知っておきたい傷病手当金

~病気やケガで働けなくなった時の支えになります~

 企業に勤務されている方の健康保険制度には、病気やケガで働けなくなった時に支えとなる傷病手当金制度があります。

 傷病手当金は、業務外の病気やケガでの療養中に仕事が出来ず、給与が支払われない場合に、組合健保、協会けんぽなどに加入している被保険者に、健康保険から支給される給付金です。民間の保険に就業不能保険、所得補償保険等ありますが、傷病手当金は、療養中の収入減少を補填する重要な公的保障制度です。国民健康保険、後期高齢者医療の加入者は原則対象外となります。

 全国健康保険協会令和5年度の調査では、総数169,957件297億円余りが支給されており、年齢階級別状況では、50歳~54歳が20,639件約39.6億円、次いで55歳~59歳19,279件約38.8億円が支払われています。

同調査による傷病手当金の現況、受給の要因となる病気やケガについて、全体の35%を精神および行動の障害、次いで13.5%がガン等の新生物が上位を占めています。

■受給条件
以下の条件を全て満たす必要があります。
1.協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などに加入する被保険者本人であること
国民健康保険の加入者は受給できません
2.業務外の病気やケガによる療養であること
3.仕事に就けない状態であること
4.連続する3日間(待期期間※1)を含む4日以上仕事を休んだこと
5.休業期間中に給与が支払われない事
 ただし給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては支給されません。

※1待期3日間の考え方(下図参照)
会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事に行った場合には「待期3日間」は成立しません。また待期期間の3日間連続の休日は、有給休暇でもあらかじめ定められた休暇(公休)でも無給休暇(欠勤)でも構いません。

■支給額の計算方法:
1日あたりの傷病手当金 = (直近12ヵ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30) × 2/3

■支給される期間
支給期間は通算で最長1年6ヶ月です。
令和4年1月1日からの法改正により、支給期間が通算されるようになりました。途中、就労などで傷病手当金が支給されない期間は、支給期間から除外されます。

・同一の病気やケガに関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象
・支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能です。

■申請のポイント
・「傷病手当金支給申請書」に事業主と療養担当者(医師等)の証明を受け協会けんぽに提出します。内容が審査され不備等がなければ約2週間程度で支給となります。
・申請先、支給は加入している健康保険の保険者です。勤務先が傷病手当金を負担する、支払うものではありません
・共済組合や健康保険組合に加入している方は独自の傷病手当付加金もある可能性があります。勤務先の健保担当者または健康保険の保険者へ確認しましょう。
・申請する場合は、勤務先とも相談し、申請日や休みの取り方をすり合わせたうえで医師が、作成する労務不能の証明書を依頼してもらうとスムーズにすすめられるようです。

■注意点
・休職中でも社会保険料や住民税の支払い義務があります
・会社が本人負担の保険料を負担した場合、賃金の支給とみなされ、傷病手当金が調整される可能性があります。

■退職後に継続受給可能なケース
・資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上ある
・資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、または受けられる状態にある(待期完成しているなどの支給要件を満たしている)
⇒遅くとも退職日の3日前からの申請をし、労務不能で休んでいる状態。また退職日も出勤できず、その後も労務不能状態が継続する方が対象となります。

似ている名称のため混同しそうですので付記しますと、雇用保険の制度に「傷病手当」があります。こちらは傷病手当金とは別の制度です。雇用保険の受給資格者がハローワークで求職の申し込みをした後に、15日以上引き続いて病気やけがのために職業に就くことができない場合に、失業保険(基本手当)の受給ができない日の生活の安定を図るために支給されます。(14日以内の病気やけがの場合には基本手当が支給されます)傷病手当の日額は基本手当の日額と同額です。また、30日以上引き続いて職業に就くことができないときには、基本手当の受給期間を最大4年間まで延長できます。

病気やケガで働けなくなった際の重要な収入源となる公的制度を知っておくと、いざという時あわてずに対処できるかもしれません。下にパンフレット及び協会けんぽのURLを付けますので、気になる方はご覧ください。
※傷病手当についてはハローワークが窓口となります。

CFP 依田いずみ
2025年3月

=資料=

病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

患者・国民に身近な医療の在り方 (厚生労働省)

現金給付受給者状況調査(令和5年度) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

健保総合_35-56.indd (パンフレット)

ハローワークインターネットサービス – 基本手当について (傷病手当について)