65歳以上の方!『雇用保険マルチジョブホルダー制度』を活用しましょう!

『雇用保険制度』について
まずは、雇用保険について少しお話します。
雇用保険とは労働者の生活や雇用の安定を図るための公的保険のひとつです。保険料は、労働者と事業主で負担し、その比率は、約1:2の割合です。例えば、月額給与20万円の方ですと、労働者の保険料は、月額600円です。(2022年10月から料率が上がり、1,000円になります。)他の社会保険料ほど高くない割に、失業給付、育児介護給付、教育訓練給付・・・等有難い給付があり、労働者を支援してくれる公的保険です。
雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、原則として、その意志にかかわらず被保険者となります。
但し、一つの事業所で、所定労働時間が週20時間以上である方でかつ同一の事業主に継続して31日以上雇用が見込まれる方が加入対象です。
つまりこのルールですと、複数の会社で働く時間を合計することで所定労働時間が、週20時間以上の勤務となる人は雇用保険の対象外です。そうなると失業給付等、様々な給付を受給することができません。

『雇用保険マルチジョブホルダー制度』
上記の雇用保険の適用要件を緩和したのが、『雇用保険マルチジョブホルダー制度』です。
複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者が、2つの事業所(各事業所における1週間の所定労働時間が、5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みを満たす場合に適用されます。

【厚労省HP「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」より】

『高年齢被保険者』と『マルチ高年齢被保険者』の比較
従来の雇用保険制度の要件にあてはまる労働者が65歳以上になると『高年齢被保険者』と呼ばれます。『マルチ高年齢被保険者』との相違を表にまとめてみました。

加入要件①の例示(★1補足)
いずれも1週間の所定労働時間が20時間です。労働者Aさんは、通常の雇用保険の高年齢被保険者となり、労働者Bさんは、マルチ高年齢被保険者の要件を満たします。労働者Cさんは、Y企業で週所定労働時間5時間以上の要件に合いません。労働者Dさんは、X・Y・Zの内、いずれの2つの事業所の労働時間の合計が20時間未満ですので、要件に合致しません。

手続きをするのは、労働者本人です。(★2補足)
・要件に合致しても雇用保険加入については、任意ですが、加入後の任意脱退は不可です。
・資格取得・喪失する時、労働者本人が、手続きに必要な書類を事業所に発行してもらい、書類を揃えて自分の住所管轄のハローワークへ直接赴いて手続きを行う必要があります。現段階では、電子申請は行っていません。
・本人の申出日が、資格取得日になります。遡及不可なので、要件を満たしたら迅速に手続きを済ませないと被保険者期間に応じた給付金にも影響が出ることもあります。

【厚労省HP「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」より】

◆高年齢求職者給付金の具体例(★3補足)

・手続きは、手間がかかりますが、上記の例では、雇用保険料差し引いても、1ヶ月分超の給付金が
受給できます。
・また、要件もありますが、育児・介護給付金や教育訓練給付金も受給可能です。

◆今後の『マルチジョブホルダー制度』の拡大

・この制度は、現段階では65歳以上の方が対象で試行的運用ですが、5年を目処に効果が検証されることになっていて対象者が拡大する可能性もあります。

・コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが増え、副業・兼業への意識も高まり、『働き方改革』の一環で働き方の多様性に対応した制度です。

・厚労省でも『副業・兼業の促進に関するガイドライン』(2018年に策定、2020年9月に改定)の中で副業・兼業の場合における労働時間管理及び健康管理についてルールが明確化し、企業も労働者も健康を確保しながら安心して副業・兼業を行うことができるよう、本ガイドラインの周知を図っていくと記しています。

・厚労省HPに詳しいQ&Aがあります。積極的活用をお勧めします。

・FPとして今後のルール改正等の情報提供・手続きの助言をしていけたらと思います。

2022年7月  CFP 石黒貴子