年金は難しい! 色々話は聞くけれど・・・個々の状況によって選択

50~60代になり股関節や膝関節が悪くて手術したという人が職場やFP仲間でも複数いて、実際手術を受けた人から「障害厚生年金3級」や「障害者特例」が使えるなどアドバイスをもらったので調べてみました。

人工股関節置換術は日本国内で40年以上前から行なわれている手術です。整形外科では一般的な治療法として定着し、手術件数は年々増えており、今では年間7万例以上にも上ります。また、厚生労働省の公開データによれば、 人工 股関節置換術を受けられる患者さんの平均年齢は68歳と、比較的高齢の方が手術を受けられていることが分かります。ちなみに女性のほうが男性の1.5倍~2倍多いことが分かっています。最近では舛添要一さんや千原ジュニアさんが手術を公表していますね。

また、 人工 膝関節置換術も同じく40年以上前から行なわれている手術で、今では年間9万例以上にも上ります。またこちらも厚生労働省公開データによれば、 人工 膝関節置換術をうけられる患者さんの平均年齢は75歳と、やはり高齢な方が手術を受けられていることがわかります。男女比は1:4と圧倒的に女性に多く見られます。

さて今回紹介するのは、 人工 股関節置換術や 人工 膝関
置換術を受けた場合で、条件に当てはまれば障害厚
年金3級の請求や障害者特例が使えるが、年齢や
これまでの働き方(報酬比例の年金額)による
という話です。

(出典:日本年金機構) https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
【受給要件】

ここで書類が揃い3級が認定されたとします。すると老齢年金受給までは障害厚生年金3級が受給できます。さらにもし生年月日が、男性なら1953年4月2日から1961年4月1日、女性なら1958年4月2日から1966年4月1日の間にある人が、仕事を辞めた場合は障害者特例を使うことができます。これは65歳以降にもらう予定の老齢基礎年金と同じ額定額部分を前倒しでもらえるのです。障害者特例を使える人は限られていますので、お得な制度です。注意したいのは障害年金だと課税対象となりませんが、障害者特例の受給に関しては老齢年金と同じ扱いなので雑所得として課税対象となります。また、仕事を辞めて失業手当をもらうときは障害者特例でもらえる定額部分と併給できず、どちらか一方になります。

さて65歳からの年金の受け取り方は3種類です。

表からわかるように、障害基礎年金は1級と2級しかないため、障害厚生年金3級を受給していた人は、65歳からは「老齢基礎年金+老齢厚生年金」を受給するしかありません。

また、障害厚生年金3級を受給して、老齢基礎年金は繰り下げしようとしても残念ながらそれはできません。

このように3級の申請を頑張っても、その人の年齢や報酬比例の年金額によっては思ったほどではないと感じることも多いと思います。

年金は個々の状況によるため、本当に難しい!!

でも老後資金の大切なものなので、きちんと調べて選択しましょう。

CFP 佐藤 広子

65歳以上の共働き夫婦の遺族年金

~バリバリ共に働いたらいくらになるの?~

令和3年(2021年)の平均寿命は男性 81.47年、女性87.57年です。(参考:厚労省 令和3年簡易生命表)

夫婦二人の生活から、残念ながら一人になってしまう方はシニア世代に多いということです。

さらに平成12年(2000年)を過ぎると共働き世帯数は片働き世帯数を逆転し、令和2年(2020年)には3世帯のうち2世帯は共働きとなりました。(参考:厚労省 共働き等世帯数の年次推移表)

ということで、今回は「65歳以上の共働き夫婦」を対象とする遺族厚生年金についてお話します。

残念ながら、厚生年金の被保険者であれば、誰でも遺族厚生年金の受給者になれるとは限りません。

まずは、65歳以上の人が死亡したときの本人の遺族厚生年金の受給要件です。

  1. 老齢厚生年金の受給権者であった
  2. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた

上記のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

さらに加えて、ここが重要です、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限られます。(参考:厚労省 遺族厚生年金の受給要件から抜粋)

老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給資格期間は平成29年(2017年)8月以降、10年以上となりましたが、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給資格期間は25年のままです。ご注意ください。ご心配の人は年金事務所へ問い合わせて、確認をしましょう。25年未満でも要件を満たす短縮特例が適用される場合もあります。

つぎに、65歳以上の上記の要件を満たした遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合、配偶者の死亡による受け取る遺族厚生年金額を求める計算式です。残された配偶者の老齢厚生年金の額が影響します。

  • 「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額」
  • 「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の1/2の額と残された人の老齢厚生(退職共済)年金の額の1/2の額を合算した額」
    • と②を比較し、高い方が遺族厚生年金の額となります。

★ただし、平成19年(2007年)3月31日までは、原則、どちらを受けるか選択することとなっていましたが、平成16年(2004年)の年金制度改正により、平成19年(2007年)4月1日からは、自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

となります。残された配偶者がバリバリ働いた場合、遺族厚生年金が支給されない場合もあります。

ここに3組のご夫婦がいます。共通条件は下記のとおりです。

夫婦ともに65歳以上で公的年金だけが収入源である。

夫がある日亡くなりました。

亡くなった夫は25年以上の厚生年金の加入者で、老齢厚生年金は120万円。

老齢基礎年金は各人、78万円である。

3組のご夫婦は、残された配偶者の老齢厚生年金の受給額で次のように分かれます。

★Aさん夫婦 妻は配偶者の扶養の範囲内で、60歳までパート勤めをしていた。妻には老齢厚生年金がない。

夫が死亡。
妻には老齢厚生年金がないので、(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円が遺族厚生年金となります。妻の老齢基礎年金78万円に遺族厚生年金90万円が上乗せされ、合計で168万円の年金となります。遺族厚生年金の90万円は非課税です。

★Bさん夫婦

妻は子育て終了後、会社勤めを再開、妻の老齢厚生年金額は夫のそれより半分未満である。

夫が死亡。

(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円と(前述②の式)夫の老齢厚生年金の2/1の60万円+

妻の老齢厚生年金の1/2の15万円の75万とを比べます。大きい方の①式の90万円が遺族厚生年金となりますが、ここで前述の

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

から妻の老齢厚生年金30万円が支給され、その分の遺族厚生年金は停止され、結果、60万円の遺族厚生年金となります。合計で168万円の年金です。Aさんと同じですが、非課税の遺族厚生年金額は60万円です。

★Cさん夫婦

妻はずーと会社勤め、妻の老齢厚生年金額は夫のそれより半分以上である。

夫が死亡。

(前述①の式)夫の老齢厚生年金の3/4の90万円と(前述②の式)夫の老齢厚生年金の2/1の60万円+

妻の老齢厚生年金の1/2の50万円の110万円とを比べます。大きい方の②式の110万円が遺族厚生年金となりますが、ここで前述の

※老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止※

から妻の老齢厚生年金100万円が支給され、その分の遺族厚生年金は停止され、結果、非課税の遺族厚生年金は10万円となります。合計で188万円の年金です。

もし、妻の老齢厚生年金が夫のそれと同じまたはそれ以上の時は、遺族厚生年金は全額支給停止となります。

遺族厚生年金は支給されません。

3例ともに夫を妻に、妻を夫にと読み替えても同じになります。

65歳以上遺族年金の受給のポイントはつぎのとおり

●保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上の人が遺族厚生年金対象の必須要件である。

●残された配偶者の老齢基礎年金が必ず一階部分になる。

●残された配偶者の働き具合で、非課税の遺族厚生年金額が変わる。

●バリバリ共に働いた夫婦の遺族年金は夫婦合算の老齢年金の約半分になる。

●老齢年金の繰り下げ、繰り上げには影響しない。

あなたも上記の例を参考に試算してみてはいかがですか?

ちなみに65歳以上の単身無職世帯の消費支出は133,146円/月、年間で約160万円です。(参考:総務省 家計調査報告 家計収支編 2020年 令和2年平均結果の概要)これは、あくまでも平均値です。価値観、こだわりから望む老後のライフスタイルも人それぞれです。

ファイナンシャル・プランナーは皆さまの不安を解消し、希望のライフプランをご提案させていただきます。ご相談のお申し込みは「MENU」→「お問い合わせ」からどうぞ。

楠本智子 CFP認定者(ファイナンシャル・プランナー)

2023年8月15日

所有者不明土地とは何か

現状を認識しよう

 「所有者不明土地とは読んで字のごとく不動産登記簿で所有者の所在が確認出来ない土地」のことである。2016年の国土交通省の発表資料によると、この割合は全土地の20.1%あるとなっている。将に5件に1件が誰が所有しているかわからない土地であるということだ。

 そして、なぜそうなるかの理由では約67%が相続が理由で未登記となっているという。

今後の見通し

 もしこのままのペースで所有者不明土地が増え続けると2040年にはその面積は720万ヘクタールを超えてしまうという。これは実に北海道本土の土地面積の90%に相当する広さだという。そして、この問題を放置する経済損失は約6兆円を超えるという。(一般財団法人 国土計画協会の調査結果)

 これは所有者不明土地を国や地方自治体が有効活用するためには、所有者の捜索、相続人全員への連絡・合意を得るために多くの時間とコストがかかるためである。

土地に対する我々の意識の変化

 2021年の国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、自宅以外の土地の取得理由は「相続により取得」が68.2%となっている。それらの土地の現況は「誰も居住していない、利用していないが管理を行っている」が32.5%トップになっている。土地が未利用となっている理由では「遺産として相続したが、今のところ利用する予定がないため」という回答が57.6%にも上っている。

 取得した土地に対する意識では「草刈り等の管理作業に負担を感じている」が62,7%に上っている。その他「税金や管理費用に負担を感じている」47.5%「土地を所有・管理し続けること自体に負担を感じる」という回答多数となっている。

これをどう考えるか

 この調査結果から見えるのは、相続によって取得した土地が全てすぐ活用・売却等が出来る町中の住宅地・商業地ばかりではなく、サラリーマンだったのに田や畑を相続し困り果てるケースやその土地が駅から離れた土地で活用しにくいケース等もあるだろうという推測である。

 だからこそ、土地を所有・管理することに負担を感じながらも今まで現状を維持してきたのだろうと推測する。

発想を転換する必要が出てきた!

 2023年(今年)4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まっている。

 「相続土地国庫帰属制度」とは、「相続によって土地の所有権を取得した土地を手放して国庫に帰属されることを可能にする制度」である。

 つまりこれまで売れずに残っていた土地を国に引き取ってもらう道が出来たということ。利用していない土地を持ち続ければ固定資産税等の保有課税によって税金負担を永遠に負担し続けなければならない。年間で例え30万円であっても20年間持ち続けたなら600万円も負担したことになる。つまりもう発想を転換して使う予定のない土地は国に引き取ってもらい、固定資産税の負担から解放されようという状況になってきているということだ。

*「相続土地国庫帰属制度」の詳細については関心のある読者はここで説明すると長くなりますので法務省のHPや不動産関連のHPでご確認お願いします。

*法務省では実際にこの制度を使おうと検討している人のために「「相続土地国庫帰属制度のご案内」という小冊子を作成し、希望者に配布している。(72P,無料)この機会に自宅を管轄する法務局支局・出張所を訪ねてみるのも後学の一助になるのではないでしょうか。

2024年(来年)4月1日から相続登記が義務化される!

 更に、来年4月1日から不動産登記法が改正され、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内に登記をする」必要がでてきた。これは努力義務とかではなく罰則もある。正当な理由なく登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められることとなる。

 不動産登記法の改正点はもう1点あり、「住所変更登記の義務化」も始まる。つまり、不動産の所有者に氏名・住所の変更ある場合は2年以内に変更手続きしないと5万円以下の過料が請求されることとなる。この措置により国・地方自治体等は公共事業や収容等の事業を実施しようとする場合、速やかに不動産の所有者と連絡が付きやすくなると思われる。

 そもそも冒頭の「所有者不明土地」問題は2011年3月の東北大震災と津波からの復興事業で海沿いの被害を受けた土地から高台に移転させたり、かさ上げ工事をする中で、5件に1件が所有者不明で対応に困り果てる状況があったため10年来の課題となっていたのである。

法改正前の土地はどうなるのか?

 私はこちらのほうが大問題だと思う。新たに発生する相続よりこれまで放置されてきた未登記の相続物件のほうが断然多いはずだからだ。このブログを読んだ読者で思い当たる物件の所有者はまだ半年あるので対応準備を始めたほうが良いと思う。

救済制度はある!

 早く相続登記をしたくても不動産の遺産分割協議が難航して3年以内に登記できない場合は新設される(仮称)「相続人申告登記」を利用することが出来る。この制度は

  • 該当の登記名義人に相続が発生したこと
  • 相続人が判明していること

の申し出を行い、登記簿に記載してもらう制度。相続登記ではないが、罰金は免れる。

(分割協議の後、再度登記必要)

 以上、土地・相続に関する最近の動きを見てきたが、大きな改正もあるこのタイミングで土地を所有する意義等を見直し、要らない土地は国に還すという選択肢を検討してみる良いチャンスだと思います。

                         CFP 重田 勉

配当所得は確定申告したほうがお得か? ~令和4年度税制改正の影響について考えてみる~

 令和4年分の確定申告で上場株式等の配当所得を所得税と個人住民税について異なる課税方式で申告し住民税及び社会保険料を抑えつつ所得税の還付を受けた方もいらっしゃると思います。

  源泉徴収ありの特定口座では上場株式等の配当金は20%(所得税15%、住民税5% 復興特別所得税を除く)が源泉徴収されます。源泉徴収ありの特定口座での配当金を確定申告する際に、これまでは、所得税については総合課税を選択することで、配当控除(所得税10%*、住民税2.8%)を受け、住民税については申告不要を選択することにより配当金は国民保険料等の算定基準となる合計所得金額に含まれなくなるため保険料等の増額を抑えることが可能でした。*課税総所得金額が1000万円以下の場合
これが、令和4年度の税制改正により令和5年分の確定申告から所得税と住民税で課税方式を一致させることか決まりました。所得税及び住民税をともに申告するか、申告不要にするかのどちらかとなります。

 配当所得を他の所得と合算して総合課税で確定申告する場合は、住民税も申告することになりその分住民税(10%)や国民年金保険料が増える一方、総所得額によっては所得税の配当控除額 の方が配当控除前の所得税額を上回り、所得税、住民税、社会保険料の総額で配当所得を申告しない場合と比較して、有利になる場合があります。

 退職し年金が主な収入となり総所得金額が現役世代と比較してそれほど高くなく所得税率が低い場合、この傾向が顕著になります。年金生活に入った65歳の世帯主(配偶者は専業主婦)の家庭を例に、所得税、住民税及び社会保険料の総額の面から、世帯主が配当所得を総合課税で確定申告し配当控除を受けたほうが有利か、申告せずに源泉分離課税のままにしたほうが有利かを総所得額別に考えてみます。

1.所得税及び住民税
 所得税の税率は課税総所得額により異なりますが、各課税総所得金額に対する税率と配当控除10%(対配当額、課税総所得金額が1000万円以下の場合)を適用した後の税率が配当金に対する所得税の源泉徴収税率15%より低ければ所得税の支払額が低くなる場合があります。

 一方、住民税は所得割分の税率は課税総所得金額に無関係に一律10%です。配当金の源泉徴収税率の5%(対配当額)ですので住民税の配当控除2.8%(対配当額)を考慮しても、一般的に配当を確定申告すると住民税支払額の面では不利になります。

2.国民健康保険料(税)
 配当所得を他の所得と合算して総合課税で確定申告する場合は住民税も申告すること になり、それに伴い国民年金保険料も増額になります。国民年金保険料(税)の徴収方法等は各市町村の条例で定められており、筆者が居住する相模原市の場合、国民健康(税)は医療費分、支援金分、介護分に分かれており、各々の分は所得額に対応する所得割、被保険者数で決まる均等割、世帯ごとに必要となる平等割で構成されます。
 配当所得を総合課税で確定申告する場合に国民年金保険料(税)が増えるのは所得割の部分です。65歳以上の場合は介護分は前年度の総所得額に応じた保険料が決められています。医療費分及び支援金分の所得割額は前年度の総所得額から基礎控除額を引いた額の8.35%です。

3.配当所得を総合課税で確定申告する場合と申告不要とする場合の所得税、住民税、社会保険料(税)総額の比較

 図1~3 は、世帯主が公的年金を受給しているシニア世代の夫婦(世帯主65歳、配偶者は世帯主の扶養対象)を例に、世帯主の配当所得(上場会社の式)を総合課税で確定申告する場合と確定申告不要とした場合(源泉徴収ありの特定口座)について、総所得額別に所得税、住民税及び社会保険料(国民年金 保険料(税))の支払総額を比較したグラフです。住民税及び社会保険料(国民年金保険料(税))の計算は、筆者が居住する相模原市をベースにしています。

総所得額は下記の3ケースの収入について考えてみます。
ケース1:年金190万円+配当
     平均的な収入で40年間就業した場合に受け取れる国民年金と厚生年金の額
(出所;厚生労働省)
 ケース2:年金290万円+配当
      ケース1に企業年金の平均額100万円(出所;企業年金連合会)を加算
ケース3:年金290万円+その他の収入300万円 (所得額ベース)+配当
     ケース2に他の収入として300万円(所得額ベース)を加算

以下の説明で「所得税」は、復興特別所得税を含みます。

3.1 ケース1の場合 (図1)
1)配当を確定申告しない場合
  配当を確定申告しない場合は、所得税及び住民税は配当の源泉徴収分(配当額の各々15.315% 、5%)に年金所得に対する所得税及び住民税が加算された額になります。
年金所得に対する所得税や住民税は公的年金控除や基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除を考慮すると課税総所得はゼロになるため所得税はケース1の場合は発生しません。
配当を確定申告しない場合の所得税及び住民税は配当の源泉徴収分のみで、配当額に比例して増えています。社会保険料は配当額によらず約16万円で一定です。

2)配当を確定申告する場合
 配当を総合課税で確定申告する場合、配当額の増加に伴い年金額と合わせた総所得額も増加しますが、配当控除前の所得税額よりも配当控除額が大きいため所得額はゼロとなり所得税は発生しません。
一方、住民税は所得割分の税率が10%であり配当控除額を考慮しても住民税は配当額の増加に伴い増加しています。社会保険料も配当の増額に伴い増加しています。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較 
  所得税は、配当を確定申告する場合は配当額にかかわらずセロですが、確定申告しない場合は配当額に対し15.315%の所得税が発生し配当額の増加に比例し増えてゆきます。
一方、住民税及び社会保険料は配当を確定申告する場合は配当額の分が増加します。
配当を確定申告する場合の所得税の削減効果が大きいため、所得税、住民税及び社会保険の総額では、配当を確定申告したほうが支払額が下がります。

確定申告した場合の支払い削減額総額は図1の棒グラフで示されています。

3.2 ケース2の場合 (図2)
世帯主の年金収入190万円のケース1場合は配当を確定申告したほうがしない場合よりも支払う所得税、住民税及び社会保険料の総額が低くなりますが、年金収入が290万円のケース2の場合はどうなるか見てゆきます。

1)配当を確定申告しない場合
 配当を確定申告しない場合は、ケース1の場合と同様、所得税及び住民税は配当の源泉徴収分(配当額の各々15.315% 、5%)に年金所得に対する所得税及び住民税が加わります。
所得税及び住民税は年金収入分の各々約3.2万円及び約7.5万円に配当所得分が加わり配当額の増加に比例し増加してゆきます。社会保険料は年金収入に対する分のみで配当額によらず約30万円になります。

2)配当を確定申告する場合
 ケース1では、配当を確定申告すると配当金額によらず所得税は発生しませんでした。
ケース2の場合は配当額の増加に伴い年金額と合わせた総所得額も増加しそれに伴い所得税率も上昇しますが、配当額400万円弱までは配当控除の額が配当控除前の所得税額を上回るため所得税は発生しません。
一方、住民税は所得割分の税率が10%でありケース1と同様配当控除額を考慮しても住民税は配当額の増加に伴い増加しています。社会保険料も配当の増額に伴い増加しています。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較
  所得税は、配当を確定申告する場合は配当額400万円弱までは粗発生しませんがそれ以降は配当額の増額に比例して所得税も増加してゆきます。確定申告しない場合は配当額に対し15.315%の所得税が発生するため、所得税額は配当額の増加に比例し増加しています。
一方、住民税及び社会保険料は配当を確定申告する場合は配当額の分が増加します。
配当を確定申告する場合、しない場合と比較し所得税の削減効果が大きいため、ケース1と同様、所得税、住民税及び社会保険の総額では、配当を確定申告したほうが支払額が下がります。

 確定申告した場合の支払い削減額総額は図2の棒グラフで示されています。

3.3 ケース3の場合 (図3)
  世帯主の収入が年金収入(280万円)にその他の収入が300万円(所得額ベース)が加
算される場合について、配当を確定申告する場合としない場合で所得税、住民税及び社 会保険料の支払額がどうなるか見てゆきます。

1)配当を確定申告しない場合
年金収入とその他の収入に対する所得税、住民税及び社会保険料は各々約24万円、約
35万円及び約58万円となり、これに配当所得分が加わり配当額の増加に比例し増加
してゆきます。

2)配当を確定申告する場合
  配当以外の収入に対する課税所得額は336万円となり20%の所得税率が適用されます。
配当所得の増加に伴い課税総所得に対する所得税率は23%まで増加します。
課税総所得額に対する所得税は配当控除額を上回るため、所得税は配当額の増加に比例 し増加します。住民税及び社会保険料も配当額の増加にともない増加します。

3)配当を確定申告する場合としない場合の所得税・住民税・社会保険料総額の比較配当を確定申告しない場合は配当に対する所得税は15.315%の源泉徴収税率が適用され配当額の増加に比例し増加します。
配当を確定申告する場合世帯主の収入額がケース3の場合は、課税総所得額に対する 所得税率は配当金額以外の収入に対しては20%であり、配当金額を加えた場合は20%または23%となり所得税額が配当控除額(配当金額の10%)を上回るため配当額の増加に伴い増加しますが、源泉徴収口座で適用される配当に対する所得税(よりも支払額は低くなります。 但し、ケース1及びケース2に比較し、所得税支払額の低減効果は大きくはありません。
住民税及び社会保険料は、配当を確定申告したほうがその分支払額は増加します。
ケース1及びケース2に比べ収入額が多いケース3の場合、配当を確定申告した場合、しない場合と比較し所得税の支払額は低くなりますが住民税及び社会保険料が増えるため、所得税、住民税及び社会保険料の支払い総額では増加する結果となります。

  確定申告した場合の支払い総額の増額は図3の棒グラフで示されています。

  2024年から投資枠の拡大や投資期間の無期限化など制度の使い勝手が大幅に改善された新NISAが始まります。
現役時代と比較し年金が主な収入となり適用される所得税率が下がる方が多いシニア世代の皆様は、新NISA口座ではリスク管理に留意しながら値上がり目的とした株式、一般口座・特定口座では配当重視の株式を運用し配当については、所得税、住民税、社会保険料の支払総額で有利な配当所得の総合課税方式での確定申告を検討されてはいかがでしょうか?

CFP 岩船

エッ!来年から年間220万貰っても非課税に出来る方法とは

 その方法とは、一人からは相続時非課税制度にて、もう一人からは暦年贈与で貰うという方法です。相続時精算課税制度の改正を利用した、ちょっとウラ技的方法になりますが解説します。

相続時精算課税制度改正案が今年3月28日成立しました。

まず、相続時精算課税制度とは、高齢者の資産をスムーズに次の世代に渡すために平成15年度から設けられた制度で、経済政策の一環でもあり、財産の贈与を受けた人がお金を使い、お金が循環することを期待され導入されました。

制度の概要は受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、

贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する制度です。

計算の結果、相続税の納税を要しない場合には、遡って贈与税がかかることはありません。

しかし、実際には下記のようなデメリットがあり、あまり利用されずにきました。

今までいわれてきた大きなデメリット

1.一度でもこれを使うと後に暦年贈与に戻せない。

 相続時精算課税制度を利用した後は、暦年贈与非課税枠の110万円が一生使えない

.必ず贈与税の申告が必要となる

このため、相続税対策としては、暦年贈与(れきねんぞうよ)を使うのが一般的でした。

暦年贈与とは、年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与額が110万円以下である場合、贈与税は発生しないという仕組みを利用した贈与の方法のことです。

自分が保有する財産を、年単位での時間をかけて少しずつ生前から贈与していく方法です。

この方法であれば、生前のうちに所有している財産を減らすことにより、将来的に発生する相続税の負担を軽減させることが可能なわけです。

そのように一般的に使われていた暦年贈与ですが、相続には『相続開始前3年以内の贈与加算』という制度があります。

この制度は、家族に相続が発生した場合、

・被相続人の方が亡くなった当日から数えて、『3年以内』に行われた贈与については、・贈与した財産額を亡くなった方の財産に足し戻して相続税の計算をしなくてはいけない、というものです。

でも、この3年以内以内贈与というものが、今年の改正でなんと7年に延長されてしまいました。

このため、高齢になってから生前贈与を始めてもあまり節税にはつながらないことが想定されます。

それに対して、今回の改正で大きく進歩したのが「相続時精算課税制度」です。

さきにあげた大きなデメリットの二つが無くなりました

一度利用開始した相続時精算課税制度をやめて暦年課税に戻すということは出来ませんが、かわりにこの相続時精算課税制度のなかで110万の基礎控除が行われることになりました。

さらには、この110万以内の基礎控除内なら申告も不要となり、手続き面でも楽になります。

このため、2024年からは相続時精算課税制度を使って110万贈与するというのが、生前贈与の一般的な方法になると思われます。

タイトルにあげた一人の人が年間220万貰っても課税されないケースは下記の①のように一人からは相続時精算課税制度により110万貰い、もうひとりからは暦年贈与で110万貰うというケースです。➁のように二人から暦年贈与で110万づつ貰う場合や③のように二人から相続時精算課税制度で110万貰う場合基礎控除が二人で按分され基礎控除を超えた部分は相続時の足し戻し対象になります。

相続時精算課税制度というのは、2500万まで贈与税がかからない制度で、相続時の財産額によっては、将来的に相続税がかかる事もあること念頭に置いておく必要があります。また、年間110万円の基礎控除内に関しては非課税かつ申告も必要ありませんが、110万円を超えた部分に関しては、これまで同様に累計贈与額2,500万円に達していなくとも贈与税申告が必要となります。

詳しいことは、追って国税庁のホームページでパンフレットとかが掲載されると思いますので、来年になったらそちらで詳しいことをご確認ください。

ちなみに、現行制度のパンフレットはこちらになります。

財産をもらったとき

CFP 磯野正美

iDeCoで老後資金を作る!

◆iDeCo開始のステップ
まずは、自分はいくら掛金拠出できるか を調べ ます。【 iDeCoとつみたて NISA比較表】で示しましたが、 職業や勤務先の制度により上限額が異なります。次に、限度額内で いくら 拠出 するか を決めます。
拠出額が決まったら、金融商品選びです。老後資産作りの大切なお金ですから資産運用の基礎を学んで、 どの金融商品を購入するかを選びます。その際、つみたて NISA商品(金融庁が、 手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託等に限定 している) から選ぶのがおすすめです。 商品を選んだら運営管理機関を決めます。運営管理機関によって購入できる商品が異な ります。
決める際は、 商品のラインナップ ・ 手数料 ・ サービス(使い勝手)を検討 して決めましょう。 加入してから運用中 ・ 受給が終わる迄の長いおつきあいになります。変更することも可能ですが、移管手続きは費用・手間・時間もかかるし、収益機会も損失することもあるので、慎重に選び ましょう 。

◆今後のiDeCo制度改革 に期待!
『資産所得倍増プラン』では、少子高齢化の進行を背景に、 老後に向けた資産形成の制度として、 今後も iDeCo制度の改革取り組みが示されています。 手続きの簡素化により 使い勝手のよい制度として 進化することを 期待 しましょう 。
iDeCo開始にあたって 参考になるリンクをはっておきます。 具体的にシュミレーションも出来ます。
興味のある方は、ご覧ください。 FPみらいへのご相談もお待ちしています。

[参考になるリンク]

iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】 (ideco-koushiki.jp)

個人型確定拠出年金ナビ(iDeCoナビ)~イデコ加入ガイド~ (dcnenkin.jp)

2023年 4 月
CFP 石黒貴子

相続した土地、登記していますか? ~来月以降続々と!土地の相続登記義務化に向けて法改正がされます~

ご存じですか?

現在、土地の相続登記は義務化されていない為、国土交通省の調査によると、地籍調査の対象地区(宅地・農地・林地等)のうち、所有者不明率はおおよそ2割、面積では九州より広い面積が所有者不明と推計されています。そして今後ますます増えていくと予想されています。

相続登記とは?

正確には「相続による所有権の移転の登記」といい、土地や建物の不動産の所有者が亡くなったときに、その土地や建物の名義を亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続きのことです。

・所有者不明土地とは?

  • 不動産所有者の登記が行われず現在の所有者がわからない土地
  • 所有者が特定できてもその所在が不明で連絡がつかない土地

・所有者不明土地が増える原因

土地の相続が発生した時に登記の名義変更が行われていない 約63%

所有者が転居した時に住所変更の登記が行われていない 約33%(R2国土交通省調査)

・所有者不明土地による問題点

[政府広報オンラインより]

イラストのように、相続人が相続登記をせず年月を経てしまうと、相続人の特定が困難になり、土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となります。公共事業や災害等の復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用の阻害要因になる、また土地が管理されず放置される事で、隣接する土地への悪影響が発生するなど様々な問題が生じています。

・そこで!来年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化されます

所有者不明土地を解消するため、不動産登記法が改正(令和3年4月)され、来年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化され、土地の相続から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由がなく申請を怠った場合は10万円以下の過料の適用対象となります。

・先がけて来月4月1日から導入「具体的相続分による遺産分割の時的限界」の新ルール!

この相続登記の義務化に先行して、来月以降、不動産関連の改正が続々と施行されます。来月4/1からは遺産分割に関する新たなルール「具体的相続分による遺産分割の時的限界」が導入されます。

遺産分割のルールは、法定相続分を基礎としつつ、生前贈与を受けたことや、療養看護など特別の寄与をしたことなどの個別の事情を考慮して具体的な相続分を算定するのが一般的です。ところが、遺産分割がされずに長期間経過した場合、具体的相続分に関する証拠がなくなってしまい、遺産分割が更に難しくなるといった問題があります。

そこで、遺産分割がされずに長期間放置されるケースの解消を促進するため、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分(または指定相続分(遺言による相続))によって画一的に行うこと とルールづけられました。

・【注目ポイント!】改正法の施行日前に相続が開始した場合の遺産分割の扱い

この改正法の施行前に亡くなった方の遺産分割についても、新しいルールが適用されますので要注意です。但し、経過措置により、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられます。

■長期間経過後の遺産分割のルール

[法務省民事局パンフレットより]

2023年4月が施行ですので、例えば相続開始(被相続人が亡くなった時)が2012年4月の方は図のAのケースにあたります。施行時から5年の猶予期間がある場合、2028年4月以降具体的な相続分による分割となります。Bのケースは、例えば2017年4月の相続開始の場合、2027年4月に10年が経過しますが、やはり2028年4月以降、具体的相続分による分割とされ利益喪失が発生することもある、ということになります。

■例外も確認しましょう

相続開始時から10年を経過していても具体的相続分により分割できる場合もあります。

  • 10年経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。
  • 10年の期間満了前6ヶ月以内の間に、遺産分割の請求をする事が出来ないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6ヶ月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。

◆相続した土地で悩んでいる方には、来月27日にスタートする「相続土地国庫帰属制度」も視野に

所有者不明土地が増加している一因として、都市部への人口移動や人口の減少・高齢化などにより土地のニーズが低下する中で、土地所有に対する負担感の増加も挙げられるでしょう。相続したものの遠方であるため管理ができない、使い道がなく手放したいけれど引き取り手もない、など処分に困っている土地、所有が困難な土地、いわゆる所有者不明土地予備軍について、所有者不明土地発生予防の観点から来月4/27以降、一定の要件を満たせば、国に帰属する事ができるようになります。

・申請できるケース

基本的に相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば申請できます。制度の開始前に相続した土地も対象ですが、売買等によって土地を取得した方や法人については対象外です。土地が共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。

・国庫帰属が認められない土地の主な例

次のような土地は、通常の管理や処分をするに当たり多くの費用や労力が必要になるので引き取りの対象外です。

・建物、工作物、車両等がある土地

・土壌汚染や埋設物がある土地

・危険な崖がある土地

・境界が明らかでない土地

・担保権などの権利が設定されている土地

・通路など他人による使用が予定される土地

・手続きと納付金

手続きは法務大臣(窓口は法務局)宛に実費等を考慮した審査手数料を納付して承認申請をします。法務大臣(法務局)による書面審査・実地調査を経て、国に土地を引き取ってもらうことが認められた場合は、30日以内に負担金(10年分の土地管理費相当額)の納付が必要となります。下の図のように、負担金は通常20万円、ただし市街化区域など一部の宅地や田畑、森林は面積に応じた算定額となります。



[法務省資料:相続土地国庫帰属制度の負担金より]

この他にも2023年4月以降、不動産関連の法改正が目白押しです。気になる方は法務省のHPやパンフレットなどをご覧ください。(末尾にURL記載あり)

相続とは財産を次の世代に引き継ぐこと…遺されたお子様や親族に、揉め事や悩みの種をも引き継ぐことは誰しも望んでいないでしょう。また、広くは近隣住民や地域の為にも、自分の代でできる事をクリアにしておくことも大切な終活の1つかもしれません。

2023年3月
CFP 依田いずみ

 

=参考資料=

◆「所有者不明土地の解消に向けて不動産に関するルールが大きく変わります」パンフレット

001381764.pdf (moj.go.jp)

◆平成29年度 土地所有・利用概況調査報告書 001237784.pdf (mlit.go.jp)

◆政府広報オンライン 令和4年(2022年)3月31日

なくそう、所有者不明土地! | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)

siryou2.pdf (cas.go.jp)

◆法務省民事局 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

https://houmukyoku.moj.go.jp/matsuyama/content/001344983.pdf

◆法務省資料:相続土地国庫帰属制度の負担金

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

法務省:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法) (moj.go.jp)

◆国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」

本検討会で扱う「所有者の所在の把握が難しい土地」とは (mlit.go.jp)

一般庶民にとって投資の王道はあるか?を考える

 岸田総理大臣が2022年5月に、英国金融街シティの講演で、「資産所得倍増計画」を
発表してから、岸田内閣では『貯蓄から投資へ』が一種のスローガンになっている。
また先ごろ、2024年からNISAが新しく拡充されることが発表となり、国を挙げて国民に投資活動を奨励している感がある。

・日本人は投資が苦手?
 一方、日本人は総じて投資が不得手というか、慣れていないのが実態だ。
下図は日本と欧米で家計の金融資産構成を比較したものである。

 欧米、特に米国では資産の中で株式・投資信託の占める割合が5割以上あるのに 対して、日本では現金・貯蓄の占める割合が5割以上となっている。
こういった国民性を持つ日本人に対して、「これからは貯蓄から投資だ」と言われても、 第一、投資のやり方なんて学校で習ってないよ、という声が聞こえてきそうだ。
昔々の高金利時代では、貯蓄さえすれば、それ相応の利子が付き、仕事に精を出せば 給料も右肩上がりで増えていった。
 ところが、超低金利時代の昨今、銀行の定期預金金利は、ほぼゼロに近く、預金しても 利息は物価上昇に負けている。また給料も思うほど上がらない。
とは言え、下手に良く分からない投資に手を出すと、痛い目の合うのではと投資に 踏み切れないと思う人が多いのもうなずける。
 日本人気質の根っこには「お金は額に汗して稼ぐもの」という意識があることは 事実だろう。投資と言うと、人によってはギャンブルとイコールに考えることも ある。ただ日本以外の国(例えば欧米諸国)では、一般庶民がコツコツと投資をして 老後の資金を貯めているのも事実である。
ここでは、プロの投資家ではない、我々一般庶民が投資をする際に「王道」と呼べる 基本的な方法があるかを考察したい。王道とは、囲碁の世界で言うところの「定石」と同じと考えてよい。
また、これから述べることは、筆者の個人的意見であることを、お断りしておく。

・一般投資家に投資の王道はあるか?
 ここからは、投資家をプロの投資家とそれ以外の一般投資家の2つに分ける。
プロでない、一般庶民である我々一般投資家に投資の王道はあるかを考える。
そもそも投資を行う場合、例えば株式市場を例にとると、株を売買するのはプロの
投資家もいれば、我々のような一般投資家もいる。いわば同じ土俵で戦う訳だ。
その中で、一般投資家が投資をして利益を得るような「投資の王道」は あるのだろうか?
 結論を申し上げると、筆者の個人的な見解は「王道」はあると考えている。

・投資の王道は何から学ぶ?
 さて、投資の王道は有ると言ったが、どこを(何を)見ればそれが分かるのか?
投資のバイブルの存在は、あまり聞いたことが無い。
一方、投資について書かれた著書は、世の中に星の数ほどある。
ここで筆者が投資に関する出版物・記事・インターネットの情報などで頻繁に 引用されている本を4冊選んでみた。(最後に参考図書として示す)
どれもベストセラーかつロングセラーである。この著書から投資の王道を抽出すると以下のようになる。

A.インデックス・ファンドへの投資
 インデックスとは日本語で言うと「指数」の意味だ。
例えば、株式投資を行う場合、2つの方法に分けられる。
一つは個別の株を買う投資をする方法。例え個人で個別株を選ばなくとも、
プロが選んでセットした投資信託を買ってもよい。これをアクティブ投資と呼んで いる。もう一つは、個別銘柄を選ばずに株式のインデックスに投資する方法だ。
日本株の場合、東証株価指数(TOPIX)に投資する方法がある。TOPIXとは東京証券 取引所に上場するすべての銘柄を対象として算出・公表されている株価指数のことだ。
ニュースでTOPIXが今日いくら値上がり(値下がり)したと報じられる。
TOPIXに投資することは、いわば株式市場全体に投資することになる。
さて、では何故アクティブ投資ではなく、インデックス投資を勧めるのか?
参考図書1および2に曰く、『プロの投資家が全精力を傾けてアクティブ投資を 行っても、インデックス投資に勝てない』
驚くような内容だが、参考図書1・2には、データを挙げて、その理由が記されて いる。詳しくは、参考図書の1および2を参照願いたい。
またアクティブ・パッシブ投資について、2021年3月の当ブログにも記載が ありますので、ご参考まで。

B.分散投資を行う
 極端な話、全財産を一つの銘柄の株式に投資する人はいないだろう。リスクを避ける ため、色々な分散を行うのも王道の一つだ。
分散とは、投資先の分散、投資する国の分散、投資する時間の分散等がある。
ちなみに、参考図書3に曰く「一に分散、二に分散、三に分散」。

C.定期定額長期投資を行う
 いわゆる積立投資を指す。毎月一定金額を長期にわたって投資する方法だ。
ドルコスト平均法が有名だ。
投資先の価格は日々変動するのが常である。安いときに買いたいのは山々だが、 そうは上手くはいかないもの。そこで相場変動に構わず、一定金額を長期にわたり 投資する。本当にそれで良いのかと思う方は、2018年8月の当ブログを参照下さい。
D.コストの安い投資方法を利用する

D.コストの安い投資方法を利用する
 投資する場合に手数料や信託報酬などに掛かる費用(コスト)は馬鹿にならない。
特に長期投資ではなおさらだ。幸い、最近では手数料無料や信託報酬が低い投資信託
が多く出ている。また利益が出た際に課税される税金もNISAなどを利用することで、
ゼロに出来る。

 以上が筆者の個人的な意見として述べた「一般庶民の投資の王道」である。
投資を職業としない一般投資家は、コツコツ積立投資を行い、リタイアするときに
老後の資産が確保されているのが、ベストなストーリーではないだろうか。
そのような道を探している方には、上記の方法は道先案内にはなると考えている。
投資や相場は人間が行う行為であるので、物理の法則と異なり、絶対に当てはまる
ものでは無いことに留意願いたい。
最後に、今まで述べていたこととは少し外れるが、ひふみ投信を展開するレオス・
キャピタルワークス 藤野英人社長が新聞記事に書いていた言葉を紹介する。
「最も成功する確率の高い投資は、自己投資である」

【参考図書】
1.「敗者のゲーム」  チャールズ・エリス著   日本経済新聞出版社
  – 題名の由来は、投資はアマチュアのテニスゲームのように、いかに自分がミスを
  せずにボールを相手に返すかで勝つことが出来ることに例えたもの。
  1985年初版発行。インデックス投資を推奨。
2.「ウォール街のランダム・ウォーカー」バートン・マルキール著   日本経済新聞出版社
  – 初版発行が1973年の50年におよぶロングセラー書。インデックス投資の優位性
  をデータを元に解説している。
3.「投資の大原則」 チャールズ・エリス、バートン・マルキール共著  日本経済新聞出版社
  – 上記1,2の著者の共著の本。読み易くコンパクトにまとまっているので、
  筆者一番のお勧め。
4.「賢明なる投資家」 ベンジャミン・グレアム著 パンローリング社
  – 著者は投資の神様ウォーレン・バフェットが師匠と仰ぐと言われている。
  1949年初版発行。古典的名著の誉れは高いが、中身のデータが古いのと、
   ページ数が多く(価格も高い)、読むのに苦労する。

CFP 前川敏郎

果たして新NISA非課税枠(360万円)を使いきれるのか?

注目すべき2つの改正点

 生活者にとって税制を知り、活用することは生活を守り、また運用・投資を考える上で 欠くべからざることである。この意味で令和5年度税制改正は注目するべき改正点が多かった。

 中でも岸田首相の唱える「資産所得倍増プラン」の目玉である少額投資非課税制度「NISA」の改正は将に“少額”であったがために運用・投資の中心ではなく1部の資金の運用という位置づけであった「NISA」が今後はその中核を担う規模になるという点で画期的改正ということが出来る。

だからこそその内容を確認し、今後の運用等を考えてみたい。

 また今回は相続・贈与税制面でも注目すべき改正が行われているので、この点も確認する。

 今回の改正は何が画期的といって、まず時限立法の制度が恒久化した点にある。これによって非課税期間(一般型23年、つみたて型42年)の制限がなくなり、いつ廃止になるか分からない点からも解放された。これからは安心して非課税枠を使って投資・運用が出来ることになる。

 もう1点画期的な点は制度の拡大である。非課税枠が年間360万円に拡大したことで多くの生活者・投資家にとって主要な投資手段になってゆくと思われる。更に便利になると思われるのは生涯投資枠(1,800万円)が売却分を再投資出来るようになった点である。これによって 人生のライフイベントに沿って資金を使っても再び非課税枠を使うことが出来るようになった。

 ここまでは良い点ばかり述べてきたが、ここで私は1つ疑問が芽生えてきた。果たして国民・生活者の何割が360万円の非課税枠を活用できるのだろうか、と。勿論非課税枠が360万円あるからといって全員が枠を使い切る必要はないかも知れない。自分の拠出可能額だけ投資・購入してゆけば良い。例えば、120万円に増額された「つみたて型」なら毎月10万円の投信積み立てが出来る。しかし、毎月10万円の積み立て投資が出来る余裕のある生活者はどれくらいいるのだろうか?更に一般型を含めた年間360万円の枠を使い切れる生活者はどれほどいるのだろうか?

 勿論所得収入ベースで考えると少し多い金額だが、政府の狙いはストックにあるのではないか。日本の金融資産約2,000兆円の半分を占めるといわれる預貯金の1部でも投信購入や株式購入によって産業界に回し、日本経済の発展に役立てようと考えているのだろう。預貯金に眠る資金を非課税枠を使って投資信託・株の購入に回しましょうという訳だ。確かに今回の改正は頭のいい政策だと思う。税制を変更することで日本経済の回復を図ることが出来るし、このために新たな財政出動でお金を作るため国債を増発しなくてもよいからだ。

果たして目論見どおりゆくか?

 ここからは制度の改正点ではなく、実際の投資信託の運用先を見てみたい。私の疑問は制度が改正されても、その資金は欧米に流れ日本には向かっていかないのではないかという点にある。即ち、現在の投資信託の投資先を見ると以下の表のようになる。

 表を見て明らかなように既に日本の生活者・投資家は人口減少社会・低成長経済と化した日本への投資から離れ、国際分散投資特に欧米・突き詰めればS&P500等への投資にその資金を向けている。この方向は間違っているわけではなく、その成長性・収益率を勘案すれば理にかなった投資を実行していると言える。それだからこそ今回の改正によって解き放たれた資金が政府の思惑とは別に欧米特にアメリカ等へ流れていっては元も子もないことになるのではないかと危惧している。

やはり行われた遡り期間の延長(資産課税・相続税)

 税制改正案によると、今回の改正は“資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築”が狙いだという。それは1つには「相続時精算課税」に暦年課税と同水準の基礎控除を創設し、使いやすくすると同時に暦年課税の相続財産に加算する期間が3年から7年に延長された。

 私が注目するのはやはり暦年課税の相続時の遡り期間が3年から7年に延長される点だ。これでいよいよ駆け込み生前贈与は益々難しくなる。これからは長い目で計画的に、早くから贈与を心がけていかないと対策が全て無効になる恐れが出てきた。やはり自分の子供・孫がお金を必要とする時期に助けることがお金を生かしてゆくことに繋がると思う。そして、その時期は自分が

 相続を気にするずっと以前、子供の結婚・自宅購入時等であって、それは自分が50歳、60歳代でも当事者であることを示している。また、この時期を逃した生活者にとっては孫等への「教育資金一括贈与」特例は2026年3月まで延長されたので活用を検討するに値する。

CFP 重田 勉

所得税・住民税を計算してふるさと納税を利用してみませんか?

そもそも何のためにつくられた制度なの?          (出所:総務省)

多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。
その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。

そこで、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限あり)。自分の生まれ故郷だけでなく、お世話になった自治体や応援したい自治体等、どの自治体でもふるさと納税の対象になります。

~所得税計算式は参考資料参照~
367 万円×20%-427,500 円=306,500 円(所得税額)
367 万円×10%=367,000 円(住民税※)
※厳密には住民税と所得税の課税所得は異なるため概算金額

【2】上記条件でふるさと納税を102,000 円すると・・

所得控除は153 万円+10 万円(ふるさと納税-2,000 円)=163 万円となり、
357 万円×20%-427,500 円=286,500 円(所得税額)
確定申告することによって所得税△20,000 円が還付され、次年度の住民税で80,000 円が控除されます。そして返礼品を受け取れます。
実質2,000 円で返礼品が受け取れるというわけです。

尚、下記図のように控除に限度額がありますのでふるさと納税サイトのシミュレーションを利用するのがよいでしょう。

11/29 よりふるさと納税でPayPay 商品券の利用ができる自治体が北海道、山形、栃木、愛知、三重、兵庫、奈良、山口、香川、福岡、熊本などの一部市で始まりました。
この機会にお世話になった自治体、応援したい自治体に出かけてみてはいかがでしょうか?
タクシーや食事、お土産などに使えて利便性は良さそうですし、今後参加する自治体は増え そうです。
日本の中でも行ったことのないところ、たくさんありませんか?

CFP 佐藤広子