所有者不明土地とは何か

現状を認識しよう

 「所有者不明土地とは読んで字のごとく不動産登記簿で所有者の所在が確認出来ない土地」のことである。2016年の国土交通省の発表資料によると、この割合は全土地の20.1%あるとなっている。将に5件に1件が誰が所有しているかわからない土地であるということだ。

 そして、なぜそうなるかの理由では約67%が相続が理由で未登記となっているという。

今後の見通し

 もしこのままのペースで所有者不明土地が増え続けると2040年にはその面積は720万ヘクタールを超えてしまうという。これは実に北海道本土の土地面積の90%に相当する広さだという。そして、この問題を放置する経済損失は約6兆円を超えるという。(一般財団法人 国土計画協会の調査結果)

 これは所有者不明土地を国や地方自治体が有効活用するためには、所有者の捜索、相続人全員への連絡・合意を得るために多くの時間とコストがかかるためである。

土地に対する我々の意識の変化

 2021年の国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、自宅以外の土地の取得理由は「相続により取得」が68.2%となっている。それらの土地の現況は「誰も居住していない、利用していないが管理を行っている」が32.5%トップになっている。土地が未利用となっている理由では「遺産として相続したが、今のところ利用する予定がないため」という回答が57.6%にも上っている。

 取得した土地に対する意識では「草刈り等の管理作業に負担を感じている」が62,7%に上っている。その他「税金や管理費用に負担を感じている」47.5%「土地を所有・管理し続けること自体に負担を感じる」という回答多数となっている。

これをどう考えるか

 この調査結果から見えるのは、相続によって取得した土地が全てすぐ活用・売却等が出来る町中の住宅地・商業地ばかりではなく、サラリーマンだったのに田や畑を相続し困り果てるケースやその土地が駅から離れた土地で活用しにくいケース等もあるだろうという推測である。

 だからこそ、土地を所有・管理することに負担を感じながらも今まで現状を維持してきたのだろうと推測する。

発想を転換する必要が出てきた!

 2023年(今年)4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まっている。

 「相続土地国庫帰属制度」とは、「相続によって土地の所有権を取得した土地を手放して国庫に帰属されることを可能にする制度」である。

 つまりこれまで売れずに残っていた土地を国に引き取ってもらう道が出来たということ。利用していない土地を持ち続ければ固定資産税等の保有課税によって税金負担を永遠に負担し続けなければならない。年間で例え30万円であっても20年間持ち続けたなら600万円も負担したことになる。つまりもう発想を転換して使う予定のない土地は国に引き取ってもらい、固定資産税の負担から解放されようという状況になってきているということだ。

*「相続土地国庫帰属制度」の詳細については関心のある読者はここで説明すると長くなりますので法務省のHPや不動産関連のHPでご確認お願いします。

*法務省では実際にこの制度を使おうと検討している人のために「「相続土地国庫帰属制度のご案内」という小冊子を作成し、希望者に配布している。(72P,無料)この機会に自宅を管轄する法務局支局・出張所を訪ねてみるのも後学の一助になるのではないでしょうか。

2024年(来年)4月1日から相続登記が義務化される!

 更に、来年4月1日から不動産登記法が改正され、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内に登記をする」必要がでてきた。これは努力義務とかではなく罰則もある。正当な理由なく登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められることとなる。

 不動産登記法の改正点はもう1点あり、「住所変更登記の義務化」も始まる。つまり、不動産の所有者に氏名・住所の変更ある場合は2年以内に変更手続きしないと5万円以下の過料が請求されることとなる。この措置により国・地方自治体等は公共事業や収容等の事業を実施しようとする場合、速やかに不動産の所有者と連絡が付きやすくなると思われる。

 そもそも冒頭の「所有者不明土地」問題は2011年3月の東北大震災と津波からの復興事業で海沿いの被害を受けた土地から高台に移転させたり、かさ上げ工事をする中で、5件に1件が所有者不明で対応に困り果てる状況があったため10年来の課題となっていたのである。

法改正前の土地はどうなるのか?

 私はこちらのほうが大問題だと思う。新たに発生する相続よりこれまで放置されてきた未登記の相続物件のほうが断然多いはずだからだ。このブログを読んだ読者で思い当たる物件の所有者はまだ半年あるので対応準備を始めたほうが良いと思う。

救済制度はある!

 早く相続登記をしたくても不動産の遺産分割協議が難航して3年以内に登記できない場合は新設される(仮称)「相続人申告登記」を利用することが出来る。この制度は

  • 該当の登記名義人に相続が発生したこと
  • 相続人が判明していること

の申し出を行い、登記簿に記載してもらう制度。相続登記ではないが、罰金は免れる。

(分割協議の後、再度登記必要)

 以上、土地・相続に関する最近の動きを見てきたが、大きな改正もあるこのタイミングで土地を所有する意義等を見直し、要らない土地は国に還すという選択肢を検討してみる良いチャンスだと思います。

                         CFP 重田 勉