老後資金の運用や取り崩し戦略について考えるとき大切なのは「いかに資産寿命を長くするか」ということになる。長生きリスクやインフレリスクが高まっている中で寿命が来る前に資産寿命が尽きるリスクも高まってきている。
老後資金の運用・取り崩し方で「65~70歳くらいからは投資をせず現金化して取り崩してゆく」というイメージを抱く人が多いようだが、これは勧められる戦略ではないと思う。この方法では資金を眠らせておくことになり、インフレによってその価値が目減りしてしまうことになる。では、どうすればよいのだろうか?
「投資は生涯にわたって継続する」
資産寿命を延ばすには、保有している投資信託等を全部売却しないで、運用を継続し生涯にわたって投資・運用を継続してゆく必要がある。この意味で改正された新NISAは非課税期間が無期限となり「生涯投資をサポートしてくれる制度になった」ので、新NISAを賢くフルに活用することで資産寿命を延ばしてゆきたい。そして大部分のNISAは投資信託を使った積み立て投資で行われていると考えられるのでこのブログではその前提で取り崩し戦略を考えたい。
「どう取り崩してゆくのがよいか」
それは「一気に売却するのではなく、必要な分だけ取り崩す」こと。こうすることで残りの資産から資産所得が引き続き得られることになる。また、取り崩しの開始時期は多くの場合65~70歳前後の家計の収支がマイナスになる時期が適していると思われる。
定期的な取り崩し法は3つ
1、 定額解約:一定期間ごとに一定の金額で解約してゆく方法
例、毎月5万円、毎年120万円 等
2、定率解約:一定期間ごとに保有資産残高の一定割合で解約してゆく方法
例、毎年残高の3%、5% 等
3、定口数解約:一定期間ごとに一定の工数を解約してゆく方法
例、毎月1万口、毎年10万口 等
定額解約は取り崩し額が常に一定なので分かりやすく計画を立てやすいというメリットがある。定率解約は一定期間ごとに保有資産残高の何%かを解約してゆくので、保有資産残高が減ってゆくのに合わせて取り崩し額も減ってゆく。このメリットのため資産寿命を延ばす効果が出る。しかし、受け取る金額が変動するため家計の管理がしづらい、基本的に保有資産残高が減ってゆくので、取り崩し金額も減ってゆき家計は苦しくなってゆく点はデメリットといえる。
3番目の定口数解約は「保有する100万口を10年間毎年1回の均等割りで解約して終了」というようにいつまでに使い切るというイメージを固めておきたい人に向いている。
ではどの方法が良いのか?
多くの金融機関や専門家が過去の株価指数などのインデックスを基にシミュレーションしたところ、「一定期間経過後の取り崩し総額+資産残高」で優位になった順番は①定率②定額③定口数となったということです。定率解約は相場上昇時に多くの金額、下落時に少ない金額を取り崩すので投資効率が高くなる傾向があり、その特徴が優位になったと思われます。しかし、家計の管理・計画をする際には「金額が一定である」ほうが分かりやすく安心感もあります。また、株式を中心とするポートフォリオであれば中長期的に資産は成長してゆく可能性が高く、定額解約でも資産寿命を延ばす効果は期待できます。こうなると定額解約はベストではないがよりベターな選択になるのではないかと思われます。
CFP 重田 勉