FPの果たす役割は日本でもますます増大してゆく

本当に高齢者は金持ちなのか?
 最近の経済・金融記事を読むとその一貫した論調は「日本経済活性化のためには給与水準が低い者が多い若年世代へ金融資産の6割強を保有するリタイア世代・高齢者からの支援・資金贈与を行い、子育て世代でもある若年世代の消費を補完するべき」と言うものが多い。

 しかし、高齢者世帯の生計は本当に余裕のあるものであろうか?
2015年 総務省 「家計調査報告」によれば
    月額平均収入(夫65才以上・妻60才以上・夫婦のみ・無職世帯)
     21.3万円  (社会保障給付19.4万+その他収入)

    月額平均支出(条件同じ)
     27.5万円   (公租公課3.1万含む)

    差引不足額
      6.2万円

 全然余裕ではない。むしろ収入が足りずに 不足分を貯蓄から取り崩して凌いでいる!

  上記と同じ人が貯蓄を取り崩して暮らすためには
  19年(65才男性の平均余命)×6.2万(月)×12ヶ月=1、414万円
  の貯蓄を予め準備しておかなくてはならない。

 だが現実はどうか?
   平均貯蓄残高(世帯主が60才以上、2人以上世帯、2014年家計調査)
     2,470万円
    この内貯蓄が1,200万円以下の世帯の割合
       41.2%
 なぜこのようなことになるかと言えば、1部の高額貯蓄世帯に平均残高額が引きずられる傾向があるためだ。現実には4割強の高齢者世帯で資金不足問題を抱えている。

 生活保護受給世帯に占める高齢者世帯の割合が増加傾向にあるのも上記の数字を見れば理解できる。
だが先行きは更に厳しいと言わざるを得ない。いずれ日本の社会保障システム、特に公的年金は高齢化の加速・支え手の減少によって支給額の減少、受給開始年齢引き上げを行わなければならなくなる。というよりマクロ経済スライドという仕組みで高齢者にはだんだん暮らしが厳しくなることが始まっているのだ。

やはりFPの果たす役割は大きいはず
 前置きが長くなったがいつもそこで言われるのは今や老後に向けて“国民”自身(もう皆がやらなくてはならない時代になってきた)が金融資産を準備しなくてはならないということだ。
 具体的には預金等の貯蓄に偏った運用から株式・債券等の有価証券投資を使って運用収益を得て行く方法が考えられるが、いつも聞かれることは「どこに投資していいかわからない」という
国民の声だ。これは当然とも言える。日本では投資教育は学校等で行われていないのだから。

 ここでやっとFPの登場となる。いまや国民全体が取りくまなくてはならない投資だが、やはり投資するにはまず自分のリスク許容度を理解する必要がある。これを理解せずにいきなり投資を行い損をしてもう懲り懲りという大人も時々見かける。

 しかし、それもある意味当然の結果だったかもしれない。国民が投資を考えた時まず向かうのは銀行であり証券会社である。彼らは国民の利益の為に活動しているのだろうか?否、自社の利益の極大化の為である。彼らに手数料の安い、国民に有利な投資商品を紹介せよと言っても、それは
無理な相談というしかない。彼らは営利企業なのだから。

 だからこそこれからはもっとFPが活躍しなければならない。それも銀行・証券会社の社員でない独立して活動するFPだ。これまで味方のいなかった国民である個人投資家の側に立ってリスクを説明し、手数料の安い良い投資信託等を紹介する独立系FPの果たす役割は今後ますます大きいと思われる。
                                       FP 重田 勉