40年ぶりの相続法改正!来月から施行される「配偶者居住権」って?

「配偶者居住権の創設」が令和2年(2020年)4月に施行されます。相続法の改正は、昭和55年(1980年)以来の事です。

■̻相続法改正の経緯

事の発端は、法案成立からさかのぼる事5年、平成25年(2013年)9月に最高裁が、民法900条4号のただし書き、即ち非嫡出子※1の相続分が嫡出子(と同等ではなく)の2分の1であるとした記述、は違憲であると決定した事でした。

これを受けて、同年12月に民法が改正され、違憲のただし書き部分は削除され、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分と同等となりました。しかし、この民法改正が及ぼす社会的影響や配偶者保護の観点から相続法制の見直しが必要となったのです。その後議論を重ねて、平成30年(2018年)7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律案」が可決・成立されました。これが今回の相続法改正です。平成31年(2019年)1月13日から段階的に施行されています。

 (※1「非嫡出子(嫡出でない子)」とは法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のこと。いわゆる「未婚の母」のほか、婚姻届けを出していない事実婚の夫婦の子も含みます。)

詳しくは「法務省/相続税法の改正」

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/explanation/pdf/p0492-0509.pdf 

■相続法改正の主な内容

  1. 配偶者居住権の創設-令和2年(2020年)4月1日施行
  2. 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置-令和1年(2019年)7月1日施行
  3. 預貯金の仮払い制度の創設-令和1年(2019年) 7月1日施行
  4. 自筆証書遺言の方式緩和-平成31年(2019年)1月13日施行
  5. 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設-令和2年(2020年)7月1日施行
  6. 遺留分制度の見直し-令和1年(2019年)7月1日施行
  7. 特別の寄与の制度の創設-令和1年(2019年)7月1日施行

■配偶者居住権とは

「配偶者が相続開始時に居住していた建物(亡くなった配偶者所有)を、残された配偶者の生存中は(または一定期間)無償で居住できる権利」です。

出典:政府広報オンラインhttps://www.gov-online.go.jp/useful/article/201809/1.html

【改正前】

相続開始後の配偶者の居住の権利を保証する規定はなく、高齢になった配偶者が、自宅所有者である配偶者の死亡により居住場所をなくすおそれがありました。

また、金融資産が少ない場合、配偶者が自宅所有権を遺産分割で取得すると、他の資産(金融資産等)をもらえなくなることもありました。

上の図のように、遺産総額5,000万円の場合、妻の法定相続分が2分の1、2,500万円ですから、自宅(2,000万円)を受け取ると、自動的に預貯金の相続分は500万円。妻の余命や資産状況、親子関係によっては、今後の生活に向けて不安が残ります。現金を得るために自宅を売却しても、高齢での新居探しに苦労することも少なくありません。

【改正後】

建物についての権利を、「負担付き所有権」と「配偶者居住権」に分けることができるようになりました。配偶者が「配偶者居住権」を、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することで、妻は配偶者居住権と預貯金1,500万円(配偶者居住権1,000万円の場合)を受け取れますから、住まいも生活費も確保され安心です。

■配偶者居住権のメリットとデメリット

〇メリット

・以前からその自宅に住んでいた配偶者であれば、生きている間ずっと住み続けられます。遺産分割協議等により、配偶者の居住期間を定めることも可能です。

・残された配偶者は自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できます。

・残された配偶者が亡くなった時、「配偶者居住権」に相続税は課税されず、「負担付き所有権」を持つ所有者は相続税の負担なく自宅を完全に所有できることになります。

【ここがポイント】残された配偶者が亡くなった場合、配偶者居住権は消滅します。権利の消滅であり、自宅所有者の相続発生とはならないため、相続税は課税されません。ケースによっては、相続税対策の手段の1つにもなります。

▲デメリット

・居住権を第三者に譲渡することはできません。

・建物を第三者に貸すことや売却はできません。

【ここがポイント】将来、老人ホームに入居したい等心境や状況の変化がおこった場合、勝手に売却することはできない事は留意点です。

■配偶者居住権の設定

 遺言・遺産分割協議・家庭裁判所の決定のいずれかによって成立します。その際、配偶者居住権を不動産登記する必要があります。配偶者居住権の評価方法は、自宅にあとどれくらい住む事ができるかを考慮し、建物・土地の評価額・建物の耐用年数・残された配偶者の余命等から算出します。配偶者居住権について遺言に記す場合など、事前に専門家にご相談の上、内容をよく理解して進めることが大切です。

■まとめ

 この40年間、高齢化が急速に進み、要介護の高齢者や高齢での再婚者も増加しました。家族の在り方に関する国民意識の変化や、相続を取り巻く様々な問題に対応する事を目的とした改正ですが、特に残された人の生活を守る傾向が強くなっています。多様化する家族の形、残された家族の関係が円満なケースばかりではない社会を映しているとも言えるでしょうか…。

 最後に、この相続法改正と同じ平成30年に、内閣府が全国の60歳以上の男女3,000人に行なった「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」を紹介します。「身体が虚弱化した時に住みたい住宅は」という何とも身につまされる質問についての回答です。

自宅にずっと住み続けたいという方が多いですね。

皆様ご自身はいかがでしょうか?そして親御さまは?                        

将来の事、相続の事など、ご家族で話すきっかけにして頂ければ幸いです。

2020年3月

AFP 依田いずみ

「老後資金・2千万円問題」を考える

『老後資金・2千万円問題』と聞いて、「ああ、あの事か」と頭に浮かぶ方は多いだろう。

2019年6月3日に、金融庁の「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」(以下、報告書と記す)に記載されている「老後の資金は、2千万円不足する」と言う文言に、世間が大炎上した一件である。

報告書発表時は、出来栄えに胸を張っていた麻生太郎・金融担当大臣が、各方面の批判から、6月11日には一転して正式報告書としては受理しないこととなった。
既に8か月前の出来事であり、発表当時種々のマスコミでも取り上げられているが、今一度報告書の内容を読み返してみた。

報告書は金融庁のホームページに、今でも掲載されているので、興味のある方はご一読ください。https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base.html

(金融庁ホームページトップ⇒金融制度等(審議会・研究会等)⇒金融審議会⇒答申・報告書等)

この報告書は、①報告書本体、②資料、③概要の3つから成り立ち、全部で56ページ有る。さらに別紙と参考資料が各1部付随されている。

ワーキング・グループは20数名から構成され、大学教授・新聞等のマスコミ関係者、金融会社、FPと多彩な顔ぶれである。

1) 報 告書概要

少し長くなるが、報告書の概要を以下に述べる。

報告書は3つの部分:

1.現状整理(高齢社会と取り巻く環境変化)

2.基本的な視点及び考え方

3.考えられる対応 

から成る構成である。それぞれの内容を要約すると:

1.現状整理(高齢社会と取り巻く環境変化)

この章では、高齢化社会に向かい:

①  健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されない期間)と平均余命の間の期間の、金銭面での対応の必要性。

② 単身世帯の増加や認知症の増加による、今まで標準と考えられてきたモデル ケースの急激な変化

と言う環境変化の側面を論じ、次に:

③ 景気停滞による賃金の伸び悩みや退職金額の減少による、高齢世帯の収入低下

④ 高齢者の就労継続

から、収入の減少はあるものの、依然シニア層の金融資産保有率は若年層よりは高くなっていることを指摘している。

老後の生活で年金収入から不足する分、金融資産を取り崩さざるを得ないのが現実だが、一方で資産寿命を延ばすためには運用(投資)が必要と思っていても、いざ投資をするとなるとなかなか実行できず、意識と行動の乖離がある。

2.基本的な視点及び考え方

この章では1章で論じた、取り巻く環境の変化を踏まえて、備えるべきこととして:

① 自分のライフプランを見つめ直し、自分自身の状況(収入・支出・保有財産等)を『見える化』することが重要。

② 年金金額の減少も視野に入れつつ、年金収入から不足する金額の充填を考えなければならない。それには、資産寿命を延ばす必要がある。

③ 併せて、認知症罹患リスクも考える必要がある。

3.考えられる対応

個人および金融サービス側についての必要な対応を述べている。

① 個人については、各人生ステージに対して、資産寿命を延ばすために備えるために知っておくべき対応の助言を行い。

② 金融サービス側へは、顧客サポートを顧客の年齢層別に提言している。
基本は『顧客本位』であること。

③ 資産寿命延長のための環境整備として、つみたてNISAやiDeco*1の更なる普及と改善を提言している。また若年層の金融リテラシー向上のための施策や高齢顧客保護にも触れている。

この報告書自体、何らおかしいことは言っておらず、極々真っ当な内容である。

特に1章・2章はFPが、顧客にライフプランの相談に乗る際の『定石』とも言える論法だ。それでは、何故炎上したのかを考えてみたい。

2)なぜ炎上したのか?

「30年で約2,000万円の(貯蓄の)取崩しが必要となる。」(1.現状整理 (3)金融資産の保有状況の項に記載)の一文が、やはり読者に一撃を与えたと想像される。

一方、2,000万円の貯蓄の取り崩しが必要となる根拠は、理路整然としている。

曰く:

・リタイヤ後の収入と支出の差額(赤字額)は月に平均約54,520円(年額で約65万円)である。

                 ↓

・リタイヤを60歳として、90歳まで生きるとして30年間に赤字額は、
65万円/年×30年=1,950万円(約2,000万円)

                 ↓

・よって30年で約2,000万円の貯蓄の取り崩しが必要。

3)平均値の錯覚

「2,000万円問題」が世間で炎上した際、月に約5万4千円不足するという根拠について指摘されることが多かった。

不足する5万円の根拠は、報告書の10ページに載っている『第21回市場ワーキング・グループ(厚生労働省)』からの引用図である。(なぜか、この図は非常に見難い)

高齢夫婦無職世帯(元サラリーマンの夫と専業主婦の妻)の収入は、主に年金収入で209,198円。それに対し支出は、263,718円。

差し引き263,718円 - 209,198円= 54,520円の赤字。

つまり貯蓄を取り崩すことになる。とここまでは、単なる計算式。

問題は、収入と支出の出所で、元ネタは総務省の家計調査(2017年)とある。

さらに元ネタに遡ると、調査対象の平均値を用いている。

この平均値が、実は曲者なのである。

一見すると、平均値は全体の真ん中を表していると思われがちだが、統計の内容によっては『真ん中の値』を必ずしも表していない場合がある。

統計学には、分布の単純平均である平均値と、分布の真ん中を示す中央値がある。

下の図のように、対象とする分布が左右対称である場合(正規分布)には、平均値と中央値は一致するが、非対称の分布では平均値と中央値は乖離する。

世帯収入や貯蓄額の分布は、左右非対称となるようだ。(少数の富裕層が平均値を押し上げるのが、世の中の習わし)

実例として、下図は二人以上世帯の金融財産保有状況である。

2019年の金融財産の平均値は、1,139万円に対し、中央値は419万円と倍以上の開きがある。本質的に、人それぞれで異なる収入や支出を一つの平均値で語ったところに無理があった。(報告書の中の高齢夫婦無職世帯の支出でも、持ち家を前提にしている。 借家だった場合は更に支出は増えることになる。)

4)年金は「100年安心」?

それでは、平均値を使って計算したことが問題の本質なのであろうか?

2,000万円ではなく、1,000万円不足すると言えば炎上しなかったのか?

以下は、筆者の個人的見解として聞いていただきたい。

2,004年の公的年金制度改革の際に、連合政権下の公明党所属の坂口厚生労働大臣(当時)が「年金百年安心プラン」を提唱した。

現在の年金制度は、現役世代から徴収した保険料でリタイヤした世代を支える、言わば「仕送り方式」(正式には賦課方式)である。

少子高齢化で現役世代が減少し、反対に年金をもらうリタイヤ世代の数も年金を受け取る年数も増加すれば、当然年金制度の維持は苦しくなってゆく。*2

その点を野党に突かれた安倍首相は、昨年6月の参議院決算委員会で「マクロ経済スライドにより、百年安心の制度ができた」と訴えた。

マクロ経済スライドとは、年金加入者(現役世代)の減少や平均寿命の延び、および社会の経済状況を考慮し、年金の給付金額をカットする制度のことだから、年金制度を維持する代わりに、給付額は減らすと言っているも同じである。

現に、安倍首相も「100年安心は仕組みとして確保する」と国会で強調した。

すなわち裏を返せば、年金制度は継続可能だが中味(支給額や支給開始年齢)は変わる可能性があると言っている。

一方、「百年安心な年金制度」と聞いた一般国民は、年金制度の持続性に安心すると共に、年金さえあれば老後の生活は安心だと勘違いしたのでは無いだろうか。

と言っては言い過ぎであれば、薄々老後の生活には具体的な金額のイメージは無いまま、年金以外の蓄えが必要だと思っていたところに、年金制度は安心だと言われて、老後の蓄えの必要性が心の隅に押しやられてしまったのかも知れない。

そんな中で、報告書が老後の資金は2千万円不足すると具体的な金額(しかも決して少額ではない)を、さも当たり前のように記載したため、炎上したのだろう。

ただ、炎上したおかげ(?)で、老後の資金に対して世間の目が向いたことも事実で ある。実際、報告書発表後に個人型確定拠出年金(iDeco)の口座開設数が増加したそうである。

これを契機に、自分の老後の資金計画を振り返ってみてはどうだろう。

誰が何と計算しようが、自分の老後資金計画は自分で立てなければならない。

収入に合わせた支出(生活)が必要で、収入より支出が多くなれば、蓄えを取り崩すことは必然である。

蓄えが底を突いてから、慌てることがないように、前もって老後の計画を立てておくことが肝要だ。

新型コロナウィルスについて「正しく恐れる」必要があるのと同様に、老後資金については「正しく心配する」ことが必要だ。FPのアドバイスを受けるのも一つの方法で ある。

*1 iDeco :個人型確定拠出年金

*2 実際は年金資金の半分は税金(公庫)で賄われてるが、苦しいことに変わりはない。

                              AFP 前川敏郎

空き家問題と住宅確保要配慮者問題は一体のものではないか?    ~住宅セーフティネット制度とFPの関わりについて~

「空き家問題」の現状

 近年の住宅・不動産関係のセミナーのテーマによく取り上げられるテーマに「空き家問題」がある。曰く、総務省が令和元年9月に発表した「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、国内の総住宅数に占める空き家の比率は13.6%(過去最高)に達し、その実数は5年前と比較して約29万戸増加した。(空き家全体では総数約900万戸弱)この内、特に留意したいのは最も多いのが相続対策等の理由で慢性的に供給過剰状態の賃貸用でその数462万戸にもなるという。そして不思議なのはこれだけ空き家があるのになぜか毎年賃貸用新築アパート・マンションが建設されてゆく現実を見るときである。そこにはハウスメーカー等の営業努力?があるのだろうが、ここにきてようやく駅から10~15分以内の物件でなければ入居者は見つからないし、資産的価値も乏しいことが地主層にも理解されつつあるように感じる。

 空き家問題でここにきて注目されているもう1つの問題に「特定空家」(代表的例にごみ屋敷等)に代表される募集も賃貸もされず放置されている住宅の増加がある。その数2018年で349万戸、10年前と比べると約80万戸も増加している。その代表的発生例は地方に暮らす親が亡くなり空き家になったが子供たちは都会に出て既に自宅を保有しており実家は当面そのままになっているケースが考えられる。

一方で「住宅確保要配慮者」が住宅を求めている

 これだけ空き家が増えて地主・自治体・住民等が困っているというのにこの国には住みたくても住宅がない・貸してもらえない多くの人々が存在する。その人々が「住宅確保要配慮者」だ。

「住宅確保要配慮者」;高齢者、低額所得者、被災者(発災から3年以内)、子育て世帯、外国人等

 高齢者が孤独死・トラブル等を恐れる貸主から入居を断られるケースや意外に?に若くても子育て世帯で子供が騒いでうるさい等の理由で賃貸住宅オーナーから避けられるという話もよく聞く。

 しかしわが国ではこの問題に対しては既に対策がなされている。それが「住宅セーフティネット制度」である。2017年からスタートした新しい住宅セーフティネット制度では住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録し、都道府県等がその情報を提供する。更に登録した住宅には改修を支援したり、入居者には家賃等を補助する経済的支援もすることになっている。

残念な登録状況

 では住宅をめぐる諸問題を解決するこの制度の利用状況はどうだろうか?「セーフティネット住宅情報提供システム」で登録されている住宅を検索すると全国にこの住宅は3,580件

(2018年8月時点)しかない!また都道府県によるばらつきが大きく登録件数0件の県さえある。

だが新しくなった住宅セーフティネット制度を知っているという人の割合はある住宅関連誌の調査では約67%に上っている。

 理由を推察するに“入居を拒めない”という点がオーナーの理解が得られない最大のものであろうし、制度が改正されてまだ時間が経っていない(周知されない)ことも登録が進まない理由と思われる。

FPとしてどうかかわるか

 我々FPの役割としてはまず我が国の住宅関連の問題を知り、住宅セーフティネット制度等の知識を深めて相談者にアドバイス出来るようにすると共にいざ相談があった時に専門家を紹介出来るように日頃から弁護士・司法書士・あるいは地元の不動産業者等のネットワークを築いておくことだろう。相談者と専門家・行政・業者等を繋ぐ中間にいるFPだからこそ出来ることは多いのではないか。空き家問題と住宅確保要配慮者の存在や住宅セーフティネット制度の問題を別々の問題ではなく住宅関連の問題として一体的に把握してゆく必要があろうし、FPこそこのような視点を持てる職種ではないだろうか。このような視点を持ち・動きをすることでFPへの認識も更に固まってゆくと思う。

                              CFP 重田 勉

「民事信託(家族信託)」って言葉がよく聞かれるわけ

先日、民事信託(家族信託)の勉強会に出席してきました。

2~3年ぐらい前からFPの勉強会でも行われるようになってきましたが、何度参加しても難しく、今回もやはり難しかったです。(これは苦手な法律だから?そもそも財産家でないのでピンとこない?苦笑)

ただ、長寿化が年々進行し「人生100年時代」と呼ばれるかつてない高齢社会を迎えようとしている今、特に認知症は2025年には700万人(65歳以上の4人に1人)になるだろうと予測されているだけに、民事信託がさらに増えていくだろうことは理解できました。

ご存知のように認知症になってしまってからは、その人の財産を勝手に他人が管理できません。家庭裁判所から法定後見人がつけられ、亡くなるまで後見人に毎月数万円報酬を払い続ける必要があるため、家族としてはその前に手を打ちたいと言うのが本音と思います。

しかも法定後見制度では、成年被後見人(本人)の資産を維持することが原則な為、資産を有効活用することはできません。そこで民事信託です。

遺言は本人が亡くなって効力が発生しますが、民事信託は生きているうちの遺言書のようなもので、「自分が認知症や介護状態になったら、家を売って自分を介護施設に入れて欲しい」とすることもできます。

民事信託は委託者(本人)と受託者(例:息子)の契約なので、「今日から信託契約を結びます」としたらそこから契約発生です。この時受益者は本人とします。(本人が亡くなった後は娘にすると一文付け加えることも可能)ただし後々兄弟妹でもめないように公正証書を作成しておいた方が安心で、不動産の場合名義を受託者に変えるため登記費用もかかりますが、数万円で済むのは大変有効と思われます。

民事信託に対して商事信託(民間の信託銀行などが行っているもの)は、障がいのあるお子様がいる場合有効とのことでした。ここでは委託者(本人)受託者(信託銀行)受益者(障がいの子)となります。贈与税の非課税制度があり、特別障害者である特定障害者は6000万円、特別障害者以外の特定障害者は3000万円です。民事信託は営利目的なので、契約時点で数%の手数料がかかる場合もあるようです。詳細は信託協会加盟店へご確認ください。

出典:信託協会

                            CFP 佐藤 広子

「えっ! パートでも、教育訓練給付金が?」

 日本人は元来 お勉強が大好き。このブログを読まれているあなたもきっとそうでしょう。自己研鑽に意欲を燃やしているあなたに朗報です。国は、リカレント教育の推進を図るべく、今年 教育訓練給付制度を充実拡大しました。

 リカレント教育とは、社会人となった後でも、教育機関で再び学べるシステムのことです。

毎月、毎月、お給料から控除されている「雇用保険料」。控除額が小さいので見落としがちですが、ありがたく頼もしい社会保険です。もしかして、この保険は職を無くした時だけに支給される「失業保険」だと思っていませんか?いえいえ、自己啓発のための経済的な手助けもしてくれるんです。何かというと、それはスキルアップのための講座費用の一部補助です。これが教育訓練給付制度です。

 しかし、誰でもどの講座にも支給されるものではありません。対象者は雇用保険料を納めている人(被保険者)また納めていた人であり、講座も厚生労働大臣の指定の教育機関でなければなりません。給付金には英会話やパソコンスクール、通信教育など比較的に手軽に受講できる訓練に対する一般教育訓練給付金と看護師、美容師、調理師など専門性が高く長期間となる訓練に対する専門実践教育訓練給付金があります。それぞれさらに支給要件があります。なお、10月に特定一般教育訓練給付金が増設され、専門実践教育訓練給付金は訓練前キャリアコンサルティングが必須になりました。

表中の「支給要件期間」とは受講を始める日まで、同じ事業主で雇用保険の被保険者であった期間です。つまり、雇用保険料を納めているまたは、納めていたパート勤務者、アルバイト勤務者でもOKなのです。ただし、退職された方は期間限定です。要注意です。では、具体的に活用例を紹介します。二例ともに前表の支給要件を満たしています。

支給額等は講座名、教育機関などで異なります。詳しくは、お近くのハローワークへお尋ねください。申請先もハローワークです。

また、インターネットには教育訓練給付制度 厚生労働大臣教育訓練講座検索システムもあります。

今回の教育訓練給付制度の拡大についてまとめると、

退職者に関しては、支給要件枠が大幅に緩やかになりました。また、将来 不足になると考えられる職業には、特定一般教育訓練給付金が増設されました。給付金額もそれぞれ増額されました。残念ながら我が国は少子化により 将来、人口が減少していくと予想されています。そのなか、制度の拡大は就業人口を増やし、雇用体系の量から質への充実による生産力アップが狙いです。結果、日本経済の上昇へとつながっていきます。まわりまわって、私たちは豊かな生活が送れることになります。

話が大きくなりましたが、個人的にはスキルアップで、仕事力が向上し、それに伴い収入・給料の増加が期待されます。大変喜ばしいことです。将来のライフプランが明るくなります。一石二鳥、三鳥!、四鳥?ともなるこの制度 ぜひ、活用ください。

                             CFP  楠本智子

あなたの生命保険の加入金額は適切ですか? ~キャッシュフロー表を作成し家計を見直してみましょう~

ことし6月に金融庁から「高齢社会における資産形成・管理」報告書が公表され老後2000万円問題が話題を呼びました。更に8月には厚生労働省から「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」が公表され将来の公的年金の所得給付水準(所得代替率)低下見通しが示され、老後生活に必要な資金の不足が大きな関心を集めています。

人生100年時代において、教育資金や住宅購入資金を確保しつつ、老後資金を準備してゆくには、収入を増やす事や資産運用のほかに家計の支出の見直しも重要になります。家計の支出の見直しには一度見直すと節約効果が続く固定費の削減が効果的ですが、固定費のなかで生命保険について、会社員の田中さん一家を例に必要補償額を見てゆきます。

田中家の家族構成

御主人(35歳) 会社員

奥様(35歳)  専業主婦

長女(2歳)

次女(0歳)

遺族補償に必要な金額は、世帯主の職業、家族の構成、年齢、資産状況、ライフプランにより世帯ごとに異なりますが、必要となる遺族の生活費から遺族年金等の収入を差し引き不足する分を生命保険等で準備することになります。

図1は、御主人の死亡時年齢別に必要補償額をシミュレーションした結果です。田中家の場合、35歳以降10百万円程度で推移していた必要補償額は46歳から下がり始め53歳でゼロになる結果となりました。

田中家の場合、必要補償額の内、子供二人の大学までの教育資金分が大きな割合を占めます。10月1日からの消費税引き上げに伴い「高等教育の修学支援新制度」の令和2年4月1日からの実施が決定しましたが、非課税である遺族年金以外の世帯収入が住民税非課税やそれに準ずる世帯に該当する場合、大学等の授業料等の減免及び給付型奨学金の支給が行われることになり必要補償額が大きく下がる結果となりました。

生命保険文化センターによる「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、世帯主の普通死亡保険金額の平均値は、35歳から44歳迄が21百万円から22百万円程度、45歳から54歳迄は20百万円弱となっています。算出の条件が異なるものの、生命保険文化ンターの調査結果と田中家と比較すると大きな差が出る結果となりました。

本ブログの読者の皆様が契約している生命保険の普通死亡保障額が田中家のミュレーション結果の金額と異なる様であれば、田中家の家計の条件と比較しながら、必要補償額の見直しが必要になる可能性があります。

図2は、世帯主が35歳で死亡した場合について配偶者が88歳(35歳時の女性の平均余命から算出た寿命)になるまでの金融資産残高の推移です。

次に、医療保険について見てゆきます。

生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、民間保険加入世帯における医療保険・医療特約の世帯加入率は約9割と公的医療保険制度がある中で、高い比率です。

医療保険に加入する目的は、高額な医療費や収入減少への備えですが、生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査」によれば、過去5年間で入院経験のある人の割合は1割強、直近の入院時の平均入院日数は約19日で逸失収入があった割合は約2割です。また、直近の入院時の自己負担費用と逸失収入の合計額の平均は27万円です。

民間の医療保険は、公的医療保険制度では全額自己負担となる先進医療もカバーされ安心を得ることが可能ですが、高額医療費制度や傷病手当金制度(会社員や公務員)がある中、医療保険の加入は預貯金額を含め家計の状況と保険料のバランスを考えることが重要となります。保険料が家計の大きな負担となっていれば見直しが必要になります。

図3は、前出の「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」による生命保険(個人年金保険を含む)世帯主年齢別世帯年間払込保険料です。生命保険加入の目的は各年代で異なるものの、30歳代以降80歳代までは世帯全体で年間30万円弱から50万円弱の保険料が払い込まれています。

生命保険の必要補償額の算出や医療保険額の家計とのバランスを検討するには、 家計のキャッシュフロー表を作成してみる必要があります。

キャッシュフロー表とは、中長期の家計の収入、支出、貯蓄残高の推移を一覧にしたものです。生命保険の必要補償額や医療保険額の検討のほか、マイホームの購入、子供の教育、老後の生活など将来までの家計の変化をキャッシュフロー表によりチェックすることで、このままでも家計の目標がかなうのか、収入の増加、支出の見直し、金融資産の運用など家計の改善が必要になるかが視えてきます。

図4は、田中家の家計のキャッシュフローのシミュレーション結果です。御主人に万一のことがない場合です。

田中家の場合、二人の子供の大学までの教育費を賄っても60歳になるまでの金融資産残高は22百万円程度となる結果となりました。

最近老後2000万円問題が話題になっていますが老後に必要な金額は各家庭の家計状況により異なります。現在の金融資産残高で老後生活は大丈夫か、不足する場合の対策等お迷いでしたらお近くのファイナンシャル・プランナーにご相談ください。キャッシュフロー表を見ながら一緒に考えてみましょう。

日本FP協会神奈川支部主催の「FPの日FPフォーラム2019」が11月3日(日)に横浜ランドマークタワーで開催されます。無料セミナー、無料体験相談会の他ワークショップも行われ、その中でキャッシュフロー表の作り方をファイナンシャル・プランナーとともに学んでゆきます。ぜひご参加ください。

事前登録URL:

https://www.jafp.or.jp/shibu/kanagawa/seikatsu/seminar/detail/kanagawa/17

                             CFP 岩船康則

100年定期預金と債券バブル

 先日、ラジオ日経の「ご意見伺います」というアンケートで「100年債に興味がありますか?」 というのがありました。

 世界的な金利低下を受けて、国家や企業では、償還期間が今まで以上に長い「超超長期債」(?)の発行を検討、あるいは現実化させており、米国でも100年債の発行を検討しているとの報道もあったことがアンケートの背景でした。 アンケートの結果は回答者の8割の人が興味なし という結果でした。

 確かに100年後どうなっているかわかりませんから当然のような気もします。 そのアンケートコメントのなかに「100年定期と何が違うの?・・・」とかいう話もあり、 100年定期について調べてみました。

 100年定期で検索してみると・・・

 新潟貯蓄銀行(新潟市、現第四銀行)が1915年(大正4年)に募集した「超長期」の100年定期預金は 利率6%の複利で2015年に満期を迎えて1円が100年後に339倍となったとのことです。 当時は小学校教師の初任給が9円位とのことから、当時の1円は現在ざっくり約2万円です。それが、インフレ時代を経過し100年後2015年に339倍に増えて339円を貰っても・・・

ということで、証書を持っている人は 換金せずに記念に証書を保管しているというようなニュース

 もうひとつの100年定期は、さらに古くて明治33年に「1円」の価格で発行されたもの。長野県・茅野市役所にその証書が保管されているそうです。その証書は100年で、元金が1万倍になるという年利9.75%(複利)高利率です。 明治33年の警察官の初任給も9円位なので、こちらの場合も、当時の1円は現在価値だと約2万円、それが100年後に1万円として戻ってきたことになります。

ということで、どちらも物価上昇に追いついてないという結果でした。

 それじゃ、金(ゴールド)を買っていたらどうか? 日本が1897年(明治30年)に貨幣法を制定したとき、金(ゴールド)の値段は0.75グラム=1円でした。現在の地金価格はというと2019年09月13日現在税込買取価格は1gで5,593 円です。0.75gでは4195円です。2万で買ったものが4195円、最近金価格が上昇しているといっても、こちらもマイナスでした。 株式に投資していたら?と思い日経平均100年前を検索してみましたが、 こちらは1949年スタートということで、まだ100年経っておらず比較できませんでした。

 現在の債券市場では、満期まで持っていると、元利合計でマイナスになるという債券が債券発行残高の4分の1にも達するというような異常な事態です。このため債券バブルだという記事も多くみられます。 例えばドイツの指標10年物国債はクーポン0%で100の額面に対して2019年8月には107台で取引されていたとのこと。これは10年間利息がもらえない上に、10年後には7%元本割れとなる事が確約されている金融商品です。

 既に、2年前に100年債が発行されたオーストリアの債券価格推移が下記です。この債券価格は今年に入って右肩上がりに8割上昇しています。

 現在の取引の多くは、短期で値上がりすると見込んだ投資家が買いを入れてるから値上がりしているということのようですので、いずれはバブルが弾けると予想されますが、それがいつやってくるのかはわかりません。

 債券バブルが崩壊したあと、生き残ったマネーは割安な株式を求めてやってくるかもしれません。 株式の長期投資でその恩恵を受ける準備をしておくのもひとつの方法です。

 人生100年時代、時代の先を予測して、それにあわせた資産形成と資産寿命を考えるのが大事です。

2019年9月 CFP 磯野正美

皆さん、ご存知ですか? 神奈川県では、今年の10月1日から自転車損害賠償責任保険等の加入が義務化されます。

≪背景≫

自転車関連事故は、減少傾向にありますが、「自転車相互」「自転車対歩行者」事故については、近年横ばい状態から増加傾向に転じています

自転車事故件数を年齢層でみるとは16歳~19歳が最も多く、19歳以下の事故件数が全体の38%を占め責任無能力者を含む未成年者の事故件数が多い傾向にあります。

最近では、自転車事故による高額賠償の事例がいくつも出てきており、最高で約9,500万円の高額損害が命じられたケースもあります 。

「自転車対歩行者」の場合、自転車側に責任割合が多くなり賠償額の負担が大きくなります。

このような状況を背景に兵庫県で2015年10月以降に義務付けがスタートして以来、各自治体でも義務化が、広まっています。

2018年12月現在では、6府県5政令市(埼玉県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鹿児島県。さいたま市、相模原市、名古屋市、京都市、堺市)で義務化されています。

神奈川県でも「自転車事故の被害者救済」と「自身が加害者になった場合の経済的負担の軽減」を目的として『自転車損害賠償責任保険等加入の義務付け』条例が制定されました。この条例の対象者は、神奈川県で自転車を利用する人。県外に在住していても神奈川県内に乗り入れる場合は対象となります。また、未成年者が自転車に乗る場合は、保護者に加入義務があります。従業員が業務で利用する場合には、事業主。自転車を貸し出す事業者も対象になります。

≪まず、加入状況を確認してみましょう≫

『自転車損害賠償責任保険等』とは、文字通り自転車の利用によって起きた事故で、他人にけがをさせてしまった場合の損害を補償できる保険のことです。

具体的には自転車向けの保険の他、自動車保険や火災保険の特約としての個人賠償責任保険、PTA保険や各職域での団体保険、自転車整備士による点検を受けたことで加入できるTSマーク付帯保険などがあります。本人が気付かない内に加入しているケースもあります。

お持ちの保険証券を取り出して加入状況や補償内容をしっかり確認して10月からの自転車損害賠償保険加入義務化に備えましょう。

オリジナルリンク先 http://www.pref.kanagawa.jp/docs/f5g/310322.htm

2019年8月 CFP 石黒貴子

「働き方改革関連法」が施行される

2018年7月6日に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)においては、8本の法律について主要な改正が行われ、その多くが本年4月1日から施行となり、「働き方」が大きく変わりました。私が担当したブログにおいてその一部を紹介してきましたが、今回改めてまとめました。

1.はじめに

「働き方改革」は、《一億総活躍社会の実現に向けて》働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

2.「働き方改革関連法」の全体像

(1)時間外労働の上限規制が導入  【大 企 業 2019年4月1日施行】

                  【中小企業 2020年4月1日施行】

労働基準法における労働時間の定め〈労働時間・休日に関する原則〉

・労働時間の限度:1日8時間及び1週40時間・・法定労働時間

・休日:毎週少なくとも1回・・法定休日

時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的に特別な事情がなければ、これを超えることはできない。

臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守る

・時間外労働が年720時間以内

・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平 均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内

・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

法定労働時間を超えて労働者に時間外労働や法定休日に労働させる場合には、

・労働基準法第36条に基づく労使協定〈36(サブロク)協定・・新様式〉の締結

・所轄労働基準監督署長への提出   が必要です。

ただし、上限規制の適用が猶予・除外となる事業・業務があります。

(2)年次有給休暇の確実な取得【2019年4月1日施行】

使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について毎
年時季を指定して与えなければならない。      

(3)中小企業の月60時間超の残業の割増賃金率引上げ【中小企業2023年4月1日施行】

月60時間を超える残業に対する割増賃金率を25%⇒50%に引き上げ

(4)「フレックスタイム制」の拡充【2019年4月1日施行】

より働きやすくするため、制度を拡充。労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を3か月まで延長できる。

(5)「高度プロフェッショナル制度」を創設【2019年4月1日施行】

職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する場合に健康確保措置や本人同意、労使委員会決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規程を適用除外できる。

(6)産業医・産業保健機構の強化【2019年4月1日施行】

産業医の活動環境を整備し、労働者の健康管理等に必要な情報を産業医へ提供する。

(7)「勤務インターバル制度」の導入促進【2019年4月1日施行】

1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間の確保に努める。

(8)正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止

                【大 企 業 2020年4月1日施行】

                【中小企業 2021年4月1日施行】

同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で基本給や賞与など
の個々の待遇ごとに不合理な待遇差を禁止される。

今回は上記(1)から(8)のうち、働く者にとって非常に関心のある《年次有給休暇の確実な取得》について、解説します。

3.「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務化

(1)年次有給休暇の付与や取得に関する基本的なルール

〇 年次有給休暇の発生要件と付与日数

労働基準法において、労働者は ・雇入れの日から6か月継続して雇われている

               ・全労働日の8割以上を出勤している

             この2点を満たしていれば年次有給休暇を取得できる

①原則となる付与日数

継務勤務年数 6か 月 1年 6か月 2年 6か月 3年 6か月 4年 6か月 5年 6か月 6年6か月以上
付 与 日 数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

②パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数

比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者。

                【 継  続  勤  務  年  数】

週 所 定 労働日数 1年間所定 労働日数   6か月 1年 6か月 2年 6か月 3年 6か月 4年 6か月 5年 6か月 6年6か月以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

(※)表中太字で表示された部分に該当する労働者は、2019年4月から義務付けられた「年5日有給休暇の確実な取得」の対象となります。

(2)年次有給休暇の付与に関するルール

 〇 遵守すべき事項

①年次有給休暇を与えるタイミング

年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされていますので、労働者が具体的な月日を指定した場合には、「時季変更権」による場合を除き、その日に与える必要があります。

②年次有給休暇の繰越し

年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度の取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要がある。

③不利益取扱いの禁止

使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない。

(3)年5日の年次有給休暇の確実な取得

〇 対象者

 年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象

〇 年5日の時季指定義務

使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について毎
年時季を指定して与えなければならない。      

〇 時期指定の方法

使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければならない。また、できる限り労働者の希望に沿った時季取得になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。

〇 時季指定を要しない場合

既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできない。
つまり、「使用者による時季指定」、「労働者自ら請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りるということです。

〇 年次有給休暇管理簿

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならない。年5日の確実な取得のための方法として、基準日にその年の年次有給休暇取得計画表を作成し、労働者ごとの休暇取得予定を明らかにすることにより、取得時季の調整がしやすくなる。

〇 就業規則への規定    

休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であり、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければならない。

〇 罰則

違反した場合には、罰則が科せられることがあります。

〇 その他留意すべき事項(Q&A)

①半日単位や時間単位の年次有給休暇は?

時季指定を半日単位で行うことはできますが(年次有給休暇の日数は0.5日)
時間単位の年次有給休暇は、使用者による時季指定の対象とはなりません。

②法定の年次有給休暇に加えて、会社独自に設ける法定外の有給の特別休暇は?

法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇を取得した日数分については、5日の年次有給休暇から控除することはできない。

③法定の年次有給休暇の付与日数が10日に満たないパートタイム労働者は?

法を上回る10日以上の年次有給休暇を付与する場合でも、法定の付与日数が10日に満たない場合は、時季指定をすることはできない。また、前年度から繰り越した年次有給休暇の日数は対象とはならない。

4.まとめ

年次有給休暇の取得は労働者の心身の疲労回復、生産性の向上など労働者・会社双方にとってメリットがあります。年5日の年次有給休暇の取得はあくまで最低の基準です。我が国における有給休暇取得率は51.1%(平成29年実績)と低く、労働者がより多くの年次有給休暇を取得できるよう、環境整備に努めましょう。

                (厚生労働省 働き方改革関連法解説より)

今回の法改正に係わる解説は以上となりますが、働き方改革に関連する「健康経営」について触れさせてもらいます。

「健康経営」とは?

 健康経営とは:従業員等の健康保持・増進の取り組みが、将来的に企業の収益性等を高める投資であるとの考えのもと、従業員等の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に取り組むことです。健康経営の推進は、従業員の活力や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績や企業価値の向上につながると期待されます。

健康経営の認定・登録・表彰制度とインセンティブ

・「健康経営銘柄」:2015年より経済産業省は、東京証券取引所と共同で、東京証券取引所に上場している企業の中から「健康経営」に優れた企業を選定。 

2019年選定企業 28業種37社

5年連続選定企業:花王(株)、TOTO(株)、テルモ(株)、東京急行電鉄  (株)、SCSK(株)、(株)大和証券グループ本社

「健康経営優良法人」:日本健康会議による認定。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としている。本認定制度は、「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」の2つの部門に分け、それぞれの部門で認定。

  2019年認定企業:大規模法人部門820法人、中小規模法人部門2502法人

・地域への広がり:健康経営の関心は、国の動向を踏まえて、各地域でも高まっています。地方自治体や経済団体等において、健康経営の認定・登録・表彰制度などを実施するところが増えています。 

《例》 神奈川県:CHO(健康管理最高責任者)構想推進事業所登録事業
    横 浜 市:「横浜健康経営認証」制度

・健康経営インセンティブ:全国各地で金融機関等から融資の金利優遇等があります。

“人生100年時代”と言われていますが、いかに《健康寿命》を延ばすのかは我々一人一人が取り組む課題でありますが、一方“職場での健康づくり”は、企業経営の根幹です。その実現に向け共にチャレンジ!!しましょう。


           FPみらい ブログ 2019年7月

   社会保険労務士・健康経営アドバイザー・行政書士・AFP  若林富雄 

キャッシュレス時代に向けて ~知っておきたいリボ払いのしくみ~

   6月20日には東京2020大会オリンピック観戦チケットの抽選結果が発表され、いよいよ販売開始となります。そして10月から?延期?軽減税率は?経過措置は?とはっきりつかめない消費税が気になる今日この頃です。このワクワク待ち遠しい東京オリンピック・パラリンピックとモヤモヤ消費増税を結ぶ1つの言葉があります。

それは「キャッシュレス」です。

  消費増税については、前回2014年4月に5%から8%に引き上げられた時、施行前の駆け込み需要が高まった反面、施行後長らく消費が落ち込み景気が悪化する事となりました。そこで今回、景気対策として打ち出されたのが、経済産業省の「キャッシュレス・消費者還元事業」(ポイント還元事業)です。中小企業の店舗で「キャッシュレス」で買い物をすると代金の5%がポイントとして還元される(コンビニ等大企業フランチャイズチェーン傘下の店舗では2%還元される)、あるいは請求額からポイント相当額がキャッシュバックされるというものです。3,000億円必要といわれるポイント還元の資金は政府が補填します。しかし、残念なことに現金払いでは何も還元はありません。この事業は2020年7月の東京オリンピック開催前までの9ヶ月間期限付きとされています。

   平成30年4月にまとめられた経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」によると、成果目標として、2025年までに民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済比率40%を実現する事が掲げられています。(2016年同キャッシュレス決済比率は20.0% 図1参照)こうしたことから、諸外国に比べて現金決済比率の高い日本が、東京オリンピックを機に、キャッシュレス決済の環境整備が加速していく事は想像に難くありません。

図1.キャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率

(出典)民間最終消費支出:内閣府「2016年度国民経済計算」

  さて、キャッシュレス決済方法には、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなど電子的に繰り返し利用できる決済手段が想定されています。実際はクレジットカードに紐付けされ、返済はクレジットカード払いというケースも多くみられます。

図2.キャッシュレス支払手段の例  

(出典) 経済産業省 キャッシュレス・ビジョン検討会事務局資料(第五回)

現金払いと違い、クレジットカード払いは、支払回数により手数料がかかります。また、支払方法によって、総支払額に大きな差がでます。ポイント還元につられて利用し、明細書を見て多額の手数料にガックリ!という事のないよう、クレジットカードの支払方法、特に最近利用者が増えているリボルビング(リボ)払いについて、良く知っておきましょう。

■クレジットカードの仕組み

利用者の信用を基にクレジットカード会社が、ショッピングなどをしたお店(加盟店)にその代金を利用者(カード会員)に代わって支払います。

(出典)日本クレジットカード協会

現在一般的に行なわれているクレジットカードによる商品の購入・サービスの利用から 代金の支払いまでの仕組みは上の図のようになります。

1.商品・サービスの提供

2.カードの提示・端末機への暗証番号を入力(売上表にサイン)

3.売上表送付(売上げデータ伝送)

4.売上代金支払い

5.利用代金明細書送付

6.利用代金支払 届出金融機関決済口座から自動引落

■クレジットカードのメリット

・代金後払いで商品等を購入する事ができる

・現金の持ち歩き不要 欲しいと思った時に商品を購入する事ができる

・支払回数が選べる1回払い、3回払い、ボーナス払い、等

・ポイントがたまって得する

・会員特典で優待や割引が受けられる

・海外旅行保険付帯の物は保険が付いている

・盗難補償で万一の時に補償される(期限あり)

■クレジットカードのデメリット

・つい使いすぎてしまう

・不正利用される可能性がある

・クレジットカードが使えないお店がある

・リボ払い・分割払いは手数料がかかる

■手数料について

リボ払いと分割払いには手数料がかかります。利用額や支払コースによってカード会社毎に手数料率は変わりますが、リボ払い年15.0%、分割払い年12.0%~15.0%が標準となっています。

■リボ払いと分割払いのちがい

リボ払い…利用件数、利用金額にかかわらず、月々の支払金額を一定額(または残高に対する一定率)に決め、その額を支払っていく方式。月々の支払金額を2万円と決めた場合、利用限度額の範囲で、何回利用しても、月々の支払いは2万円です。そして残高がある限り支払いが続きます。月々の支払金額を一定にすることができる為、家計管理がしやすい利点があります。しかし、分割払いと異なり支払い回数や期間の設定がないため、残高がある限り支払いが続き、無計画に利用すると支払いが困難になる場合もあります。支払い残高に応じて手数料がかかります。

分割払い…利用の際に、商品の金額等を考慮して、支払回数、月々の支払額を決めて支払っていく方式。支払回数を多くすれば、月々の支払いを少なくすることができ、逆に回数を少なくすれば月々の負担は多くなりますが、支払いを早く終える事ができます。利用金額や支払回数に応じた手数料がかかります。

■リボ払いと分割払いの返済の比較

例)海老名みらいさんがクレジットカードを利用しました。

リボ払いの中から(※)①元金定額返済 ②元利定額返済 そして③分割払い、それぞれの場合を比較してみましょう。(※リボ払いには定額方式の他に、支払残高の大きさに応じて、毎月の支払額が段階的に増減する残高スライド方式があります)

[利用状況]

平成31年1月 海外旅行代20万円 翌2月返済開始

平成31年.3月 パソコン7万円購入 翌4月返済開始

【①リボ元金定額返済では】

年利15%

毎月返済額2万円(元金定額は返済額に手数料が含まれないため、「2万円+手数料」が毎月の返済額になります。元利定額と比べ完済までの期間は短くなります)

◇リボ元金定額払いは月々の元金返済額が一定です。【③分割払い】と比べ完済までの期間が長くなり、支払額合計も多くなります。リボ払いの手数料は、利用残高に対して算定されるため、残高が増えると手数料の割合も増えます。(☆1に対する手数料が☆1’)

【②リボ元利定額返済では】

年利15%

毎月返済額2万円(「元金+手数料」の合計が毎月定額の返済額になります)

◇リボ元利定額払いは月々の返済額が一定で家計管理がしやすい反面、他の2方式と比べ完済までの期間が長くなり、支払額合計も多くなります。リボルビング払いの手数料は、利用残高に対して算定されるため、残高が増えると手数料の割合も増えます。(☆1に対する手数料が☆1’)特に【リボ元利定額返済】の場合は、月の返済額が手数料を含めて一定額であり、手数料が増えると、元金の返済割合が少なくなります。(☆2に対して☆2’が手数料→☆2”の元金減少)パソコン購入後も次々と利用を続けると、残高が増える一方、元金が減りにくくなります。リボ払い利用者が払っても払っても返済が終わらない状況に陥る仕組みがここにあります。

【③分割払い10回払と2回払では】

10回払:実質年利14.50%(利用代金100万円当たり6.80円)

2回払:手数料無料

◇分割払いの手数料は、各購入商品の元金と支払回数に対して算定されます。(☆3に対する10回払いの手数料が☆3’)ただし、購入商品が増えると、月の返済額が増額します。(☆4パソコン返済額上乗せ)ここではパソコンは手数料なしの2回払としましたが、手数料のかかる支払回数で返済する場合、月返済額にプラスされます。

いかがでしたか?

2つの商品27万円の購入について、それぞれの返済方法により、期間、手数料、返済額にこれだけ差が出てきます。更に複数の商品を購入すれば差が広がり、家計に大きく影響します。 それぞれの仕組みを良く理解して、自分の使いやすい方法を選択し、管理する事が大切ですね。

最後に、日本クレジット協会に寄せられた1つの質問を紹介します。

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 (質問) 一回払いで買い物をしていたはずが、リボルビングでの請求明細になっていたのですが、リボルビングにした覚えがありません。 (答え)申込んだクレジットカードが、「リボ専用カード」であったり、そのカードの支払いをあらかじめリボルビングに限定するような登録にしている場合が考えられます。 これらのカードでは、店頭やネットショッピングで決済する時に、1回払いと指定しても、支払いはすべてリボルビングになります。 自分のカードの支払いの設定がどのようになっているかは、カードが送られてきた時に同封されている利用の手引きや利用明細書等で必ず確認しましょう。 ご不明な点は、利用しているクレジットカード発行会社にお問い合わせください。 

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        2019年6月 AFP依田いずみ