資産運用をしない場合、金融資産残高は88歳でマイナスになってしまいますが、資産運用をすと90歳の時点で7百万円に回復します。

・ケース―3及び4

厚生年金に加入しながら64歳まで勤務を継続し公的年金を65歳から受給する場合、90歳時点での金融資産残高は資産運用をしない場合は16百万円、資産運用をする場合は28百万円に増加します。

・ケース―5及び6

就業率は男女ともに年々増加し女性の65歳~69歳の就業率は2022年は41.3%に達しています。厚生年金に加入しながら69歳まで勤務し公的年金を70歳から受給する場合、公的年金の受給額は65歳時の受給額の42%増の金額に65歳から69歳迄の勤務による厚生年金の増額分と合わせ年額233万円となり、 90歳時点での金融資産残高は資産運用をしない場合は32百万円及び資産運用をする場合は46百万円に増加します。

2)長く働くことによる収支改善効果

ケース1(59歳迄勤務し65歳から年金を受給)を基本とし、ケース3(64歳迄勤務し65歳から年金を受給)およびケース5(69歳迄勤務し70歳から年金を受給)の場合の90歳時点での収支改善額を比較すると、各々、17百万円、33百万円という大きな効果が得られることになります。健康が許す範囲でできるだけ長く働くことが収支改善に効果的であることがわかります。

3)資産運用による収支改善効果

資産運用による90歳時点の収支改善額を勤務期間別に比較すると、59歳迄勤務するケース1及びケース2、64歳迄勤務するケース3及びケース4、69歳迄勤務するケース5及びケース6で、各々8百万円、12百万円、14百万円ととなり、長く働くことと共に資産運用による収支改善効果は大きいことがわかります。

3.老後資金の必要額

1)介護費用

年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合は、厚生労働省の「介護給付等実態統計調査月報」(2023年1月審査分)及び総務省の「人口推計月報」(2023年1月確定値)を基に生命保険文化センターが取りまとめた結果によると、75歳~79歳、80歳~84歳、85歳以上の各年齢層で、 各々、12.1%、25.8%、59.8%となっています。85歳以上では2人に1人以上が要支援・要介護の認定者となります。

「おひとりさま」の場合、自身の介護が必要になった際同居する家族がいないため外部の介護サービスを利用することになります。

生命保険文化センターの「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護が必要になった場合の住宅の改造や介護等の一時費用は平均で74万円、介護に必要な月々の費用は公的介護保険サービスの自己負担分を含み平均で月額8.3万円、介護を始めてからの介護期間は平均で61.1か月となっています。 これらの数値から計算した介護費用総額は581万円となります。

要介護度が進み、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付き有料老人ホーム等介護付き高齢者施設に入居する必要が出てくる場合、その費用も準備しなければなりません。

2)賃貸の場合の住居費

図3の金融資産残高の推移は、消費支出額については「2022年家計調査報告 家計収支編」の数値を使用していますが、年齢層が高くなるにつれ持ち家の比率が高くなっており、特に65歳以上の単身世帯での持ち家の比率が約9割であることを反映し住居費は月額1万円程度とかなり低い額となっています。住居費は賃貸の場合は、特に大都市圏では住居費は大幅に増加します。

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、家賃は全国平均で月額約5.6万円、筆者の住む神奈川県平均では6.8万円です。

50歳から90歳までの賃貸の場合の住居費は全国平均の家賃額を使用すると総額で2,740万円となり、「2022年家計調査報告 家計収支編」で使用されている住居費の総額825万円と比較し、約19百万円増加することとなります。

3)老後資金の必要額

90歳時点での金融資産残高は、介護が必要になる場合介護費用分としては約6百万円、住居が賃貸の場合はさらに約19百万円が追加で必要になります。 

従って、介護費用分のみを考慮すると図3のケース2(59歳迄勤務、65歳から年金受給開始、資産運用あり、金融資産残高7百万円)程度の金融資産残高が、これに住居が賃貸の場合に必要な金額を加えると、ケース4(64歳迄勤務、65歳から年金受給開始、資産運用あり、金融資産残高28百万円)程度の金融資産残高が必要になります。

必要な老後資金を確保するためには、「おひとりさま」世帯及びそれ以外の世帯の場合でもできるだけ長く働き、繰下げにより増額された公的年金を受給するまでの期間は私的年金等で乗り切り人生100年時代に備えるWPP(Work Longer  Private Pensions  Public Pensions)の考え方が必要になります。

加えて資産運用も老後資金の確保に重要です。2024年1月からの新NISA制度の開始に加え、金融経済教育を推進する「金融経済教育推進機構」の2024年の設立が決定されました。これにともないFP等中立的な立場から個人の資産形成を支援するための「認定アドバイザー」制度の準備が行われており、FPへの期待は高まっています。

「おひとりさま」の比率が今後も高まっていく中で、「おひとりさま」特有のリスクを踏まえたライフプラニングが必要となりますが、個々に異なる経済状況や目標を基にキャッシュフロー表を作成し、収支改善策を含め具体的な解決策を提案して行くことがFPに求められています。

CFP 岩船康則

いよいよ始まった新NISA 一番大事なのは続ける事

 いよいよ新NISAが始まりました。
日本の株式市況も直近では活況で34年ぶりの高値を抜いたなどと報じられています。
このような高値を更新したようなニュースを連日、耳にすると今まで投資は避けていたけど、新NISAも始まって、まわりでやっている人も多くなってきたので自分もやってみようとか思う人が増えてきます。でもそのような周りの雰囲気で始めると、今後暴落が起こったりすると止めてしまう人が続出します。
 株式というのは一本調子に値上がりするものではなく、上がったり下がったりしながら長期でみると上がっていくということなのです。
 よく、年利5%で成長すると20年後には何万円になって、こんなに儲かるんだよって見せられるグラフはたいてい右肩あがりの綺麗なグラフ。

金融庁のホームページでの積立シミュレーショングラフ毎月5万を20年間

でも実際の投資では、こんなにきれいなカーブを描きません。

 日経平均株価もリーマンショックの時は約5割程度下落、コロナショックの時は約3割下落しました。

 実は、つみたて投資 9割の人が4年でやめるというデータもあるようです。

ダイアモンドオンラインの記事より抜粋

 株で一番儲けている人は、実は「亡くなった人」と「買ったことを忘れている人」という話もあります。

 ウォーレンバフェットの有名な言葉に 「あなたの投資方法はシンプルなのにどうして他の人は同じように儲けられないのですか?」との問いに「ゆっくり金持ちになりたい人はいない」というものがあります。

金融庁のつみたてNISA早わかりガイドブックより抜粋

 新NISA投資にネット界隈で最適といわれている全世界株に投資するオルカン(三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー」には1月9日のたった一日で昨年12月の資金流入分を上回る1013億円もの資金が流入したと報じられました。(QUICK資産運用研究所調べ)

きっと新NISAでの投資なのかと推定されます。

 これらに投資した人が、今後起こることがある○○ショックなどに耐えて、ずっと持ち続けて利益が得られるようになることを祈りたいと思います。

CFP 磯野正美

働き方の違いで、公的保険も変わる!フリーランスVSサラリーマン

◆「年金」と聞くと老齢年金のことを思われる方が多いと思いますが、年金は公的保険のひとつで、3つの保険の役割があります。①老齢年金保険の他に②障害年金保険③遺族年金保険です。
日本の年金制度は、1階を国民年金、2階を厚生年金、3階を私的年金とする3階建てになっており、国民年金は、対象年齢の国民全員が加入する年金、厚生年金は会社員などが加入する年金です。私的年金には、確定給付企業年金や企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)が該当します。
働き方の違いで、1階部分だけの保険給付が受けられる場合と1階部分と2階部分の両方の手厚い保険給付が受給できる場合と異なります。

◆働き方の違いで異なる遺族年金保険給付について例を挙げて説明致します。


【事例1】
・ご主人が第1号被保険者であった場合、子どもが18歳到達年度まで、遺族基礎年金と子の加算額合計で年額1,023,700円が支給されます。子どもが18歳到達年度末以降、給付額はゼロです。
・配偶者は、60歳~65歳まで寡婦年金402,468円が支給されます。65歳以降、自分基礎年金の年額795,000円が支給されます。
(※寡婦年金:第1保険者の加入期間が25年以上ある第1被保険者の夫が死亡し、死亡時に老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していない場合、妻(婚姻期間が10年以上)に対して支給される遺族年金。支給額は、夫の老齢基礎年金の4分の3)

 【事例2】
・ご主人が第2号被保険者であった場合、子どもが18歳到達年度まで、遺族基礎年金と子の加算額に加えて遺族厚生年金546,000円が加算され合計で年額1,569,700円が支給されます。
・子どもが18歳到達年度末以降、配偶者は、65歳まで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算596,300円が加算され合計で年額1,142,300円が支給されます。65歳以降、自分の基礎年金と遺族厚生年金の合計年額1,341,000円が支給されます。
(※中高齢寡婦加算:厚生年金に20年以上加入していた被保険者である夫を亡くした妻が、40歳以上65歳未満、子がいない、または末子の年齢が18歳到達年度末日を経過している場合に、遺族厚生年金に加算されるもの。受給できる金額は、遺族基礎年金の満額の4分の3相当。)

【事例1】【事例2】から、第2号被保険者の配偶者の受給額が手厚いことが分かります。

・次の【事例3】【事例4】は、転職して働き方が変わった場合です。

【事例3】
・ご主人が、第1号被保険者であった場合、子どもが18歳到達年度まで、遺族基礎年金と子の加算額合計で年額1,023,700円が支給されます。子どもが18歳到達年度末以降、給付額はゼロです。
・配偶者は、65歳以降、自分の基礎年金の年額795,000円が支給されます。


【事例4】
・ご主人が、第2号被保険者であった場合、子どもが18歳到達年度まで、遺族基礎年金と子の加算額に加えて遺族厚生年金505,600円が加算され合計で年額1,529,300円が支給されます。
・子どもが18歳到達年度末以降、配偶者は、65歳まで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算596,300円が加算され合計で年額1,101,900円が支給されます。65歳以降、自分の基礎年金と遺族厚生年金の合計年額1,300,600円が支給されます。
➢亡くなった時に第1号被保険者の場合、以前、第2号被保険者であったとしても保険料納付済、保険料免除期間および合算対象期間を合わせて25年以上でないと遺族厚生年金を受給できません。事例3では、保険料未納期間の2年が残念な結果となりました。
➢亡くなった時に第2号被保険者の場合、遺族厚生年金の短期要件に該当し、受給額が手厚いことが分かります。

◆国の社会保険制度には、年金保険以外にも医療保険、雇用保険、労災保険、介護保険があり、働き方によって加入する保険が異なり、給付内容・保険料の計算方法・仕組み等に相違点があります。
転職して働き方が変わった場合、確認してみてください。

2023年12月 CFP 石黒貴子

【詳細は、下記をご参照ください】
・遺族年金ガイド令和5年版 
・日本年金機構HP 遺族厚生年金  遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)


インボイス制度って何?

業種にかかわらずすべての事業者に影響があるインボイス制度が2023年10月1日からスタートしました。特にフリーランスや個人事業者など消費税の免税事業者にとっては大きな選択を迫られることになります。どんな制度なのでしょう。

インボイス制度とは?

「事業者が納める消費税額の計算に関する新たなルール」です。消費税の納税額の計算は「売上時に預かった消費税―仕入や経費で支払った消費税」(原則課税)が原則(※注1)ですが、今後はインボイス発行事業者(=適格請求書発行事業者)が発行した請求書や領収書でないと仕入や経費で支払った分の消費税を差し引くこと(=仕入税額控除)が認められなくなりました。(※注1原則課税の他に、事業種ごとのみなし仕入率で算定して納税する「簡易課税」の計算方法もあります。)

インボイス(=適格請求書)とは?
インボイスとは英語では送り状や請求書などの書類を意味する言葉ですが、この制度の中の「インボイス」とは法令上「適格請求書」と規定されていて、売り手が買い手に対して“正確な適用税率や消費税額”などを伝えるものです。制度開始前の請求書・レシートなど(=区分記載請求書)の書類やデータに 

A発行した事業所の登録番号

B消費税率(8% or 10%)

C税率ごとの消費税額 

が追加で記載されたものです。
A の登録番号をもらうには、国税庁に「インボイス制度への登録申請」をして「適格請求書発行事業者」(インボイス発行事業者)になる必要があります。

消費税の仕入税額控除って何?

消費税の納税方法は、事業者の毎期の課税期間中、売り上げの際に取引先や消費者から受け取った消費税額(売上税額)から、その仕入れの際に支払った消費税額(仕入税額)を差し引いた差額を算出して納めます。
例えば、(分かり易くするため簡略化しますが)仕入先から220万円(10%税込み)で花を仕入れて、店舗で330万円(10%税込み)で販売した場合、店舗の事業者は、消費者から受け取った消費税額30万円から、仕入先に既に支払った消費税額20万円を差し引いた額の10万円を納税します。このように仕入れの際に支払った消費税額を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。「仕入税額控除」は、生産や流通などの各段階で多重に消費税が課されることのないようにするための仕組みです。

これまで、課税売上高が1,000万円以下や、新規開業者の原則1年目など、一定の条件を満たす事業者は「免税事業者」として、消費税の納税が免除されてきましたので、売上時に預かった消費税分はいわゆる「益税」となっていました。今後、買い手側(図の課税事業者・花屋さん)にとって、仕入税額控除が認められないと、消費税支払いの負担が大きくなるため、取引のある免税事業者(図の仕入先)にもインボイスの発行を求めることが想定されます。免税事業者は、求めに応じてインボイス発行事業者(課税事業者)となるか否か、選択しなければなりません。

インボイス制度の登録
免税事業者のインボイス制度登録は任意です。制度開始後の今からでも2029年9月30日までは登録申請可能です。
①インボイス制度に登録した(課税事業者になった)場合の影響
・インボイス発行事業者の登録には有効期限はないため、更新の手続きは不要。インボイス発行事業者取消し手続きをしない限り登録は持続される
・取引先との取引が継続できる可能性が高い
・新たな顧客や企業との取引を進めやすい
・課税事業者となり、納税額の大幅な負担増となる
・日常の経理・確定申告等事務処理の負担増となる(※2)(※注2:みなし仕入率を使って計算をする「簡易課税」を申請すると「原則課税」と比べ事務処理が軽減する場合があります)
②インボイス制度に未登録(免税事業者のまま)の場合の影響
・消費税の納税義務なし
・消費税納税やインボイス管理等の事務作業は不要
・従来の取引先から値引き交渉される可能性がある(一方的な通告などは独占禁止法・下請法上の問題となる場合があります)
・新規取引先(課税事業者)獲得が難しくなる可能性がある
・業種によっては免税事業者であることがブランド力に影響する可能性も?

一般的に、免税事業者のインボイス制度登録判定の目安は、売上先に原則課税方式で納税をしている課税事業者がいるかどうかがポイントといわれています。
様々な経過措置・支援措置
インボイス制度は大きな改正なので、最長6年間の激変緩和措置が設けられています。
【1】2割特例「小規模事業者にかかる税額控除に関する負担軽減措置」
[対象者]:令和5年10月1日以降にインボイス登録事業者となった免税事業者
[実施期間]:令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日の属する各課税期間
[効力]:仕入税額の実額計算不要、売上税額の2割を一律納付、事前の届出が不要
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者のみ利用できる時限的な負担軽減措置です。売上税額の2割分を納税するという制度で、図の〈簡易課税のみなし仕入率〉を80%(=80%控除できる)として納税額を求めた場合と等しくなります。第3~6種事業の場合、多くはこの特例を利用することで負担軽減となります。

【2】少額特例「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」
[対象者]:基準期間における課税売上高が1億円以下、
または特定期間(個人事業主の場合、前年1月1日~6月30日)における課税売上高が5千万円以下の事業者
[実施期間]:令和5年10月1日~令和11年9月30日
[効力]:1回の取引で税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存が不要。
要件を満たす事業者であれば、税込み1万円未満の仕入れや経費の取引について、インボイスの保存が必要なく、帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるものです。
【3】80%(50%)控除「免税事業者からの仕入れに係る経過措置」
[対象者]:すべての課税事業者
[実施期間]:令和5年10月1日~令和8年9月30日、令和8年10月1日~令和11年9月30日
[効力]:原則課税において、インボイスでない請求書等でも一定額を仕入税額とみなして控除可能。令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から50%。
すべての事業者に適用可能な6年間の経過措置です。特別控除としてインボイスでなくても、一定割合の仕入額控除を受けられます 。

(その他の軽減措置・支援措置についてはこちらから👉インボイス軽減措置 インボイス制度、支援措置があるって本当!? : 財務省 (mof.go.jp)

インボイス登録事業者になった後、免税事業者に戻る選択肢もあります(2年縛りに注意)
登録は希望の日に合わせて(登録日は登録申請書の提出日から15日を経過する日以後の日に設定する)手続きができますが、登録取り消しの手続きは、課税期間ごととなります(取り消したい課税期間の初日から起算して15日前までに届出書を提出)。また、登録事業者になった期間で条件が変わります。ここで注意したいのが「課税事業者=インボイス登録事業者でない」事です 。

【1】令和5年10月1日~12月31日の間に登録事業者となった個人事業主の場合
令和5年12月17日までに登録取消の届出を提出すると令和6年1月1日から免税事業者となります。
【2】令和6年1月1日~令和11年9月30日までの間に登録事業者となった個人事業主の場合
令和7年12月17日までに登録取消しの届出を提出すると令和8年1月1日から「インボイス発行事業者」でなくなりますが、納税義務は消えません。「課税事業者」でなくなるのは登録日から2年経過日の属する課税期間の翌課税期間からとなります。(2年縛りと言われます)
【3】令和11年10月1日以降に登録事業者となった個人事業主の場合(上の図には記載されていません)
インボイス登録には「課税事業者選択届書」が必要です。登録日から2年経過日の属する課税期間の末日までは課税事業者となります。例えば令和12年1月1日に登録した場合、令和14年から免税事業者となる事ができます。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」と「課税事業者選択不適用届出書」の双方を提出しないと免税業者に戻れません。

最後に、「インボイス制度に関する相談窓口一覧」のURLを載せます。気になる方はアクセスなさってください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0023002-076.pdf

=おわりに=
この10月から免税事業者が課税事業者に転換することで、益税が減少し、国の消費税収入の増加となります。2019年10月の政府による試算ではインボイス制度導入による消費税収増加額は年間2,480億円とされています。実質的な増税ともいえる制度です。最長6年間の激変緩和措置が設けられていますので、各事業者の方は、よく考えて選択しましょう。
ご存じのように消費税の使い道は、「年金」「医療費」「介護」「少子化対策」です。一般消費者の生活にもかかわりが深い事項ですから今後も注目していきたいですね。

2023年11月      CFP 依田いずみ

=参考資料=
・政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
・国税庁「適格請求書等の保存方式の概要」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf?_fsi=ItftNPlN&_fsi=mqHEACL6&_fsi=zWCVPfA0#page=7
・No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
・財務省資料:インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0023007-071.pdf
・参考図書:①60分でわかる!インボイス&消費税超入門 
②「プロが教える!インボイス完全マニュアル」株式会社コスミック出版

『年収の壁』について考える

最近、新聞等で「年収の壁」と言う言葉を良く耳にするようになった。
言葉は聞いたことがあるが、内容が今一つ分からないという方も 多いのではないだろか。
ここでは、年収の壁の意味するところや課題について考察した。
年収の壁とは、年収の額によって所得税が掛かったり、社会保険料が 課せられる金額を言う。一般的には、主に夫の扶養にいる主婦が パートタイムで働く場合に稼ぐ年収の金額で手取りが減る『壁』が あるので、手取りが減らないように働く時間(日数)を制限する、
いわゆる『就労調整』を行うことを意味することが多い。
年収の壁は、収入が103万円・106万円・130万円・150万円の4つあると 言われる。このうち103万円と150万円は、所得減少の主な要因は税金で

106万円と130万円は
社会保険料だ。 
会社員の夫を持つ主婦がパート
で働く場合について、左の表に
年収の壁と、その事由をまとめた。 それぞれ、詳しく見てゆこう。

1.年収の壁
(1)103万円の壁
所得税控除のうち、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の 合計103万円を超えると、所得税が掛かってくる。
所得に税率を掛けたものが、所得税となるので手取りへの影響は、 さほど大きいものではない。
ちなみに、年収が100万円を超えると住民税がかかることになる。
(2)106万円の壁
従来130万円の壁が議論されてきたが、2022年10月に 社会保険の適用が拡大され、106万円の壁がクローズアップ されてきた。一定の条件、すなわち
a. 賃金の月額(正しくは標準報酬月額)が8万8000円
(年収だと106万円弱)以上
b. 1週間の所定労働時間が20時間以上
c. 雇用期間が継続して2ヵ月を超えて見込まれること
d. 被保険者の総数が企業規模で常時100人を超える特定適用事業所 に勤務(または任意特定適用事業所に勤務)
e. 学生でないこと
上記全てに当てはまると、社会保険に加入することになる。
(それまで夫の扶養に入り、第3号被保険者だったのが、第2号被保険者となる。)
社会保険には、厚生年金保険、健康保険、介護保険、失業保険があるが、手取り収入に影響が大きいのは、厚生年金と健康保険であろう。
それまでの夫の扶養から外れて、会社の制度に加入すると、 自分で厚生年金保険料と健康保険料を支払わなければならない。 (両者とも会社と折半の支払い)
一方、手取り収入は減るが悪いことばかりではない。
厚生年金に加入すれば、将来厚生年金が終身に渡ってもらえるし、 健康保険に入ると傷病手当金や出産手当金が出るなどメリットもある。
(3)130万円の壁
ほかの3つの『壁』の金額は知らなくとも、年収130万円という数値を 意識してパートで働く主婦は多い。その理由は明らかで、年収130万円 を境として、夫の社会保険扶養対象から条件を課せられることなく 外れるので、社会保険料を全て、自らの収入から支払うため、 手取り減少に対する影響が大きい。
勤務先の社会保険に入らないと、厚生年金が将来もらえないばかりか、 国民年金保険料を自ら払わねばならない。
このような理由から、年収の壁イコール年収130万円と認識されていた。
ただ、社会保険適用拡大に伴って、昨今では106万円の壁が強く意識 されるようになっている。ちょうど、このブログを執筆中に、岸田首相が経済対策として年収の壁で所得が減らないように、1人当たり最大50万円を会社に支給する「支援強化パッケージ」を発表した。
(4)150万円の壁
妻のパート所得が48万円を超えると、夫の受けられる配偶者控除が 配偶者特別控除と変わる。(年間収入では、103万円+48万円= 151万円)
妻の所得が増加するにつれて、配偶者特別控除は減少し、所帯の収入が 減少することとなる。


2.年収の壁の課題
年収の壁の意味は、お分かりいただいたと思うが、ここでは、 年収の壁の中で、時の首相が補助金まで出すと言っている106万円と 130万円の壁に注目しよう。
両者とも社会保険料の負担が増えると説明した。
厚生労働省の資料から引用した図にも、年収106万円、130万円で 手取り額が落ち込むようなイメージ図が示されている。
(このイメージ図は、新聞等の様々な資料に登場している。)

厚生労働省:『「年収の壁」への当面の対応策』より引用

年収の壁の本当の課題は、「労働人口不足」である。
少子高齢化が進んだ日本で、出生率の増加に向けての施策は 打っているものの、その効果が現れるのには年数がかかる。
その間を補うものとして、高年齢者の就労期間延長と女性の労働力 に頼らざるを得ないのが、今の日本の実態だ。
昨今、最低賃金が増える傾向があるが、賃金が増加すると年収の壁 を避けるためには、さらなる就労調整をおこなうという、
イタチごっこを招き、労働人口の不足に拍車がかかる構図だ。

3.政府の真のもくろみは?
前述のように、年収の壁を回避し、手取り額が減らないように 就労調整をすることで労働人口不足に拍車が掛かるのが問題 と言ったが、本質はどこにあるのだろうか?  
労働して収入を得れば、所得に応じて税金を払い、社会保険に 加入するということが、夫の扶養に入ることで「第3号被保険者」 では社会保険料を自分で払わなくとも済むことが、問題視されて来た。
自営業者の妻は第1号被保険者で自ら社会保険料を納める義務があり、 この点の不公平さは、議論されてきたが、大きな改革はされていない。
サラリーマンと専業主婦が大半だった過去の名残である。
現在では、第3号被保険者の約4割が就労しているというデータもある。
一方で、厚生労働省は、社会保険強制加入の条件を拡大している。
(言い換えると、夫の扶養を外れやすくしている。)
例えば106万円の壁で説明した勤務先の従業員数は:
2016年10月から:常時500人超え
2022年10月から:常時100人超え
2024年10月から:常時50人超え(決定事項)
と徐々に社会保険加入適用を拡げている。
さて、106万円・130万円の壁対策として、政府が補助金を支給する 期間を2年間とした。なぜ2年間なのか?2年後には何が待っているのか?
実は令和7年には、年金改正が行われることが決まっている。
未だ年金改正の詳細全ては、明らかにされていないが第3号被保険者に メスが入るとも言われる。補助金は、年金改革までの「繋ぎ」の 処置にも見えるのである。経済同友会は10月3日の記者会見で 「106万円の壁と130万円の壁を大胆に引き下げ、第3号被保険者について第2号被保険者への移行を促すべき」と発言しているのである。
いずれにせよ、労働して収入を得ることにより、社会保険料を負担する。
その代わりに各種の保障が得られるという本来の姿に、すでに舵は 切られているようだ。

CFP 前川敏郎

年金は難しい! 色々話は聞くけれど・・・個々の状況によって選択

50~60代になり股関節や膝関節が悪くて手術したという人が職場やFP仲間でも複数いて、実際手術を受けた人から「障害厚生年金3級」や「障害者特例」が使えるなどアドバイスをもらったので調べてみました。

人工股関節置換術は日本国内で40年以上前から行なわれている手術です。整形外科では一般的な治療法として定着し、手術件数は年々増えており、今では年間7万例以上にも上ります。また、厚生労働省の公開データによれば、 人工 股関節置換術を受けられる患者さんの平均年齢は68歳と、比較的高齢の方が手術を受けられていることが分かります。ちなみに女性のほうが男性の1.5倍~2倍多いことが分かっています。最近では舛添要一さんや千原ジュニアさんが手術を公表していますね。

また、 人工 膝関節置換術も同じく40年以上前から行なわれている手術で、今では年間9万例以上にも上ります。またこちらも厚生労働省公開データによれば、 人工 膝関節置換術をうけられる患者さんの平均年齢は75歳と、やはり高齢な方が手術を受けられていることがわかります。男女比は1:4と圧倒的に女性に多く見られます。

さて今回紹介するのは、 人工 股関節置換術や 人工 膝関
置換術を受けた場合で、条件に当てはまれば障害厚
年金3級の請求や障害者特例が使えるが、年齢や
これまでの働き方(報酬比例の年金額)による
という話です。

(出典:日本年金機構) https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
【受給要件】

ここで書類が揃い3級が認定されたとします。すると老齢年金受給までは障害厚生年金3級が受給できます。さらにもし生年月日が、男性なら1953年4月2日から1961年4月1日、女性なら1958年4月2日から1966年4月1日の間にある人が、仕事を辞めた場合は障害者特例を使うことができます。これは65歳以降にもらう予定の老齢基礎年金と同じ額定額部分を前倒しでもらえるのです。障害者特例を使える人は限られていますので、お得な制度です。注意したいのは障害年金だと課税対象となりませんが、障害者特例の受給に関しては老齢年金と同じ扱いなので雑所得として課税対象となります。また、仕事を辞めて失業手当をもらうときは障害者特例でもらえる定額部分と併給できず、どちらか一方になります。

さて65歳からの年金の受け取り方は3種類です。

表からわかるように、障害基礎年金は1級と2級しかないため、障害厚生年金3級を受給していた人は、65歳からは「老齢基礎年金+老齢厚生年金」を受給するしかありません。

また、障害厚生年金3級を受給して、老齢基礎年金は繰り下げしようとしても残念ながらそれはできません。

このように3級の申請を頑張っても、その人の年齢や報酬比例の年金額によっては思ったほどではないと感じることも多いと思います。

年金は個々の状況によるため、本当に難しい!!

でも老後資金の大切なものなので、きちんと調べて選択しましょう。

CFP 佐藤 広子

65歳以上の共働き夫婦の遺族年金

~バリバリ共に働いたらいくらになるの?~

令和3年(2021年)の平均寿命は男性 81.47年、女性87.57年です。(参考:厚労省 令和3年簡易生命表)

夫婦二人の生活から、残念ながら一人になってしまう方はシニア世代に多いということです。

さらに平成12年(2000年)を過ぎると共働き世帯数は片働き世帯数を逆転し、令和2年(2020年)には3世帯のうち2世帯は共働きとなりました。(参考:厚労省 共働き等世帯数の年次推移表)

ということで、今回は「65歳以上の共働き夫婦」を対象とする遺族厚生年金についてお話します。

残念ながら、厚生年金の被保険者であれば、誰でも遺族厚生年金の受給者になれるとは限りません。

まずは、65歳以上の人が死亡したときの本人の遺族厚生年金の受給要件です。

  1. 老齢厚生年金の受給権者であった
  2. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた

上記のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

さらに加えて、ここが重要です、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限られます。(参考:厚労省 遺族厚生年金の受給要件から抜粋)

老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給資格期間は平成29年(2017年)8月以降、10年以上となりましたが、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給資格期間は25年のままです。ご注意ください。ご心配の人は年金事務所へ問い合わせて、確認をしましょう。25年未満でも要件を満たす短縮特例が適用される場合もあります。

つぎに、65歳以上の上記の要件を満たした遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合、配偶者の死亡による受け取る遺族厚生年金額を求める計算式です。残された配偶者の老齢厚生年金の額が影響します。

  • 「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額」
  • 「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の1/2の額と残された人の老齢厚生(退職共済)年金の額の1/2の額を合算した額」
    • と②を比較し、高い方が遺族厚生年金の額となります。

★ただし、平成19年(2007年)3月31日までは、原則、どちらを受けるか選択することとなっていましたが、平成16年(2004年)の年金制度改正により、平成19年(2007年)4月1日からは、自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

となります。残された配偶者がバリバリ働いた場合、遺族厚生年金が支給されない場合もあります。

ここに3組のご夫婦がいます。共通条件は下記のとおりです。

夫婦ともに65歳以上で公的年金だけが収入源である。

夫がある日亡くなりました。

亡くなった夫は25年以上の厚生年金の加入者で、老齢厚生年金は120万円。

老齢基礎年金は各人、78万円である。

3組のご夫婦は、残された配偶者の老齢厚生年金の受給額で次のように分かれます。

★Aさん夫婦 妻は配偶者の扶養の範囲内で、60歳までパート勤めをしていた。妻には老齢厚生年金がない。

夫が死亡。
妻には老齢厚生年金がないので、(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円が遺族厚生年金となります。妻の老齢基礎年金78万円に遺族厚生年金90万円が上乗せされ、合計で168万円の年金となります。遺族厚生年金の90万円は非課税です。

★Bさん夫婦

妻は子育て終了後、会社勤めを再開、妻の老齢厚生年金額は夫のそれより半分未満である。

夫が死亡。

(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円と(前述②の式)夫の老齢厚生年金の2/1の60万円+

妻の老齢厚生年金の1/2の15万円の75万とを比べます。大きい方の①式の90万円が遺族厚生年金となりますが、ここで前述の

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

から妻の老齢厚生年金30万円が支給され、その分の遺族厚生年金は停止され、結果、60万円の遺族厚生年金となります。合計で168万円の年金です。Aさんと同じですが、非課税の遺族厚生年金額は60万円です。

★Cさん夫婦

妻はずーと会社勤め、妻の老齢厚生年金額は夫のそれより半分以上である。

夫が死亡。

(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円と(前述②の式)夫の老齢厚生年金の2/1の60万円+

妻の老齢厚生年金の1/2の50万円の110万円とを比べます。大きい方の②式の110万円が遺族厚生年金となりますが、ここで前述の

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

から妻の老齢厚生年金100万円が支給され、その分の遺族厚生年金は停止され、結果、非課税の遺族厚生年金は10万円となります。合計で188万円の年金です。

もし、妻の老齢厚生年金が夫のそれと同じまたはそれ以上の時は、遺族厚生年金は全額支給停止となります。

遺族厚生年金は支給されません。

3例ともに夫を妻に、妻を夫にと読み替えても同じになります。

65歳以上遺族年金の受給のポイントはつぎのとおり

●保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上の人が遺族厚生年金対象の必須要件である。

●残された配偶者の老齢基礎年金が必ず一階部分になる。

●残された配偶者の働き具合で、非課税の遺族厚生年金額が変わる。

●バリバリ共に働いた夫婦の遺族年金は夫婦合算の老齢年金の約半分になる。

●老齢年金の繰り下げ、繰り上げには影響しない。

あなたも上記の例を参考に試算してみてはいかがですか?

ちなみに65歳以上の単身無職世帯の消費支出は133,146円/月、年間で約160万円です。(参考:総務省 家計調査報告 家計収支編 2020年 令和2年平均結果の概要)これは、あくまでも平均値です。価値観、こだわりから望む老後のライフスタイルも人それぞれです。

ファイナンシャル・プランナーは皆さまの不安を解消し、希望のライフプランをご提案させていただきます。ご相談のお申し込みは「MENU」→「お問い合わせ」からどうぞ。

楠本智子 CFP認定者(ファイナンシャル・プランナー)

2023年8月15日

所有者不明土地とは何か

現状を認識しよう

 「所有者不明土地とは読んで字のごとく不動産登記簿で所有者の所在が確認出来ない土地」のことである。2016年の国土交通省の発表資料によると、この割合は全土地の20.1%あるとなっている。将に5件に1件が誰が所有しているかわからない土地であるということだ。

 そして、なぜそうなるかの理由では約67%が相続が理由で未登記となっているという。

今後の見通し

 もしこのままのペースで所有者不明土地が増え続けると2040年にはその面積は720万ヘクタールを超えてしまうという。これは実に北海道本土の土地面積の90%に相当する広さだという。そして、この問題を放置する経済損失は約6兆円を超えるという。(一般財団法人 国土計画協会の調査結果)

 これは所有者不明土地を国や地方自治体が有効活用するためには、所有者の捜索、相続人全員への連絡・合意を得るために多くの時間とコストがかかるためである。

土地に対する我々の意識の変化

 2021年の国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、自宅以外の土地の取得理由は「相続により取得」が68.2%となっている。それらの土地の現況は「誰も居住していない、利用していないが管理を行っている」が32.5%トップになっている。土地が未利用となっている理由では「遺産として相続したが、今のところ利用する予定がないため」という回答が57.6%にも上っている。

 取得した土地に対する意識では「草刈り等の管理作業に負担を感じている」が62,7%に上っている。その他「税金や管理費用に負担を感じている」47.5%「土地を所有・管理し続けること自体に負担を感じる」という回答多数となっている。

これをどう考えるか

 この調査結果から見えるのは、相続によって取得した土地が全てすぐ活用・売却等が出来る町中の住宅地・商業地ばかりではなく、サラリーマンだったのに田や畑を相続し困り果てるケースやその土地が駅から離れた土地で活用しにくいケース等もあるだろうという推測である。

 だからこそ、土地を所有・管理することに負担を感じながらも今まで現状を維持してきたのだろうと推測する。

発想を転換する必要が出てきた!

 2023年(今年)4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まっている。

 「相続土地国庫帰属制度」とは、「相続によって土地の所有権を取得した土地を手放して国庫に帰属されることを可能にする制度」である。

 つまりこれまで売れずに残っていた土地を国に引き取ってもらう道が出来たということ。利用していない土地を持ち続ければ固定資産税等の保有課税によって税金負担を永遠に負担し続けなければならない。年間で例え30万円であっても20年間持ち続けたなら600万円も負担したことになる。つまりもう発想を転換して使う予定のない土地は国に引き取ってもらい、固定資産税の負担から解放されようという状況になってきているということだ。

*「相続土地国庫帰属制度」の詳細については関心のある読者はここで説明すると長くなりますので法務省のHPや不動産関連のHPでご確認お願いします。

*法務省では実際にこの制度を使おうと検討している人のために「「相続土地国庫帰属制度のご案内」という小冊子を作成し、希望者に配布している。(72P,無料)この機会に自宅を管轄する法務局支局・出張所を訪ねてみるのも後学の一助になるのではないでしょうか。

2024年(来年)4月1日から相続登記が義務化される!

 更に、来年4月1日から不動産登記法が改正され、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内に登記をする」必要がでてきた。これは努力義務とかではなく罰則もある。正当な理由なく登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められることとなる。

 不動産登記法の改正点はもう1点あり、「住所変更登記の義務化」も始まる。つまり、不動産の所有者に氏名・住所の変更ある場合は2年以内に変更手続きしないと5万円以下の過料が請求されることとなる。この措置により国・地方自治体等は公共事業や収容等の事業を実施しようとする場合、速やかに不動産の所有者と連絡が付きやすくなると思われる。

 そもそも冒頭の「所有者不明土地」問題は2011年3月の東北大震災と津波からの復興事業で海沿いの被害を受けた土地から高台に移転させたり、かさ上げ工事をする中で、5件に1件が所有者不明で対応に困り果てる状況があったため10年来の課題となっていたのである。

法改正前の土地はどうなるのか?

 私はこちらのほうが大問題だと思う。新たに発生する相続よりこれまで放置されてきた未登記の相続物件のほうが断然多いはずだからだ。このブログを読んだ読者で思い当たる物件の所有者はまだ半年あるので対応準備を始めたほうが良いと思う。

救済制度はある!

 早く相続登記をしたくても不動産の遺産分割協議が難航して3年以内に登記できない場合は新設される(仮称)「相続人申告登記」を利用することが出来る。この制度は

  • 該当の登記名義人に相続が発生したこと
  • 相続人が判明していること

の申し出を行い、登記簿に記載してもらう制度。相続登記ではないが、罰金は免れる。

(分割協議の後、再度登記必要)

 以上、土地・相続に関する最近の動きを見てきたが、大きな改正もあるこのタイミングで土地を所有する意義等を見直し、要らない土地は国に還すという選択肢を検討してみる良いチャンスだと思います。

                         CFP 重田 勉

配当所得は確定申告したほうがお得か? ~令和4年度税制改正の影響について考えてみる~

 令和4年分の確定申告で上場株式等の配当所得を所得税と個人住民税について異なる課税方式で申告し住民税及び社会保険料を抑えつつ所得税の還付を受けた方もいらっしゃると思います。

  源泉徴収ありの特定口座では上場株式等の配当金は20%(所得税15%、住民税5% 復興特別所得税を除く)が源泉徴収されます。源泉徴収ありの特定口座での配当金を確定申告する際に、これまでは、所得税については総合課税を選択することで、配当控除(所得税10%*、住民税2.8%)を受け、住民税については申告不要を選択することにより配当金は国民保険料等の算定基準となる合計所得金額に含まれなくなるため保険料等の増額を抑えることが可能でした。*課税総所得金額が1000万円以下の場合
これが、令和4年度の税制改正により令和5年分の確定申告から所得税と住民税で課税方式を一致させることか決まりました。所得税及び住民税をともに申告するか、申告不要にするかのどちらかとなります。

 配当所得を他の所得と合算して総合課税で確定申告する場合は、住民税も申告することになりその分住民税(10%)や国民年金保険料が増える一方、総所得額によっては所得税の配当控除額 の方が配当控除前の所得税額を上回り、所得税、住民税、社会保険料の総額で配当所得を申告しない場合と比較して、有利になる場合があります。

 退職し年金が主な収入となり総所得金額が現役世代と比較してそれほど高くなく所得税率が低い場合、この傾向が顕著になります。年金生活に入った65歳の世帯主(配偶者は専業主婦)の家庭を例に、所得税、住民税及び社会保険料の総額の面から、世帯主が配当所得を総合課税で確定申告し配当控除を受けたほうが有利か、申告せずに源泉分離課税のままにしたほうが有利かを総所得額別に考えてみます。

1.所得税及び住民税
 所得税の税率は課税総所得額により異なりますが、各課税総所得金額に対する税率と配当控除10%(対配当額、課税総所得金額が1000万円以下の場合)を適用した後の税率が配当金に対する所得税の源泉徴収税率15%より低ければ所得税の支払額が低くなる場合があります。

 一方、住民税は所得割分の税率は課税総所得金額に無関係に一律10%です。配当金の源泉徴収税率の5%(対配当額)ですので住民税の配当控除2.8%(対配当額)を考慮しても、一般的に配当を確定申告すると住民税支払額の面では不利になります。

2.国民健康保険料(税)
 配当所得を他の所得と合算して総合課税で確定申告する場合は住民税も申告すること になり、それに伴い国民年金保険料も増額になります。国民年金保険料(税)の徴収方法等は各市町村の条例で定められており、筆者が居住する相模原市の場合、国民健康(税)は医療費分、支援金分、介護分に分かれており、各々の分は所得額に対応する所得割、被保険者数で決まる均等割、世帯ごとに必要となる平等割で構成されます。
 配当所得を総合課税で確定申告する場合に国民年金保険料(税)が増えるのは所得割の部分です。65歳以上の場合は介護分は前年度の総所得額に応じた保険料が決められています。医療費分及び支援金分の所得割額は前年度の総所得額から基礎控除額を引いた額の8.35%です。

3.配当所得を総合課税で確定申告する場合と申告不要とする場合の所得税、住民税、社会保険料(税)総額の比較

 図1~3 は、世帯主が公的年金を受給しているシニア世代の夫婦(世帯主65歳、配偶者は世帯主の扶養対象)を例に、世帯主の配当所得(上場会社の式)を総合課税で確定申告する場合と確定申告不要とした場合(源泉徴収ありの特定口座)について、総所得額別に所得税、住民税及び社会保険料(国民年金 保険料(税))の支払総額を比較したグラフです。住民税及び社会保険料(国民年金保険料(税))の計算は、筆者が居住する相模原市をベースにしています。

総所得額は下記の3ケースの収入について考えてみます。
ケース1:年金190万円+配当
     平均的な収入で40年間就業した場合に受け取れる国民年金と厚生年金の額
(出所;厚生労働省)
 ケース2:年金290万円+配当
      ケース1に企業年金の平均額100万円(出所;企業年金連合会)を加算
ケース3:年金290万円+その他の収入300万円 (所得額ベース)+配当
     ケース2に他の収入として300万円(所得額ベース)を加算

以下の説明で「所得税」は、復興特別所得税を含みます。

3.1 ケース1の場合 (図1)
1)配当を確定申告しない場合
  配当を確定申告しない場合は、所得税及び住民税は配当の源泉徴収分(配当額の各々15.315% 、5%)に年金所得に対する所得税及び住民税が加算された額になります。
年金所得に対する所得税や住民税は公的年金控除や基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除を考慮すると課税総所得はゼロになるため所得税はケース1の場合は発生しません。
配当を確定申告しない場合の所得税及び住民税は配当の源泉徴収分のみで、配当額に比例して増えています。社会保険料は配当額によらず約16万円で一定です。

2)配当を確定申告する場合
 配当を総合課税で確定申告する場合、配当額の増加に伴い年金額と合わせた総所得額も増加しますが、配当控除前の所得税額よりも配当控除額が大きいため所得額はゼロとなり所得税は発生しません。
一方、住民税は所得割分の税率が10%であり配当控除額を考慮しても住民税は配当額の増加に伴い増加しています。社会保険料も配当の増額に伴い増加しています。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較 
  所得税は、配当を確定申告する場合は配当額にかかわらずセロですが、確定申告しない場合は配当額に対し15.315%の所得税が発生し配当額の増加に比例し増えてゆきます。
一方、住民税及び社会保険料は配当を確定申告する場合は配当額の分が増加します。
配当を確定申告する場合の所得税の削減効果が大きいため、所得税、住民税及び社会保険の総額では、配当を確定申告したほうが支払額が下がります。

確定申告した場合の支払い削減額総額は図1の棒グラフで示されています。

3.2 ケース2の場合 (図2)
世帯主の年金収入190万円のケース1場合は配当を確定申告したほうがしない場合よりも支払う所得税、住民税及び社会保険料の総額が低くなりますが、年金収入が290万円のケース2の場合はどうなるか見てゆきます。

1)配当を確定申告しない場合
 配当を確定申告しない場合は、ケース1の場合と同様、所得税及び住民税は配当の源泉徴収分(配当額の各々15.315% 、5%)に年金所得に対する所得税及び住民税が加わります。
所得税及び住民税は年金収入分の各々約3.2万円及び約7.5万円に配当所得分が加わり配当額の増加に比例し増加してゆきます。社会保険料は年金収入に対する分のみで配当額によらず約30万円になります。

2)配当を確定申告する場合
 ケース1では、配当を確定申告すると配当金額によらず所得税は発生しませんでした。
ケース2の場合は配当額の増加に伴い年金額と合わせた総所得額も増加しそれに伴い所得税率も上昇しますが、配当額400万円弱までは配当控除の額が配当控除前の所得税額を上回るため所得税は発生しません。
一方、住民税は所得割分の税率が10%でありケース1と同様配当控除額を考慮しても住民税は配当額の増加に伴い増加しています。社会保険料も配当の増額に伴い増加しています。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較
  所得税は、配当を確定申告する場合は配当額400万円弱までは粗発生しませんがそれ以降は配当額の増額に比例して所得税も増加してゆきます。確定申告しない場合は配当額に対し15.315%の所得税が発生するため、所得税額は配当額の増加に比例し増加しています。
一方、住民税及び社会保険料は配当を確定申告する場合は配当額の分が増加します。
配当を確定申告する場合、しない場合と比較し所得税の削減効果が大きいため、ケース1と同様、所得税、住民税及び社会保険の総額では、配当を確定申告したほうが支払額が下がります。

 確定申告した場合の支払い削減額総額は図2の棒グラフで示されています。

3.3 ケース3の場合 (図3)
  世帯主の収入が年金収入(280万円)にその他の収入が300万円(所得額ベース)が加
算される場合について、配当を確定申告する場合としない場合で所得税、住民税及び社 会保険料の支払額がどうなるか見てゆきます。

1)配当を確定申告しない場合
年金収入とその他の収入に対する所得税、住民税及び社会保険料は各々約24万円、約
35万円及び約58万円となり、これに配当所得分が加わり配当額の増加に比例し増加
してゆきます。

2)配当を確定申告する場合
  配当以外の収入に対する課税所得額は336万円となり20%の所得税率が適用されます。
配当所得の増加に伴い課税総所得に対する所得税率は23%まで増加します。
課税総所得額に対する所得税は配当控除額を上回るため、所得税は配当額の増加に比例 し増加します。住民税及び社会保険料も配当額の増加にともない増加します。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較配当を確定申告しない場合は配当に対する所得税は15.315%の源泉徴収税率が適用され配当額の増加に比例し増加します。
配当を確定申告する場合世帯主の収入額がケース3の場合は、課税総所得額に対する 所得税率は配当金額以外の収入に対しては20%であり、配当金額を加えた場合は20%または23%となり所得税額が配当控除額(配当金額の10%)を上回るため配当額の増加に伴い増加しますが、源泉徴収口座で適用される配当に対する所得税(よりも支払額は低くなります。 但し、ケース1及びケース2に比較し、所得税支払額の低減効果は大きくはありません。
住民税及び社会保険料は、配当を確定申告したほうがその分支払額は増加します。
ケース1及びケース2に比べ収入額が多いケース3の場合、配当を確定申告した場合、しない場合と比較し所得税の支払額は低くなりますが住民税及び社会保険料が増えるため、所得税、住民税及び社会保険料の支払い総額では増加する結果となります。

  確定申告した場合の支払い総額の増額は図3の棒グラフで示されています。

  2024年から投資枠の拡大や投資期間の無期限化など制度の使い勝手が大幅に改善された新NISAが始まります。
現役時代と比較し年金が主な収入となり適用される所得税率が下がる方が多いシニア世代の皆様は、新NISA口座ではリスク管理に留意しながら値上がり目的とした株式、一般口座・特定口座では配当重視の株式を運用し配当については、所得税、住民税、社会保険料の支払総額で有利な配当所得の総合課税方式での確定申告を検討されてはいかがでしょうか?

CFP 岩船

エッ!来年から年間220万貰っても非課税に出来る方法とは

 その方法とは、一人からは相続時非課税制度にて、もう一人からは暦年贈与で貰うという方法です。相続時精算課税制度の改正を利用した、ちょっとウラ技的方法になりますが解説します。

相続時精算課税制度改正案が今年3月28日成立しました。

まず、相続時精算課税制度とは、高齢者の資産をスムーズに次の世代に渡すために平成15年度から設けられた制度で、経済政策の一環でもあり、財産の贈与を受けた人がお金を使い、お金が循環することを期待され導入されました。

制度の概要は受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、

贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する制度です。

計算の結果、相続税の納税を要しない場合には、遡って贈与税がかかることはありません。

しかし、実際には下記のようなデメリットがあり、あまり利用されずにきました。

今までいわれてきた大きなデメリット

1.一度でもこれを使うと後に暦年贈与に戻せない。

 相続時精算課税制度を利用した後は、暦年贈与非課税枠の110万円が一生使えない

.必ず贈与税の申告が必要となる

このため、相続税対策としては、暦年贈与(れきねんぞうよ)を使うのが一般的でした。

暦年贈与とは、年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与額が110万円以下である場合、贈与税は発生しないという仕組みを利用した贈与の方法のことです。

自分が保有する財産を、年単位での時間をかけて少しずつ生前から贈与していく方法です。

この方法であれば、生前のうちに所有している財産を減らすことにより、将来的に発生する相続税の負担を軽減させることが可能なわけです。

そのように一般的に使われていた暦年贈与ですが、相続には『相続開始前3年以内の贈与加算』という制度があります。

この制度は、家族に相続が発生した場合、

・被相続人の方が亡くなった当日から数えて、『3年以内』に行われた贈与については、・贈与した財産額を亡くなった方の財産に足し戻して相続税の計算をしなくてはいけない、というものです。

でも、この3年以内以内贈与というものが、今年の改正でなんと7年に延長されてしまいました。

このため、高齢になってから生前贈与を始めてもあまり節税にはつながらないことが想定されます。

それに対して、今回の改正で大きく進歩したのが「相続時精算課税制度」です。

さきにあげた大きなデメリットの二つが無くなりました

一度利用開始した相続時精算課税制度をやめて暦年課税に戻すということは出来ませんが、かわりにこの相続時精算課税制度のなかで110万の基礎控除が行われることになりました。

さらには、この110万以内の基礎控除内なら申告も不要となり、手続き面でも楽になります。

このため、2024年からは相続時精算課税制度を使って110万贈与するというのが、生前贈与の一般的な方法になると思われます。

タイトルにあげた一人の人が年間220万貰っても課税されないケースは下記の①のように一人からは相続時精算課税制度により110万貰い、もうひとりからは暦年贈与で110万貰うというケースです。➁のように二人から暦年贈与で110万づつ貰う場合や③のように二人から相続時精算課税制度で110万貰う場合基礎控除が二人で按分され基礎控除を超えた部分は相続時の足し戻し対象になります。

相続時精算課税制度というのは、2500万まで贈与税がかからない制度で、相続時の財産額によっては、将来的に相続税がかかる事もあること念頭に置いておく必要があります。また、年間110万円の基礎控除内に関しては非課税かつ申告も必要ありませんが、110万円を超えた部分に関しては、これまで同様に累計贈与額2,500万円に達していなくとも贈与税申告が必要となります。

詳しいことは、追って国税庁のホームページでパンフレットとかが掲載されると思いますので、来年になったらそちらで詳しいことをご確認ください。

ちなみに、現行制度のパンフレットはこちらになります。

財産をもらったとき

CFP 磯野正美