年金制度改革関連法が5月29日に成立しました ~主婦の働き方と老後の資産形成~

パートタイムなど短時間労働者への厚生年金適用拡大を柱とした年金制度改革関連法案が5月12日に衆議院で可決され参議院での審議を経て5月29日に可決、成立しました。

現在、短時間労働者が厚生年金への加入資格を取得するには、週の所定労働時間が20時間以上、雇用期間が1年以上、月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)、勤務先の従業員数が500人超等の条件が必要ですが、法が成立し、従業員数及び雇用期間の条件が緩和されます。

             現在    2022年10月  2024年10月
企業規模(従業員数)  500人超    100人超     50人超
雇用期間        1年以上     2か月超     2か月超

厚生年金の適用拡大が、主婦の皆様のパートタイム勤務に与える影響について見てゆきます。

夫に扶養されている年収130万円未満の主婦は第3号被保険者に分類され、第2号被保険者である夫の被扶養者として国民年金保険料納付は必要ありません。また、健康保険についても夫の勤務先の健康保険組合等で年収などの条件により被扶養者と認定された家族には、保険料はかかりません。

厚生労働者の「平成28年パートタイム労働者総合実態調査」によれば、女性のパートタイム労働者に占める主婦の割合は8割弱であり、その内の2割が就業調整を行っています。就業調整を行う主な理由としては、税金支払いの発生(年収103万円以上)や夫の被扶養者から外れ(年収130万円以上)社会保険料支払いが発生する事等が挙げられています。

パートタイム勤務をする主婦の皆様が、就業調整をせずに厚生年金保険料や健康保険料を払いながら働く場合について、支払った保険料と将来受給できる厚生年金との関係を見てゆきます。

図1に、主婦の皆様が社会保険に加入し働く場合の社会保険料支払総額と将来受給する厚生年金の総額を、勤務期間5年、10年、15年及び20年について、年収毎に取り纏めました。

主婦の皆様自身が社会保険に加入することで、自身の手取り額は減額しますが、減額分の総額は65歳から90歳(女性の65歳時の平均余命24.5年)の期間に受給する老齢厚生年金の総額と粗同額であることが分かります。

算出の条件
・毎年のインフレ率を0%として計算

次に、主婦の皆様がパートタイム勤務を行う場合の勤務形態別の年収と手取額の関係を見てゆきます。

図2は、勤務先の社会保険制度に加入できる場合と企業規模等により加入できない場合について、年収と手取り額の関係を示しています。

社会保険制度に加入できる場合、年収が106万円から年収対比で15%程度に相当する厚生年金保険料と健康保険料の支払いが発生します。

それに対し、勤務先の社会保険制度に加入できない場合は年収が130万円未満であれば夫の被扶養者として社会保険料の支払いが免除されるため、収入からの減額分は年収の4%程度以下の所得税・住民税等の支払いのみですが、年収が130万円以上になると自身での国民健康保険料及び国民年金保険料の支払いが発生するため所得税・住民税を含め減額分は年収の25%程度になり、勤務先の社会保険制度に加入する場合に比較し大きな差となります。また、自身は将来、老齢厚生年金の受給もできません。

年金制度改革関連法により短時間労働者への厚生年金の適用条件が緩和されることで、パートタイム勤務を行う主婦の皆様は勤務先の社会保険制度に加入しやすくなり、就業調整をせずに年収を増やした働き方に移行することが期待されます。

昨年6月に公的年金以外に老後資金として2,000万円が必要との報告書が金融庁から公表され大きな問題となりました。

厚生労働省は毎年1月に、妻が専業主婦、夫が平均的な収入(月額43.9万円)の会社員で40年間就業した場合の夫婦2人(モデル世帯)の年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)を発表していますが、令和2年度分は月額220,724円となります。

一方で、高齢夫婦無職世帯の平均生活費は、2019年家計調査報告(家計収支編)によると月額270,929円です。公的年金だけでは、生活費が毎月5万円程度不足する結果となります。

短時間労働者への厚生年金適用拡大の流れの中で妻が厚生年金に加入しパートタイム勤務を行う場合やシニアの就業機会の拡大の中で夫も60歳の定年後も働き続ける場合について、老後資金の不足額がどれだけ改善するかについて、図3に金融資産残高の推移をまとめてみました。

公的年金額は厚生労働者の想定するモデル世帯の値を基に、長く働いた場合はその分の厚生年金額を上乗せし、また生活費は総務省の「2019年家計調査報告(家計収支編)」の高齢夫婦無職世帯及び高齢単身無職世帯の値を使用して計算しました。

主婦の皆様が厚生年金に加入しパートタイム勤務をする場合の月額賃金は、厚生労働者の「令和元年分毎月勤労統計調査」で示されたパートタイム労働者の月額給与額から10万円としています。

60歳時点の金融資産残高は、「家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委員会 令和元年)の二人以上世帯の貯蓄残高(世帯主の年齢が60歳代の場合)の中央値1,200万円を使用しています。

その他のシミュレーション条件
・夫婦の年齢:同い年
・夫が60歳から64歳迄勤務する場合の月額賃金:300.9千円
出所 平成30年賃金構造基本統計調査 厚生労働省
・60歳から64歳迄勤務する場合の生活費:二人以上世帯の60~64歳の支出額(勤労 者世帯、無職世帯)
 出 所 2019年家計調査報告(家計収支編)
・65歳時点の平均余命:男性19.7年、女性24.5年 
出所 平成30年の簡易生命表

図3の茶色の折れ線(①)は、妻がパートタイム勤務を行わず。夫も60歳定年後、勤務を継続しなかった場合の金融資産残高の推移です。60歳時点の金融資産は、63歳になる前に底をつき、65歳時点の平均余命から算出した女性の平均寿命である90歳時点では金融資産残高はマイナス20百万円となってしまいます。

次に、夫が60歳の定年退職前に妻が厚生年金に加入し月額賃金10万円で10年間パートタイム勤務をした場合の金融資産残高を青色の折れ線(②)で示します。①の場合に比べ、60歳時点の金融資産残高が妻のパートタイム勤務の手取り収入分だけ増加するため、90歳時点で金融資産残高はマイナス10百万円まで改善します。

②の条件に加え夫が60歳から64歳迄勤務を継続した場合の金融資産残高を緑色の折れ線(③)で、また、③の条件に加え妻も60歳から64歳迄 月額10万円でパートタイム勤務する場合の金融資産残高を紫色の折れ線(④)で示します。

90歳時点の金融資産残高は、③はプラス10百万円、④はプラス17百万円となり、その分、何かあった場合でも対応が可能な老後生活となることが分かります。

総務省の労働力調査によれば、2019年の就業率は60歳から64歳の年齢階級で男性は8割強、女性は6割弱に対し、65歳から69歳も男性で6割弱、女性で4割弱で、就業率は年々増加しています。

年金制度改革関連法では、短時間労働者への厚生年金適応拡大に加え、公的年金の受給開始年齢の選択肢の75歳への拡大、在職老齢年金制度での64歳迄の収入基準額(月額)の47万円への引上げ、確定拠出年金の加入上限年齢の引上げ(個人型は60歳未満から65歳未満へ、企業型は65歳未満から70歳未満へ)等、長寿時代の中で長く働くことを支援する選択肢が広がっています。

厚生労働者の想定するモデル世帯(会社員)について妻が働くことに加え夫も長く働くことが老後の資産形成に効果的であることを見てきましたが、これらの制度をうまく活用しながら長く働くことの効果は、自営業等モデル世帯以外にも当てはまります。

                           CFP 岩船康則

アフターコロナを見据えての株式投資

新型コロナウイルスの世界経済への影響はリーマンショックの比ではなく、
1929年の世界恐慌に匹敵するとみられてます。
当時の株式市場は米国の株価指標でみると恐慌前の水準に戻るまで25年かかってます。
ただし、当時に比較して今回は大規模な金融緩和などもあり、株価の戻りも早いとみられます。
また、このような状況の後には社会構造がそのまま元に戻るのではなく、大きく変化しています。

今回のコロナショックでも新しい社会構造、生活様式が生まれると思います。 5月4日に厚労省より新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえた、 「新しい生活様式」が提言されました。

その提言のひとつである働き方の新しいスタイルとして、テレワークやオンライン会議があり、 既に実践されている会社も多数みられます。

このテレワークというスタイルは新型コロナ終息後も継続して採用される可能性が高いと思います。

友達が働いている会社では、テレワークそのものの環境があったのですが、
実際には少人数での対応を想定した設備環境などだったりで、 いざ、全社的に動かしてみると、当初は通信速度など支障をきたしているとのことで設備増強をしたとの声も聞きました。
現在の状況では、週に1回会社に出社して、その他は在宅で勤務とかもよくある例だと思います。
そのような働き方が新型コロナ終息後も通常の仕事スタイルとなっている可能性が高いです。

また今のテレワーク環境はとりあえずということで、セキュリティ面からは万全ではないということも言われてます。

今回緊急事態宣言解除となったあとにも、第2波、第3波が訪れるの可能性も高とも予想されており、 会社及び自宅でのネット環境をより良くしておくことが求められると思われます。

このような環境下では、オンラインによる仕事を支援するような企業の伸びが期待出来ます。
関連銘柄にはいろいろあると思いますが、今回のブログでは私が一番注目している会社についてご紹介したいと思います。

それは 銘柄コード3774 「インターネットイニシアティブ」(略称 IIJ)という会社です。
この会社は日本で最初にインターネットを商用化した会社です。
会社紹介ページによるとIIJのサービスは現在、大手企業や官公庁を中心に約12,000社の法人に導入されており、 各業界のトップ10企業に対するサービスの浸透率は、80%以上とのことです。
個人向けサービスではスマホのSIMフリーの事業で個人向けインターネットサービス「IIJmio」というものをやってますが、 会社全体としては売上の8割以上が企業向けサービスですので、名前を知らない人も多いかもしれません。
そこは、逆に投資のチャンスであるとも言えます。

先月、会社より下記のような発表がありました。
2020年4月23日のプレスリリースより抜粋
特に2018年12月に提供を開始したIIJフレックスモビリティサービスには、
高い通信品質で快適にテレワークしたいというニーズが強く、 2020年4月20日時点の契約デバイス数累計は5万台超と、 2月末時点と比較しておよそ2.5倍となっています。3月にお申し込みいただいたデバイス数は、 前月までの月平均の申し込み数と比較して約9倍に増えるなど、 お客様の急激な需要の増加が顕著にあらわれています(図1)。
同時にIIJフレックスモビリティサービス トラフィックも、2月後半から、3月、4月と、 倍増するペースでピークが増えており、企業におけるテレワークの導入が急速に進んでいると推測されます(図2)。
https://www.iij.ad.jp/news/pressrelease/2020/pdf/ras.pdf

興味がある方は、是非会社のホームページを見てみてください。
https://www.iij.ad.jp/ir/
くれぐれも実際の投資は自己責任でお願いします。

                           CFP 磯野正美

『パパ休暇』と『育児休業社会保険料免除制度』を利用しよう!

『イクメン』という言葉が聞かれる今日この頃ですが、実態はどうなのかなと調べたところ、
◆「男性の育児休業取得率は低く、取得期間は短い」ことがわかりました

厚生労働省【2018年度雇用均等基本調査】によると、

休業を取得した男性の比率は6.16%で1996年以来最高になったとはいえ、女性の取得率82.2%に比べれば断然低く、2020年に男性の育児休業取得率を13%にするという政府目標には遠く及ばない状況です。

育児休業の取得期間については、女性は9割近くが、6か月以上となっている一方、男性は「5日未満」が36.3%と最も高く、次いで「5 日~2週間未満」 35.1%となっており、2週間未満が7割を超えているのが実態です。(下グラフ参照)

要因としては、

・大企業では、ある程度浸透してきているとはいうものの、大多数の企業では、育休制度が整備されておらず、認知度が低い。

・男性が育児休暇を取りやすい職場環境づくりが不足(人員不足、パタハラ)

・家庭環境でも、男女共働きが増えているが、男性の所得が多いのが一般的。

育児休業給付金で生活費補償がされるとはいえ、月収の5~7割程度(上限あり)で、経済的に厳しい等・・・
が挙げられます。

厚生労働省【2018年度雇用均等調査】より

◆そんなパパさんに是非おススメしたいのが、≪パパ休暇≫と≪育児休業保険料免除制度≫です。

≪パパ 休暇≫を利用すると、育児休業を2回に分けて取得することができ、合わせて≪育児休業保険料免除制度≫をうまく活用することで、1日の育児休業を2回取得しただけで、社会保険料を最大2ヶ月分(月給の約14%×2)と賞与分を節約することが可能になります。                

その具体的なポイントをご紹介しますので、本制度を上手く活用して下さい。

パパ休暇とは?

◆男性の育児休業取得率を向上させるための制度で、家庭の事情などに応じて柔軟な育児休業取得ができるように創設されました。(2009年改正、2010年6月施行)

(労働局 制度のリーフレットより)

育児休業保険料免除制度とは?

◆事業主に「育児休業等取得者申出書」を申請することによって、育児休業をしている間の社会保険料が免除される制度です。

≪免除される期間・条件≫

・免除される期間は、育児休業開始日の属する月から終了日の翌日(=復帰日)が属する月の前月まで。

 ⇒ 条件は、育児休業の開始日と復帰日が月末を挟んでいることです。 *下図をご参照ください。

・社会保険料(健康保険・厚生年金)は1ヶ月単位で計算されるため、保険料の免除も1ヶ月単位で行われます。

≪補足≫

・給与だけでなく賞与にも適用されます。

・免除期間中も被保険者資格に変更はなく、年金額の計算においては保険料が免除となった期間も「保険料を納めた期間」として扱われ、健康保険についても通常通りの給付を受けられます。

手続き等詳細は、下記「日本年金機構」のページをご参照ください。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/menjo/20140327-06.html

では、具体的に例をあげてみます。

以下の例は、本制度を詳しく理解するためわずか1日の休暇を2回取得するだけでも社会保険料が2か月分免除される特殊な例です。


(イクメンプロジェクト イラスト↑)

ポイント!

★月末を含んで育休を取得する!

★育休を取るなら賞与月の月末を含む!

上記の例では、育児休業を取得しても、2日の育児休業取得による給料の減額だったため、結果的に手取り額が増えました。

通常、育児休業中は、給料が支払われないので、パパさんが長く育児休業を取得した場合、社会保険料が免除されてもそれ以上に収入減になることもあります。その収入減を一部補填してくれるのが、雇用保険から支給される「育児休業給付金」です。(*受給するためには、資格要件、受給要件があります。ブログ末に補足を掲載)

育児休業給付金は、課税されないので、上記で説明した「育児休業保険料免除制度」と併用すれば、収入減を1割超程度に抑えることが可能となります。

パパが育児休業を積極的に取得することで、産後のママを心身ともにサポートでき、生まれたばかりの子どもと過ごす時間も増えるという期間限定の最大のメリットもあります。 また、育休体験は、その後の人生においても大きなプラス効果があることがコメントされています。

育児休業を支援する制度をうまく活用して、仕事と子育てを両立させてください。

★仕事と子育て両立パパを応援するガイドブックを厚生労働省HPからダウンロードできます。    

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/09.html

*【育児休業給付金】

 ≪育児休業給付金の受給資格要件:申し出時点≫

① 同一の事業主による連続した1年以上の雇用保険加入期間があること。

② 子 が1歳6か月になるまでに労働契約期間が満了する予定がなく、雇用契約が更新される見込みであること。

③1週間に3日以上勤務していること。       

≪育児休業給付金の受給条件≫  ※育児給付金は非課税です。

【1】雇用保険に加入していること

【2】育児休業前の2年間のうち、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること

【3】育児休業中に、勤務先から1ヵ月に休業前の8割以上の給料が支払われていないこと

【4】休業日数が対象期間中に毎月20日以上あること(※終了日を含む月の場合、1日でも休業日があれば可)

育休中の就業日数が1か月のうち10日以内もしくは80時間以下

【5】育児休業後に働く意思があること

育休中にもらえる給付金の金額は、基本的には「休業開始時の賃金日額×支給日数×67%(6カ月経過後は50%)」で算出されますが、勤務先から賃金の支給がある場合は金額によって割合が変わります。

*2019.8.1現在

育児開始から180日まで   ・・・月給×67%  (上限:304,314円)

181日目~育休最終日まで ・・・月給×50%  (上限:227,100円)

・育児休業給付Q&A (厚労省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html

                      CFP 石黒 貴子

40年ぶりの相続法改正!来月から施行される「配偶者居住権」って?

「配偶者居住権の創設」が令和2年(2020年)4月に施行されます。相続法の改正は、昭和55年(1980年)以来の事です。

■̻相続法改正の経緯

事の発端は、法案成立からさかのぼる事5年、平成25年(2013年)9月に最高裁が、民法900条4号のただし書き、即ち非嫡出子※1の相続分が嫡出子(と同等ではなく)の2分の1であるとした記述、は違憲であると決定した事でした。

これを受けて、同年12月に民法が改正され、違憲のただし書き部分は削除され、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分と同等となりました。しかし、この民法改正が及ぼす社会的影響や配偶者保護の観点から相続法制の見直しが必要となったのです。その後議論を重ねて、平成30年(2018年)7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律案」が可決・成立されました。これが今回の相続法改正です。平成31年(2019年)1月13日から段階的に施行されています。

 (※1「非嫡出子(嫡出でない子)」とは法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のこと。いわゆる「未婚の母」のほか、婚姻届けを出していない事実婚の夫婦の子も含みます。)

詳しくは「法務省/相続税法の改正」

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/explanation/pdf/p0492-0509.pdf 

■相続法改正の主な内容

  1. 配偶者居住権の創設-令和2年(2020年)4月1日施行
  2. 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置-令和1年(2019年)7月1日施行
  3. 預貯金の仮払い制度の創設-令和1年(2019年) 7月1日施行
  4. 自筆証書遺言の方式緩和-平成31年(2019年)1月13日施行
  5. 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設-令和2年(2020年)7月1日施行
  6. 遺留分制度の見直し-令和1年(2019年)7月1日施行
  7. 特別の寄与の制度の創設-令和1年(2019年)7月1日施行

■配偶者居住権とは

「配偶者が相続開始時に居住していた建物(亡くなった配偶者所有)を、残された配偶者の生存中は(または一定期間)無償で居住できる権利」です。

出典:政府広報オンラインhttps://www.gov-online.go.jp/useful/article/201809/1.html

【改正前】

相続開始後の配偶者の居住の権利を保証する規定はなく、高齢になった配偶者が、自宅所有者である配偶者の死亡により居住場所をなくすおそれがありました。

また、金融資産が少ない場合、配偶者が自宅所有権を遺産分割で取得すると、他の資産(金融資産等)をもらえなくなることもありました。

上の図のように、遺産総額5,000万円の場合、妻の法定相続分が2分の1、2,500万円ですから、自宅(2,000万円)を受け取ると、自動的に預貯金の相続分は500万円。妻の余命や資産状況、親子関係によっては、今後の生活に向けて不安が残ります。現金を得るために自宅を売却しても、高齢での新居探しに苦労することも少なくありません。

【改正後】

建物についての権利を、「負担付き所有権」と「配偶者居住権」に分けることができるようになりました。配偶者が「配偶者居住権」を、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することで、妻は配偶者居住権と預貯金1,500万円(配偶者居住権1,000万円の場合)を受け取れますから、住まいも生活費も確保され安心です。

■配偶者居住権のメリットとデメリット

〇メリット

・以前からその自宅に住んでいた配偶者であれば、生きている間ずっと住み続けられます。遺産分割協議等により、配偶者の居住期間を定めることも可能です。

・残された配偶者は自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できます。

・残された配偶者が亡くなった時、「配偶者居住権」に相続税は課税されず、「負担付き所有権」を持つ所有者は相続税の負担なく自宅を完全に所有できることになります。

【ここがポイント】残された配偶者が亡くなった場合、配偶者居住権は消滅します。権利の消滅であり、自宅所有者の相続発生とはならないため、相続税は課税されません。ケースによっては、相続税対策の手段の1つにもなります。

▲デメリット

・居住権を第三者に譲渡することはできません。

・建物を第三者に貸すことや売却はできません。

【ここがポイント】将来、老人ホームに入居したい等心境や状況の変化がおこった場合、勝手に売却することはできない事は留意点です。

■配偶者居住権の設定

 遺言・遺産分割協議・家庭裁判所の決定のいずれかによって成立します。その際、配偶者居住権を不動産登記する必要があります。配偶者居住権の評価方法は、自宅にあとどれくらい住む事ができるかを考慮し、建物・土地の評価額・建物の耐用年数・残された配偶者の余命等から算出します。配偶者居住権について遺言に記す場合など、事前に専門家にご相談の上、内容をよく理解して進めることが大切です。

■まとめ

 この40年間、高齢化が急速に進み、要介護の高齢者や高齢での再婚者も増加しました。家族の在り方に関する国民意識の変化や、相続を取り巻く様々な問題に対応する事を目的とした改正ですが、特に残された人の生活を守る傾向が強くなっています。多様化する家族の形、残された家族の関係が円満なケースばかりではない社会を映しているとも言えるでしょうか…。

 最後に、この相続法改正と同じ平成30年に、内閣府が全国の60歳以上の男女3,000人に行なった「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」を紹介します。「身体が虚弱化した時に住みたい住宅は」という何とも身につまされる質問についての回答です。

自宅にずっと住み続けたいという方が多いですね。

皆様ご自身はいかがでしょうか?そして親御さまは?                        

将来の事、相続の事など、ご家族で話すきっかけにして頂ければ幸いです。

2020年3月

AFP 依田いずみ

「老後資金・2千万円問題」を考える

『老後資金・2千万円問題』と聞いて、「ああ、あの事か」と頭に浮かぶ方は多いだろう。

2019年6月3日に、金融庁の「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」(以下、報告書と記す)に記載されている「老後の資金は、2千万円不足する」と言う文言に、世間が大炎上した一件である。

報告書発表時は、出来栄えに胸を張っていた麻生太郎・金融担当大臣が、各方面の批判から、6月11日には一転して正式報告書としては受理しないこととなった。
既に8か月前の出来事であり、発表当時種々のマスコミでも取り上げられているが、今一度報告書の内容を読み返してみた。

報告書は金融庁のホームページに、今でも掲載されているので、興味のある方はご一読ください。https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base.html

(金融庁ホームページトップ⇒金融制度等(審議会・研究会等)⇒金融審議会⇒答申・報告書等)

この報告書は、①報告書本体、②資料、③概要の3つから成り立ち、全部で56ページ有る。さらに別紙と参考資料が各1部付随されている。

ワーキング・グループは20数名から構成され、大学教授・新聞等のマスコミ関係者、金融会社、FPと多彩な顔ぶれである。

1) 報 告書概要

少し長くなるが、報告書の概要を以下に述べる。

報告書は3つの部分:

1.現状整理(高齢社会と取り巻く環境変化)

2.基本的な視点及び考え方

3.考えられる対応 

から成る構成である。それぞれの内容を要約すると:

1.現状整理(高齢社会と取り巻く環境変化)

この章では、高齢化社会に向かい:

①  健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されない期間)と平均余命の間の期間の、金銭面での対応の必要性。

② 単身世帯の増加や認知症の増加による、今まで標準と考えられてきたモデル ケースの急激な変化

と言う環境変化の側面を論じ、次に:

③ 景気停滞による賃金の伸び悩みや退職金額の減少による、高齢世帯の収入低下

④ 高齢者の就労継続

から、収入の減少はあるものの、依然シニア層の金融資産保有率は若年層よりは高くなっていることを指摘している。

老後の生活で年金収入から不足する分、金融資産を取り崩さざるを得ないのが現実だが、一方で資産寿命を延ばすためには運用(投資)が必要と思っていても、いざ投資をするとなるとなかなか実行できず、意識と行動の乖離がある。

2.基本的な視点及び考え方

この章では1章で論じた、取り巻く環境の変化を踏まえて、備えるべきこととして:

① 自分のライフプランを見つめ直し、自分自身の状況(収入・支出・保有財産等)を『見える化』することが重要。

② 年金金額の減少も視野に入れつつ、年金収入から不足する金額の充填を考えなければならない。それには、資産寿命を延ばす必要がある。

③ 併せて、認知症罹患リスクも考える必要がある。

3.考えられる対応

個人および金融サービス側についての必要な対応を述べている。

① 個人については、各人生ステージに対して、資産寿命を延ばすために備えるために知っておくべき対応の助言を行い。

② 金融サービス側へは、顧客サポートを顧客の年齢層別に提言している。
基本は『顧客本位』であること。

③ 資産寿命延長のための環境整備として、つみたてNISAやiDeco*1の更なる普及と改善を提言している。また若年層の金融リテラシー向上のための施策や高齢顧客保護にも触れている。

この報告書自体、何らおかしいことは言っておらず、極々真っ当な内容である。

特に1章・2章はFPが、顧客にライフプランの相談に乗る際の『定石』とも言える論法だ。それでは、何故炎上したのかを考えてみたい。

2)なぜ炎上したのか?

「30年で約2,000万円の(貯蓄の)取崩しが必要となる。」(1.現状整理 (3)金融資産の保有状況の項に記載)の一文が、やはり読者に一撃を与えたと想像される。

一方、2,000万円の貯蓄の取り崩しが必要となる根拠は、理路整然としている。

曰く:

・リタイヤ後の収入と支出の差額(赤字額)は月に平均約54,520円(年額で約65万円)である。

                 ↓

・リタイヤを60歳として、90歳まで生きるとして30年間に赤字額は、
65万円/年×30年=1,950万円(約2,000万円)

                 ↓

・よって30年で約2,000万円の貯蓄の取り崩しが必要。

3)平均値の錯覚

「2,000万円問題」が世間で炎上した際、月に約5万4千円不足するという根拠について指摘されることが多かった。

不足する5万円の根拠は、報告書の10ページに載っている『第21回市場ワーキング・グループ(厚生労働省)』からの引用図である。(なぜか、この図は非常に見難い)

高齢夫婦無職世帯(元サラリーマンの夫と専業主婦の妻)の収入は、主に年金収入で209,198円。それに対し支出は、263,718円。

差し引き263,718円 - 209,198円= 54,520円の赤字。

つまり貯蓄を取り崩すことになる。とここまでは、単なる計算式。

問題は、収入と支出の出所で、元ネタは総務省の家計調査(2017年)とある。

さらに元ネタに遡ると、調査対象の平均値を用いている。

この平均値が、実は曲者なのである。

一見すると、平均値は全体の真ん中を表していると思われがちだが、統計の内容によっては『真ん中の値』を必ずしも表していない場合がある。

統計学には、分布の単純平均である平均値と、分布の真ん中を示す中央値がある。

下の図のように、対象とする分布が左右対称である場合(正規分布)には、平均値と中央値は一致するが、非対称の分布では平均値と中央値は乖離する。

世帯収入や貯蓄額の分布は、左右非対称となるようだ。(少数の富裕層が平均値を押し上げるのが、世の中の習わし)

実例として、下図は二人以上世帯の金融財産保有状況である。

2019年の金融財産の平均値は、1,139万円に対し、中央値は419万円と倍以上の開きがある。本質的に、人それぞれで異なる収入や支出を一つの平均値で語ったところに無理があった。(報告書の中の高齢夫婦無職世帯の支出でも、持ち家を前提にしている。 借家だった場合は更に支出は増えることになる。)

4)年金は「100年安心」?

それでは、平均値を使って計算したことが問題の本質なのであろうか?

2,000万円ではなく、1,000万円不足すると言えば炎上しなかったのか?

以下は、筆者の個人的見解として聞いていただきたい。

2,004年の公的年金制度改革の際に、連合政権下の公明党所属の坂口厚生労働大臣(当時)が「年金百年安心プラン」を提唱した。

現在の年金制度は、現役世代から徴収した保険料でリタイヤした世代を支える、言わば「仕送り方式」(正式には賦課方式)である。

少子高齢化で現役世代が減少し、反対に年金をもらうリタイヤ世代の数も年金を受け取る年数も増加すれば、当然年金制度の維持は苦しくなってゆく。*2

その点を野党に突かれた安倍首相は、昨年6月の参議院決算委員会で「マクロ経済スライドにより、百年安心の制度ができた」と訴えた。

マクロ経済スライドとは、年金加入者(現役世代)の減少や平均寿命の延び、および社会の経済状況を考慮し、年金の給付金額をカットする制度のことだから、年金制度を維持する代わりに、給付額は減らすと言っているも同じである。

現に、安倍首相も「100年安心は仕組みとして確保する」と国会で強調した。

すなわち裏を返せば、年金制度は継続可能だが中味(支給額や支給開始年齢)は変わる可能性があると言っている。

一方、「百年安心な年金制度」と聞いた一般国民は、年金制度の持続性に安心すると共に、年金さえあれば老後の生活は安心だと勘違いしたのでは無いだろうか。

と言っては言い過ぎであれば、薄々老後の生活には具体的な金額のイメージは無いまま、年金以外の蓄えが必要だと思っていたところに、年金制度は安心だと言われて、老後の蓄えの必要性が心の隅に押しやられてしまったのかも知れない。

そんな中で、報告書が老後の資金は2千万円不足すると具体的な金額(しかも決して少額ではない)を、さも当たり前のように記載したため、炎上したのだろう。

ただ、炎上したおかげ(?)で、老後の資金に対して世間の目が向いたことも事実で ある。実際、報告書発表後に個人型確定拠出年金(iDeco)の口座開設数が増加したそうである。

これを契機に、自分の老後の資金計画を振り返ってみてはどうだろう。

誰が何と計算しようが、自分の老後資金計画は自分で立てなければならない。

収入に合わせた支出(生活)が必要で、収入より支出が多くなれば、蓄えを取り崩すことは必然である。

蓄えが底を突いてから、慌てることがないように、前もって老後の計画を立てておくことが肝要だ。

新型コロナウィルスについて「正しく恐れる」必要があるのと同様に、老後資金については「正しく心配する」ことが必要だ。FPのアドバイスを受けるのも一つの方法で ある。

*1 iDeco :個人型確定拠出年金

*2 実際は年金資金の半分は税金(公庫)で賄われてるが、苦しいことに変わりはない。

                              AFP 前川敏郎

空き家問題と住宅確保要配慮者問題は一体のものではないか?    ~住宅セーフティネット制度とFPの関わりについて~

「空き家問題」の現状

 近年の住宅・不動産関係のセミナーのテーマによく取り上げられるテーマに「空き家問題」がある。曰く、総務省が令和元年9月に発表した「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、国内の総住宅数に占める空き家の比率は13.6%(過去最高)に達し、その実数は5年前と比較して約29万戸増加した。(空き家全体では総数約900万戸弱)この内、特に留意したいのは最も多いのが相続対策等の理由で慢性的に供給過剰状態の賃貸用でその数462万戸にもなるという。そして不思議なのはこれだけ空き家があるのになぜか毎年賃貸用新築アパート・マンションが建設されてゆく現実を見るときである。そこにはハウスメーカー等の営業努力?があるのだろうが、ここにきてようやく駅から10~15分以内の物件でなければ入居者は見つからないし、資産的価値も乏しいことが地主層にも理解されつつあるように感じる。

 空き家問題でここにきて注目されているもう1つの問題に「特定空家」(代表的例にごみ屋敷等)に代表される募集も賃貸もされず放置されている住宅の増加がある。その数2018年で349万戸、10年前と比べると約80万戸も増加している。その代表的発生例は地方に暮らす親が亡くなり空き家になったが子供たちは都会に出て既に自宅を保有しており実家は当面そのままになっているケースが考えられる。

一方で「住宅確保要配慮者」が住宅を求めている

 これだけ空き家が増えて地主・自治体・住民等が困っているというのにこの国には住みたくても住宅がない・貸してもらえない多くの人々が存在する。その人々が「住宅確保要配慮者」だ。

「住宅確保要配慮者」;高齢者、低額所得者、被災者(発災から3年以内)、子育て世帯、外国人等

 高齢者が孤独死・トラブル等を恐れる貸主から入居を断られるケースや意外に?に若くても子育て世帯で子供が騒いでうるさい等の理由で賃貸住宅オーナーから避けられるという話もよく聞く。

 しかしわが国ではこの問題に対しては既に対策がなされている。それが「住宅セーフティネット制度」である。2017年からスタートした新しい住宅セーフティネット制度では住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録し、都道府県等がその情報を提供する。更に登録した住宅には改修を支援したり、入居者には家賃等を補助する経済的支援もすることになっている。

残念な登録状況

 では住宅をめぐる諸問題を解決するこの制度の利用状況はどうだろうか?「セーフティネット住宅情報提供システム」で登録されている住宅を検索すると全国にこの住宅は3,580件

(2018年8月時点)しかない!また都道府県によるばらつきが大きく登録件数0件の県さえある。

だが新しくなった住宅セーフティネット制度を知っているという人の割合はある住宅関連誌の調査では約67%に上っている。

 理由を推察するに“入居を拒めない”という点がオーナーの理解が得られない最大のものであろうし、制度が改正されてまだ時間が経っていない(周知されない)ことも登録が進まない理由と思われる。

FPとしてどうかかわるか

 我々FPの役割としてはまず我が国の住宅関連の問題を知り、住宅セーフティネット制度等の知識を深めて相談者にアドバイス出来るようにすると共にいざ相談があった時に専門家を紹介出来るように日頃から弁護士・司法書士・あるいは地元の不動産業者等のネットワークを築いておくことだろう。相談者と専門家・行政・業者等を繋ぐ中間にいるFPだからこそ出来ることは多いのではないか。空き家問題と住宅確保要配慮者の存在や住宅セーフティネット制度の問題を別々の問題ではなく住宅関連の問題として一体的に把握してゆく必要があろうし、FPこそこのような視点を持てる職種ではないだろうか。このような視点を持ち・動きをすることでFPへの認識も更に固まってゆくと思う。

                              CFP 重田 勉

「民事信託(家族信託)」って言葉がよく聞かれるわけ

先日、民事信託(家族信託)の勉強会に出席してきました。

2~3年ぐらい前からFPの勉強会でも行われるようになってきましたが、何度参加しても難しく、今回もやはり難しかったです。(これは苦手な法律だから?そもそも財産家でないのでピンとこない?苦笑)

ただ、長寿化が年々進行し「人生100年時代」と呼ばれるかつてない高齢社会を迎えようとしている今、特に認知症は2025年には700万人(65歳以上の4人に1人)になるだろうと予測されているだけに、民事信託がさらに増えていくだろうことは理解できました。

ご存知のように認知症になってしまってからは、その人の財産を勝手に他人が管理できません。家庭裁判所から法定後見人がつけられ、亡くなるまで後見人に毎月数万円報酬を払い続ける必要があるため、家族としてはその前に手を打ちたいと言うのが本音と思います。

しかも法定後見制度では、成年被後見人(本人)の資産を維持することが原則な為、資産を有効活用することはできません。そこで民事信託です。

遺言は本人が亡くなって効力が発生しますが、民事信託は生きているうちの遺言書のようなもので、「自分が認知症や介護状態になったら、家を売って自分を介護施設に入れて欲しい」とすることもできます。

民事信託は委託者(本人)と受託者(例:息子)の契約なので、「今日から信託契約を結びます」としたらそこから契約発生です。この時受益者は本人とします。(本人が亡くなった後は娘にすると一文付け加えることも可能)ただし後々兄弟妹でもめないように公正証書を作成しておいた方が安心で、不動産の場合名義を受託者に変えるため登記費用もかかりますが、数万円で済むのは大変有効と思われます。

民事信託に対して商事信託(民間の信託銀行などが行っているもの)は、障がいのあるお子様がいる場合有効とのことでした。ここでは委託者(本人)受託者(信託銀行)受益者(障がいの子)となります。贈与税の非課税制度があり、特別障害者である特定障害者は6000万円、特別障害者以外の特定障害者は3000万円です。民事信託は営利目的なので、契約時点で数%の手数料がかかる場合もあるようです。詳細は信託協会加盟店へご確認ください。

出典:信託協会

                            CFP 佐藤 広子

「えっ! パートでも、教育訓練給付金が?」

 日本人は元来 お勉強が大好き。このブログを読まれているあなたもきっとそうでしょう。自己研鑽に意欲を燃やしているあなたに朗報です。国は、リカレント教育の推進を図るべく、今年 教育訓練給付制度を充実拡大しました。

 リカレント教育とは、社会人となった後でも、教育機関で再び学べるシステムのことです。

毎月、毎月、お給料から控除されている「雇用保険料」。控除額が小さいので見落としがちですが、ありがたく頼もしい社会保険です。もしかして、この保険は職を無くした時だけに支給される「失業保険」だと思っていませんか?いえいえ、自己啓発のための経済的な手助けもしてくれるんです。何かというと、それはスキルアップのための講座費用の一部補助です。これが教育訓練給付制度です。

 しかし、誰でもどの講座にも支給されるものではありません。対象者は雇用保険料を納めている人(被保険者)また納めていた人であり、講座も厚生労働大臣の指定の教育機関でなければなりません。給付金には英会話やパソコンスクール、通信教育など比較的に手軽に受講できる訓練に対する一般教育訓練給付金と看護師、美容師、調理師など専門性が高く長期間となる訓練に対する専門実践教育訓練給付金があります。それぞれさらに支給要件があります。なお、10月に特定一般教育訓練給付金が増設され、専門実践教育訓練給付金は訓練前キャリアコンサルティングが必須になりました。

表中の「支給要件期間」とは受講を始める日まで、同じ事業主で雇用保険の被保険者であった期間です。つまり、雇用保険料を納めているまたは、納めていたパート勤務者、アルバイト勤務者でもOKなのです。ただし、退職された方は期間限定です。要注意です。では、具体的に活用例を紹介します。二例ともに前表の支給要件を満たしています。

支給額等は講座名、教育機関などで異なります。詳しくは、お近くのハローワークへお尋ねください。申請先もハローワークです。

また、インターネットには教育訓練給付制度 厚生労働大臣教育訓練講座検索システムもあります。

今回の教育訓練給付制度の拡大についてまとめると、

退職者に関しては、支給要件枠が大幅に緩やかになりました。また、将来 不足になると考えられる職業には、特定一般教育訓練給付金が増設されました。給付金額もそれぞれ増額されました。残念ながら我が国は少子化により 将来、人口が減少していくと予想されています。そのなか、制度の拡大は就業人口を増やし、雇用体系の量から質への充実による生産力アップが狙いです。結果、日本経済の上昇へとつながっていきます。まわりまわって、私たちは豊かな生活が送れることになります。

話が大きくなりましたが、個人的にはスキルアップで、仕事力が向上し、それに伴い収入・給料の増加が期待されます。大変喜ばしいことです。将来のライフプランが明るくなります。一石二鳥、三鳥!、四鳥?ともなるこの制度 ぜひ、活用ください。

                             CFP  楠本智子

あなたの生命保険の加入金額は適切ですか? ~キャッシュフロー表を作成し家計を見直してみましょう~

ことし6月に金融庁から「高齢社会における資産形成・管理」報告書が公表され老後2000万円問題が話題を呼びました。更に8月には厚生労働省から「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」が公表され将来の公的年金の所得給付水準(所得代替率)低下見通しが示され、老後生活に必要な資金の不足が大きな関心を集めています。

人生100年時代において、教育資金や住宅購入資金を確保しつつ、老後資金を準備してゆくには、収入を増やす事や資産運用のほかに家計の支出の見直しも重要になります。家計の支出の見直しには一度見直すと節約効果が続く固定費の削減が効果的ですが、固定費のなかで生命保険について、会社員の田中さん一家を例に必要補償額を見てゆきます。

田中家の家族構成

御主人(35歳) 会社員

奥様(35歳)  専業主婦

長女(2歳)

次女(0歳)

遺族補償に必要な金額は、世帯主の職業、家族の構成、年齢、資産状況、ライフプランにより世帯ごとに異なりますが、必要となる遺族の生活費から遺族年金等の収入を差し引き不足する分を生命保険等で準備することになります。

図1は、御主人の死亡時年齢別に必要補償額をシミュレーションした結果です。田中家の場合、35歳以降10百万円程度で推移していた必要補償額は46歳から下がり始め53歳でゼロになる結果となりました。

田中家の場合、必要補償額の内、子供二人の大学までの教育資金分が大きな割合を占めます。10月1日からの消費税引き上げに伴い「高等教育の修学支援新制度」の令和2年4月1日からの実施が決定しましたが、非課税である遺族年金以外の世帯収入が住民税非課税やそれに準ずる世帯に該当する場合、大学等の授業料等の減免及び給付型奨学金の支給が行われることになり必要補償額が大きく下がる結果となりました。

生命保険文化センターによる「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、世帯主の普通死亡保険金額の平均値は、35歳から44歳迄が21百万円から22百万円程度、45歳から54歳迄は20百万円弱となっています。算出の条件が異なるものの、生命保険文化ンターの調査結果と田中家と比較すると大きな差が出る結果となりました。

本ブログの読者の皆様が契約している生命保険の普通死亡保障額が田中家のミュレーション結果の金額と異なる様であれば、田中家の家計の条件と比較しながら、必要補償額の見直しが必要になる可能性があります。

図2は、世帯主が35歳で死亡した場合について配偶者が88歳(35歳時の女性の平均余命から算出た寿命)になるまでの金融資産残高の推移です。

次に、医療保険について見てゆきます。

生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、民間保険加入世帯における医療保険・医療特約の世帯加入率は約9割と公的医療保険制度がある中で、高い比率です。

医療保険に加入する目的は、高額な医療費や収入減少への備えですが、生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査」によれば、過去5年間で入院経験のある人の割合は1割強、直近の入院時の平均入院日数は約19日で逸失収入があった割合は約2割です。また、直近の入院時の自己負担費用と逸失収入の合計額の平均は27万円です。

民間の医療保険は、公的医療保険制度では全額自己負担となる先進医療もカバーされ安心を得ることが可能ですが、高額医療費制度や傷病手当金制度(会社員や公務員)がある中、医療保険の加入は預貯金額を含め家計の状況と保険料のバランスを考えることが重要となります。保険料が家計の大きな負担となっていれば見直しが必要になります。

図3は、前出の「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」による生命保険(個人年金保険を含む)世帯主年齢別世帯年間払込保険料です。生命保険加入の目的は各年代で異なるものの、30歳代以降80歳代までは世帯全体で年間30万円弱から50万円弱の保険料が払い込まれています。

生命保険の必要補償額の算出や医療保険額の家計とのバランスを検討するには、 家計のキャッシュフロー表を作成してみる必要があります。

キャッシュフロー表とは、中長期の家計の収入、支出、貯蓄残高の推移を一覧にしたものです。生命保険の必要補償額や医療保険額の検討のほか、マイホームの購入、子供の教育、老後の生活など将来までの家計の変化をキャッシュフロー表によりチェックすることで、このままでも家計の目標がかなうのか、収入の増加、支出の見直し、金融資産の運用など家計の改善が必要になるかが視えてきます。

図4は、田中家の家計のキャッシュフローのシミュレーション結果です。御主人に万一のことがない場合です。

田中家の場合、二人の子供の大学までの教育費を賄っても60歳になるまでの金融資産残高は22百万円程度となる結果となりました。

最近老後2000万円問題が話題になっていますが老後に必要な金額は各家庭の家計状況により異なります。現在の金融資産残高で老後生活は大丈夫か、不足する場合の対策等お迷いでしたらお近くのファイナンシャル・プランナーにご相談ください。キャッシュフロー表を見ながら一緒に考えてみましょう。

日本FP協会神奈川支部主催の「FPの日FPフォーラム2019」が11月3日(日)に横浜ランドマークタワーで開催されます。無料セミナー、無料体験相談会の他ワークショップも行われ、その中でキャッシュフロー表の作り方をファイナンシャル・プランナーとともに学んでゆきます。ぜひご参加ください。

事前登録URL:

https://www.jafp.or.jp/shibu/kanagawa/seikatsu/seminar/detail/kanagawa/17

                             CFP 岩船康則

100年定期預金と債券バブル

 先日、ラジオ日経の「ご意見伺います」というアンケートで「100年債に興味がありますか?」 というのがありました。

 世界的な金利低下を受けて、国家や企業では、償還期間が今まで以上に長い「超超長期債」(?)の発行を検討、あるいは現実化させており、米国でも100年債の発行を検討しているとの報道もあったことがアンケートの背景でした。 アンケートの結果は回答者の8割の人が興味なし という結果でした。

 確かに100年後どうなっているかわかりませんから当然のような気もします。 そのアンケートコメントのなかに「100年定期と何が違うの?・・・」とかいう話もあり、 100年定期について調べてみました。

 100年定期で検索してみると・・・

 新潟貯蓄銀行(新潟市、現第四銀行)が1915年(大正4年)に募集した「超長期」の100年定期預金は 利率6%の複利で2015年に満期を迎えて1円が100年後に339倍となったとのことです。 当時は小学校教師の初任給が9円位とのことから、当時の1円は現在ざっくり約2万円です。それが、インフレ時代を経過し100年後2015年に339倍に増えて339円を貰っても・・・

ということで、証書を持っている人は 換金せずに記念に証書を保管しているというようなニュース

 もうひとつの100年定期は、さらに古くて明治33年に「1円」の価格で発行されたもの。長野県・茅野市役所にその証書が保管されているそうです。その証書は100年で、元金が1万倍になるという年利9.75%(複利)高利率です。 明治33年の警察官の初任給も9円位なので、こちらの場合も、当時の1円は現在価値だと約2万円、それが100年後に1万円として戻ってきたことになります。

ということで、どちらも物価上昇に追いついてないという結果でした。

 それじゃ、金(ゴールド)を買っていたらどうか? 日本が1897年(明治30年)に貨幣法を制定したとき、金(ゴールド)の値段は0.75グラム=1円でした。現在の地金価格はというと2019年09月13日現在税込買取価格は1gで5,593 円です。0.75gでは4195円です。2万で買ったものが4195円、最近金価格が上昇しているといっても、こちらもマイナスでした。 株式に投資していたら?と思い日経平均100年前を検索してみましたが、 こちらは1949年スタートということで、まだ100年経っておらず比較できませんでした。

 現在の債券市場では、満期まで持っていると、元利合計でマイナスになるという債券が債券発行残高の4分の1にも達するというような異常な事態です。このため債券バブルだという記事も多くみられます。 例えばドイツの指標10年物国債はクーポン0%で100の額面に対して2019年8月には107台で取引されていたとのこと。これは10年間利息がもらえない上に、10年後には7%元本割れとなる事が確約されている金融商品です。

 既に、2年前に100年債が発行されたオーストリアの債券価格推移が下記です。この債券価格は今年に入って右肩上がりに8割上昇しています。

 現在の取引の多くは、短期で値上がりすると見込んだ投資家が買いを入れてるから値上がりしているということのようですので、いずれはバブルが弾けると予想されますが、それがいつやってくるのかはわかりません。

 債券バブルが崩壊したあと、生き残ったマネーは割安な株式を求めてやってくるかもしれません。 株式の長期投資でその恩恵を受ける準備をしておくのもひとつの方法です。

 人生100年時代、時代の先を予測して、それにあわせた資産形成と資産寿命を考えるのが大事です。

2019年9月 CFP 磯野正美