やっと小規模投信整理の動きが拡大してきている
このところ国内資産運用会社は投資信託の「選択と集中」進めている。
平成28年度の株式投信(追加型)の償還本数 326本(野村アセットマネジメント調べ)
この水準は前年度比 45%の急増となっている。償還されたファンドの平均残高をみると平均
7億円弱と本当に小規模なファンドが償還となっていることが分かる。平均残高が7億円では
信託報酬1%として運用会社の取り分が3割だとすると年間210万円しか収入がないことになる。これでは運用にかかわる人員の人件費や運用報告書作成等の経費を賄えるとは思えず、また
分散投資の効果も得るのは難しいと推測され合理的でむしろ前向きな動きと言えよう。
なぜこの動きが合理的と言えるのか?日本には約6,000本もの投資信託があるのだから!
もし初めて投資信託を買ってみようとする人がこれを知ったら初めから途方に暮れるはずなのだ。
「貯蓄から投資へ」と言われて久しいが投資初心者の戸惑いも分かる気がする。
世界最大の投資信託市場であるアメリカでさえ投信の本数は約8,000本に過ぎない。そして
投信1本あたりの残高はアメリカが日本の約10倍もある。やはり旬のテーマや高い分配金を売り
にして次々に投信を設定しては成績が悪くなると次のテーマ・投信に乗り換えさせてきた日本の
販売会社(証券会社・銀行等)の販売方法は改善を要すると言える。
またこれまでも言ってきたが自分の目の前にいる証券会社や銀行の窓口係や営業マンが本当に
自分の為を思って商品を選択してくれている?という幻想は早く捨てなければならない。
彼ら・彼女達は手数料収入の営業目標の達成を目標において目の前にいるのだから。
もっと投信の手数料を気にしよう
投資信託の手数料が大別して2つあることは良く知られている。このうち「販売手数料」は
オンライン証券や確定拠出年金向けの商品等では無料のものが出てきている。これは当然の動き
だが、それ以外のむしろ大半を占めるであろう対面販売の場合でも果たして投資額の3%もの
手数料を払う意味があるのか?は再度考え直した方が良いと思われる。
例えば100万円で投資信託を購入する時、販売手数料が3%なら3万円がまず元金から引かれ
残りの97万円が購入資金になる。この3万円は各投資商品の説明等の手数料ということのようだが果たして何分間・どんな説明を受けたであろうか?ほとんどパンフレットに書いてあることを
なぞっただけではなかったか? 100万円を投資して1年後に103万円になる保証はなにもないのだから、確実に3万円を儲けるのは難しいのだから、最初に払う3万円の価値はもう一度
見直した方が良い。
明るい展望も出てきている
投資信託の手数料のもう1つ、「信託報酬」は運用成績を左右する大きなポイントだが、これまで
市場平均に連動するような「インデックス型」の投資信託のほうが市場平均以上のリターンを狙う
「アクティブ型」よりも安く、この点は理解も進み「インデックス型」投資信託の残高は伸びている。
信託報酬の日米比較 日本 平均 1.3%
アメリカ 平均 0.7%
(但し 日本のインターネット証券経由の投信残高 全体の約5%程度)
だが最近遂に「アクティブ型」でも「信託報酬」の値下げの動きが出てきた!
「信託報酬」を引き下げた「アクティブ型」投資信託の例
設定日 | 社名・シリーズ名 | 運用の中身 | 信託報酬(税込) |
2月19日 | ピクテ投信
「iTrust」 |
世界株などのアクティブ型で3本 | 年0.96~1.44% |
3月4日 | 大和住銀
「ひとくふう」 |
JPX日経400の銘柄から
150前後を絞り込む |
0.27% |
3月30日 | 三菱UFJ国際
「eMAXIS最適化バランス」 |
リスク許容度に応じたバランス型5本 | 0.54% |
3月31日 | DIAM
「たわらノーロードplus」 |
日本株のスマートベータ型など3本 | 0.76~0.97% |
(出所 日本経済新聞 2016.3.17日)
表中、特に注目して欲しいのは大和住銀の「ひとくふう」である。これは三井住友AMが昨年9月に確定拠出年金向けに作られた指数連動型投信の信託報酬(年0.17~0.60%)と0.1%
しか差がない。「アクティブ型」でも「インデックス型」に近い低い「信託報酬」の投信が日本にも出てきたことは“低コスト化”の流れが本格化しつつある現状を写していると思われる。
このどこが新しいかと言えばこれまで日本の「アクティブ型」投資信託の「信託報酬」は平均
して1.5~1.7%であった!のだから。
ここに興味深いデータがある。
信託報酬の差によるリターンの比較
日経平均連動型投資信託の15年間のリターン比較(2000年~)
信託報酬 | 0.3% | 1% |
リターン | 32% | 19% |
やはり手数料の1%の差を意識し、自ら投資信託を選定した人が勝つようです。
2017.6.21 CFP 重田 勉