「インベスターズリターン」から分かること

「インベスターズリターン」とは何か

  生活者・個人投資家等が投資信託等を購入しようと考えたとき多くの場合、過去の運用成果が良いものを探し・選択して購入することが多いはずである。この場合多くの投資信託等のパンフレットに乗っている指標が「トータルリターン」である。  

「トータルリターン」とは投資信託等のファンドを売買せずに継続保有したと仮定した場合のリターンをいう。これに対し「インベスターズリターン」は投資信託等のファンドを保有する投資家の平均的な損益のことをいう。なぜ「インベスターズリターン」に着目するかというと、実際には各投資家はバラバラのタイミングでファンドを購入・売却し、保有期間も異なり、損益もその売り買いのタイミングで各投資家ごとに違うからである。一般に優れた運用成績のファンドと言われるものであっても、各投資家がどのタイミングで買ったか・売ったかで運用成果は大きく変わってしまうものなのだ。  

  また、「インベスターズリターン」は金額加重リターンとも言われ、ファンドに資金が流入した時期の比重を高く・資金が流失した時期の比重を低く算出する。あるファンドが人気を集め多額の資金を集めると流入後の運用成果は流入前の運用成果より大きく影響を受けることになる。つまり、「インベスターズリターン」とはそのファンドを持っている投資家が実際にどの位儲かっているかを知ることが出来る指標なのだ。  

  金融庁が「フィデュ-シャリーデューティー(顧客本位の業務運営)」の徹底を金融機関に求める中、投資家の実際の運用成果・儲けを示す「インベスターズリターン」が着目されている。  では実際に両リターンはどの程度違うのか見てみたい。

       ファンドの純資産残高順に見た両リターンの違い

*期間 2017年から過去3年間のリターン(年率)  

*差=インベスターズリターン-トータルリターン  

*国内公募追加型株式投資信託が対象(除く、確定拠出年金専用・ラップ口座専用・ETF)   

出所 モーニングスター  

  図表が若干古いが、この表の差の欄の黒字のファンドの保有者のインベスターズリターンは+であり、パンフレット上のリターンを上回って運用できている。特に第10位のLMオーストラリア高配当株F(ファンド)は15.49%のインベスターズリターンを示しておりトータルリターンとの差は実に10.46%となっている。これはこのファンドが基準価格を穏やかに上げ、安定的に資金が流入して純資産残高が増加し続けてきたことを物語っており、このファンドの保有者は自然に頬がゆるんでいたはずである。  

しかし、今回注目しているのは差の欄に-と出た(1部は赤字表記)ファンドである。当時の状況で残高上位10位までに7本のリート関連ファンドが並んでいるが、問題は11位以降のファンドである。このようにインベスターズリターンがトータルリターンを大きく下回るファンドがある原因は次の要因が考えられる。即ち、27位のグローバルヘルスケア&バイオF(ファンド)のようにいかにもこれから注目の産業として設定されそうなテーマであり、話題性からも値上がりが期待できそうだと大量の資金が流入する。しかし、一般の投資家に行き渡った頃には話題性は薄れ、相場環境も悪化して基準価格が大幅に下がり、値上がりを期待してファンドを購入した多くの一般投資家は損失を被ることになる。そうなるとファンドの純資産残高も減少する。このことからこのようなファンドの保有者は話題性等に惹かれ高値掴みをしていることになる。  

  トータルリターンは設定当初からのリターンであることが多く話題性等から設定当初はリターンが多く示されていることが多い。しかし、投資家の本当の儲けを示すインベスターズリターンにも着目してファンド選びの際は検討することをお勧めしたい。                       

                                                                              CFP 重田 勉